いつきが日々を綴ります。日々のぐだぐだを語ったりしてます。時々本の感想が紛れ込んでたりするかもです。
第三弾。昨日更新しようとしていたのに、すっかり忘れてました。いえ、色々あるのですよ。……多分。
と、言いつつ、何もしていないのですが。
十三話で終わる予定ですので、中編ですかね。始めはこの内容を五ページ程度にまとめようとしていたという……。無謀すぎ。
ちょっと今数えてみたのですが、テスト週間に入りますので、とても微妙なところで切れるかもです。
申し訳ない。我慢できずに、途中で更新すると思いますので、ちょこちょこ覗いてみてくださいな。
その代わり、十七~二十二くらいまでは絶対更新できませんので。体調がよければ、二十三日から更新再開です。
鮮やかな赤い王宮(?)を見に行くのが、非常に楽しみ。
と、言いつつ、何もしていないのですが。
十三話で終わる予定ですので、中編ですかね。始めはこの内容を五ページ程度にまとめようとしていたという……。無謀すぎ。
ちょっと今数えてみたのですが、テスト週間に入りますので、とても微妙なところで切れるかもです。
申し訳ない。我慢できずに、途中で更新すると思いますので、ちょこちょこ覗いてみてくださいな。
その代わり、十七~二十二くらいまでは絶対更新できませんので。体調がよければ、二十三日から更新再開です。
鮮やかな赤い王宮(?)を見に行くのが、非常に楽しみ。
+ + + + + + + + + +
『くちなしの色』
文彦の思っていることなど露知らず、椿は帰路を急いでいた。思ったよりもゆっくりしてしまっていたらしく、辺りは既に暗い。
治安のいい、それなりの家柄ばかりが集まるここで万が一にも事件が起こるとは思えないが、自然に小走りになった。
こんなことなら、途中まででも送ってもらえばよかったなぁ、と下心の少し入った言葉が漏れる。
本人に自覚は全くと言ってないが、一応彼女も良家の子女なのだ。文彦と出会う前なら、こんな遅い時間に一人で歩くこともなかった。
「ただいま帰りました」
帰ると父と母が玄関にいるところだった。なにやら言い争っていたようだったが、椿を見て止める。
「おかえりなさい」
母のぎこちない笑みを受けて、何かあったのだろうかと心配する。対する父は椿を見て一度苦い顔をした。
遅くなったから怒っているのかと椿は体を小さくするが、何も言わず父は家へ入った。
「お母様?」
「何でもないわ。お夕飯にしましょう。柚(ゆず)ちゃん呼んで来て」
「はーい」
一度家へ帰ってきているので、このまま食卓についてしまおうと思って止めた。以前“着替えてきなさい”と注意を受けたことを思い出す。
自分の部屋の隣にある部屋を小さくノックして姉に声をかけた。
「ごはんですよって。柚ちゃん」
「はぁい」
部屋の中から自分より幾分か落ち着いた声を聞き、椿は部屋へ入った。四つ年上の姉は近々結婚予定なので、色々と忙しいのだ。
年齢こそ離れているが、友人のように接していた姉に恋人ができたとき、かなり衝撃を受けたことを椿は思い出していた。
しかしあまりに嬉しそうな顔で報告してきたので、椿はついつい認めてしまい、さらに両親の説得にまで協力した。
「椿ちゃんは?」
「着替えたらすぐ行くよ。柚ちゃん、先行ってて」
自分の部屋へ行く途中、何かを思いついて椿は柚に向き直った。ちょっとした自慢をしたくなったのだと思う。
幸せ一杯なのは、柚ちゃんだけじゃないんだよ、と。
「私だって、ちゃんと恋してるんだから!」
「え、うん。そっか」
ぽかんと、柚は一度瞬きをして頷いた。
「この前の作家さん……。えっと、『野色 くちなし』さんだよね? たまたま母様のご友人の息子さんだったっていう」
「うん」
紅色の布を取り去り、椿は柚のところへ行く。ぱっちりとした瞳を持つ椿と、控えめながら二重の瞳を持つ柚。
並ぶとそっくりではないが、どことなく似ていた。
「でも、子ども扱いだけなんだよ。文さん」
「男の人なんて、皆そんなものだよ。出会って五年? くらい経つけど、玲(あきら)さんだって、私のこと未だに子ども扱いするし」
ころころと可愛らしい笑い声を上げて、柚は椿の手を握った。
椿が作るより幼い笑顔を浮かべ、握った手を一度、二度軽く振った。そして左手を離して、ぽんぽんと椿の頭を軽く叩く。
「大丈夫よ。そのうち、椿ちゃんのよさに気がついて、離れられなくなるんだから」
『好き』って恥ずかしくなるくらい言われるんだから、と柚は言った。どんな人を婚約者に持っているんだと、椿は一瞬思うがあえて突っ込もうとしない。
そんなことを言いそうな人ではなかったと、数回あった柚の相手を思い出す。
冷たそうな瞳、端正な横顔。しっかりとした話し方……。
どこがだ?? と椿は思うが、思考を戻す。さっき見た、好きでたまらない人へ。
「柚ちゃんの相手はそうかもしれないけどさー」
でも。
「でもね、きっと文さんは言わないよ」
妙な自信があった。根拠と言えるかどうかも分からないものを、随分前に見つけていた。
「どうして?」
「あのね。『野色 くちなし』って多分、『くちなしのいろ』って意味だと思うの」
梔子の色、と柚は口の中で呟き、その色を思い出していた。
明るい黄色というわけではない色だ。その黄色にわずかな赤が混じる。その色がどうしたというのだろうか。
柚は椿の口から次の言葉が出てくるのを待った。椿はその視線を受け、はぁ、とため息をつき、どこか諦めた口調で続きを紡ぐ。
これを他人に話したことはない。話してしまったら、よくないことが起こる気がしていた。
「これ、文さんの性格のことだと思う」
「え?」
「梔子の色。くちなしの、色。『口』、無しの色。
つまり口を利かないってこと。梔子の色ってね、『謂はぬ色』って言われるの」
梔子の実って熟れても、皮が裂けないから。――多分、文さん口下手で、それを気にしてるんだ。
発音を変え、椿は同じ言葉を何度も繰り返す。梔子、くちなし、口無し……。
「会う前から、ずっとそう思ってたの。この作者さん、口下手なこと気にして、自分のこと皮肉って、こんな名前にしたのかなって」
会ってみて、『がっかりしました?』って聞かれて、やっぱりそう思ってるのかなって。
口下手な文さんが好きだから、私はいいんだけどね。そう言ったっきり、椿は口を閉じ、柚の部屋から出て行った。
4話
文彦の思っていることなど露知らず、椿は帰路を急いでいた。思ったよりもゆっくりしてしまっていたらしく、辺りは既に暗い。
治安のいい、それなりの家柄ばかりが集まるここで万が一にも事件が起こるとは思えないが、自然に小走りになった。
こんなことなら、途中まででも送ってもらえばよかったなぁ、と下心の少し入った言葉が漏れる。
本人に自覚は全くと言ってないが、一応彼女も良家の子女なのだ。文彦と出会う前なら、こんな遅い時間に一人で歩くこともなかった。
「ただいま帰りました」
帰ると父と母が玄関にいるところだった。なにやら言い争っていたようだったが、椿を見て止める。
「おかえりなさい」
母のぎこちない笑みを受けて、何かあったのだろうかと心配する。対する父は椿を見て一度苦い顔をした。
遅くなったから怒っているのかと椿は体を小さくするが、何も言わず父は家へ入った。
「お母様?」
「何でもないわ。お夕飯にしましょう。柚(ゆず)ちゃん呼んで来て」
「はーい」
一度家へ帰ってきているので、このまま食卓についてしまおうと思って止めた。以前“着替えてきなさい”と注意を受けたことを思い出す。
自分の部屋の隣にある部屋を小さくノックして姉に声をかけた。
「ごはんですよって。柚ちゃん」
「はぁい」
部屋の中から自分より幾分か落ち着いた声を聞き、椿は部屋へ入った。四つ年上の姉は近々結婚予定なので、色々と忙しいのだ。
年齢こそ離れているが、友人のように接していた姉に恋人ができたとき、かなり衝撃を受けたことを椿は思い出していた。
しかしあまりに嬉しそうな顔で報告してきたので、椿はついつい認めてしまい、さらに両親の説得にまで協力した。
「椿ちゃんは?」
「着替えたらすぐ行くよ。柚ちゃん、先行ってて」
自分の部屋へ行く途中、何かを思いついて椿は柚に向き直った。ちょっとした自慢をしたくなったのだと思う。
幸せ一杯なのは、柚ちゃんだけじゃないんだよ、と。
「私だって、ちゃんと恋してるんだから!」
「え、うん。そっか」
ぽかんと、柚は一度瞬きをして頷いた。
「この前の作家さん……。えっと、『野色 くちなし』さんだよね? たまたま母様のご友人の息子さんだったっていう」
「うん」
紅色の布を取り去り、椿は柚のところへ行く。ぱっちりとした瞳を持つ椿と、控えめながら二重の瞳を持つ柚。
並ぶとそっくりではないが、どことなく似ていた。
「でも、子ども扱いだけなんだよ。文さん」
「男の人なんて、皆そんなものだよ。出会って五年? くらい経つけど、玲(あきら)さんだって、私のこと未だに子ども扱いするし」
ころころと可愛らしい笑い声を上げて、柚は椿の手を握った。
椿が作るより幼い笑顔を浮かべ、握った手を一度、二度軽く振った。そして左手を離して、ぽんぽんと椿の頭を軽く叩く。
「大丈夫よ。そのうち、椿ちゃんのよさに気がついて、離れられなくなるんだから」
『好き』って恥ずかしくなるくらい言われるんだから、と柚は言った。どんな人を婚約者に持っているんだと、椿は一瞬思うがあえて突っ込もうとしない。
そんなことを言いそうな人ではなかったと、数回あった柚の相手を思い出す。
冷たそうな瞳、端正な横顔。しっかりとした話し方……。
どこがだ?? と椿は思うが、思考を戻す。さっき見た、好きでたまらない人へ。
「柚ちゃんの相手はそうかもしれないけどさー」
でも。
「でもね、きっと文さんは言わないよ」
妙な自信があった。根拠と言えるかどうかも分からないものを、随分前に見つけていた。
「どうして?」
「あのね。『野色 くちなし』って多分、『くちなしのいろ』って意味だと思うの」
梔子の色、と柚は口の中で呟き、その色を思い出していた。
明るい黄色というわけではない色だ。その黄色にわずかな赤が混じる。その色がどうしたというのだろうか。
柚は椿の口から次の言葉が出てくるのを待った。椿はその視線を受け、はぁ、とため息をつき、どこか諦めた口調で続きを紡ぐ。
これを他人に話したことはない。話してしまったら、よくないことが起こる気がしていた。
「これ、文さんの性格のことだと思う」
「え?」
「梔子の色。くちなしの、色。『口』、無しの色。
つまり口を利かないってこと。梔子の色ってね、『謂はぬ色』って言われるの」
梔子の実って熟れても、皮が裂けないから。――多分、文さん口下手で、それを気にしてるんだ。
発音を変え、椿は同じ言葉を何度も繰り返す。梔子、くちなし、口無し……。
「会う前から、ずっとそう思ってたの。この作者さん、口下手なこと気にして、自分のこと皮肉って、こんな名前にしたのかなって」
会ってみて、『がっかりしました?』って聞かれて、やっぱりそう思ってるのかなって。
口下手な文さんが好きだから、私はいいんだけどね。そう言ったっきり、椿は口を閉じ、柚の部屋から出て行った。
4話
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Re:柚ちゃんの
先だねぇー。
まず、アレクに頑張ってもらわないと。(笑)
ヴァンパイアものも。まだまだだなぁ。
まず、アレクに頑張ってもらわないと。(笑)
ヴァンパイアものも。まだまだだなぁ。