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いつきが日々を綴ります。日々のぐだぐだを語ったりしてます。時々本の感想が紛れ込んでたりするかもです。
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 行く前に更新しとかねばっ、ということで久々に(?)魔王サマ。今現在人畜無害な人を書いてないので、魔王サマを見てると懐かしくなります。

 『姫と騎士』は何とか28ページまで書き上げました。完結まであと少し。あとは伏線回収と、ティアとアレクの関係の後始末(??)のみ!!
 不憫だ、不憫だと友人に言われ、感想で書かれ、ついには『お願いだから、結婚させてあげてくださいっ』と懇願され……。
 そんなにうちの子不憫に見えますか??
 アレクはきっとこれで不憫さを使い切ったよ。だから続々編はいい思いをしてます。(と、自分が思ってるだけ)
 
 とりあえず、アレクが最後になればなるほど男前になっていくと信じて疑わない親バカがばれそうです。(笑)

+ + + + + + + + + +
『とりあえず自己紹介』



 静かに眠っている勇者さん。
 寝顔はなおのこと童顔で、本当に何歳なんだろうと思ってしまう。ジルとの気まずさから、かれこれ二時間ほど簡易拘束所にいる。
 ジルが他の大臣たちを押さえつけるため(殺せという過激意見が飛び交っている)、会議を開き、話し合いに出ているのがせめてもの救いである。
 とりあえず、顔を見合わせなければいいのだから楽な方だと自分に言い聞かせた。

 『城に勇者が現れた』

 これは結構な衝撃を城に与えたらしい。しかしその騒がしさをこの勇者は未だ知らないままだ。
 起きないかな? と思って顔を覗きこんだ瞬間、体がクルリと反転して天井が目に入る。
 ……その前に童顔が目に入ったが、見なかったことにしよう。
 傍から見たら、押し倒された少女の図の出来上がりである。えっと、これ、どういうことなんでしょうか。

「う、わぁ!!」

 わたしより先に勇者さんが悲鳴をあげた。押し倒されているのはわたしで、あなたではないんですけど。

「あ、ごめっ。すみません。体が勝手に反応しちゃって」

 腰の後ろ、剣に伸ばしていた手を離し、勇者さんはわたしの体から飛びのいた。
 起き上がろうとベッドにひじをつくと、勇者さんはそっと手を差し伸べてくる。『すみませんでした』 もう一度謝罪の言葉が届いた。

「気にしてませんから。ビックリしたけど」

 驚きすぎて反応できないくらいには驚いた。
 こののほほんとした童顔勇者サマ、名前だけの存在ではないらしい。一瞬見せた素早い動きと、その後の行動のギャップが激しかった。

「ルーク・エインベルグです。名前、言ってなかったから」

「雪乃です。東雲 雪乃。東雲が姓で、雪乃が名前」

 『ユキノ』 小さく勇者様……ルークが呟いた。
 音の響きがキレイですね、とニコッと笑う。笑うとより一層童顔に見えて仕方ないのだが、顔が整っているのでカワイイと言えなくもない。
 しかし次の瞬間、ルークの表情(かお)が変わった。

「会ったときから、聞きたかったんですけど」

 どうして、ルークと出会ったときに気がつかなかったんだろう。

「あなた、その黒髪は」

 どうして、自分の容姿の特異さを忘れていたのだろうか。
 城の中の人たちでさえ、この黒髪と瞳を見れば珍しがっていた。数週間経ってやっと慣れたのだ。ルークがそういうのも無理はないだろう。

「賢者ですか?」

 この世界にいる間、わたしは偽りから逃げられない。

「えぇ。五百年前の人間とは違うけれど」

 なるべく、それらしく見えるように背筋を伸ばし、真っ直ぐルークを見る。ルークもこちらを見ていたので、自然と見詰め合う形になった。
 わたしから目は逸らせない。だけど偽りを持っているわたしは、ルークの視線に耐えられそうになった。
 翠色の、澄んだ瞳はジルの瞳を思い出させる。二人とも、偽りを語らない人だろう。
 だからこそ、他人の嘘にも厳しくなる。翠色と、深く濃い蒼の瞳――そのどちらにもわたしは嘘をついた。
 いっそ、この嘘は当然なのだと割り切ってしまえば、楽なのに。中途半端に小心者のわたしは自分自身を嘲う。

「あなたは人間ですか?」

 二度目の質問の意図を掴み、一瞬だけ息を呑んだ。

 『あなたは人間ですか?』
 
 そんなことを聞いているのではない。
 『あなたは人間であるにも拘らず、魔族の見方をするのですか?』 そう聞かれているのだと確信してしまった。

「あなたは――」

 隠しきれない怒りにも似た感情を、肌で感じる。

「わたしは」

 人間だけど、ここの『人間』ではない。同じ人間でも、そもそも暮らしてきたトコロが違うのだ。
 自分の命と、同じトコロで生きていない人多数。どちらを取ると聞かれているようなものだ。
 答えなんて決まっている。
 いくらの人がわたしの答えを正しくないといえるだろうか。それでも、わたしは身勝手な自分を言外でも批判されたくなかった。
 唯一の、この城での人間であるルークにそんな目で見られたくなかった。
 人間と魔族、両方の人から奇異の目で見られたくない。『裏切り者』と言われたくない。だからわたしは。

「闘いにならなければいいと思っている」

 どちらの味方もしたくなかった。話し合いで解決するような問題ではない。
 何百年も前から続く、血を流さなければいけない闘いだとしても、わたしはどちらにも何も言えないだろうと思った。
 死にたくない。だけど、人間ではないという目で見られたくない。どちらに味方しても、わたしはただの悪役になる。

「五百年前だって、結局条約を結んだんでしょう?」

 なのに、どうして今それができない?

「あのときは、人間と魔物の力が均衡だったからです。
……今は違う。僕にメイソン様のような力はありません。このようなときに条約を結んだところで、こちらが不利になることは間違いない」

 唯一の武器である剣を、話し合いの場に持っていけると思いますか?

「確かに僕も、戦わない方法があるのであれば大賛成です。無駄な血は流すべきじゃない」

 でもだからって、こちらが不利になってまで条約を結ぶつもりはありません。
 気弱で、童顔で、ジルを見て気絶して……ここにくるまで、何度も躊躇っただろう勇者様。
 それでも勇者が勇者たるゆえんはきちんと持ち合わせていた。どこまでも清廉潔白で、人間のためにここまで来たのだろう。
 その瞳には、恐れも迷いもない。ただ自分がやるべきことを心得、それをしようとしているだけだ。

「ならば」

 わたしはそろそろ、心を決めなければいけないのかもしれない。
 偶然にここへ来たのだとしても、それを言い訳に逃げる時期はもう過ぎてしまったのだろう。

「わたしはあなたに協力する。対等な条約を結べるように」

「そちら側でありあなたの申し出を、どう信じろと?」

 ルークの瞳が揺れていた。
 わたしの言葉を信じようか、信じまいか迷っているように見える。わたしに投げつけた言葉を、後悔しているようにも見えた。

「わたしは人間です。だから『人間』に『裏切り者』と言われたくない」

 たとえ見も知らない異世界の人でも。小心者のわたしは昔の世界のまま。

「だけどわたしは魔族側にいるから。魔王を裏切ることもできない」

 ええ、そんなことした日にはノアさんに殺されますからね。それにジルが落ち込む姿が目に浮かび、良心が痛む。
 きっとすっごく落ち込むんだろうな、と簡単に想像できる。

「でも、両方がメリットもデメリットもない条約を結ぶとどう?」

 どちらが不利でも有利でもない。どちらにも不利益がないということは、わたしがどちらかに激しく糾弾されることもないということだ。

「これはあなたたちのためでなく、わたしのため」

 わたしの利益のため。
 そう言うとルークは目を見開き、そして笑った。

「先代の賢者は傍若無人な方だったと聞いていましたけど、今代の賢者様はお優しいですね」

 僕たち人間には、まだ新しい賢者様が現れたことが知らされていなかったのですが(ノアの情報操作か)よかったです。

「賢者と聞くと、人として生まれながら魔王と手を結んだ人の恥と思ってしまいますけど、きっと先代の方も何か思うことがあったんですね」

 はっきりとそう言われても、知らないので何も言えないんですけど……?
 それに『優しい』と言われて、心臓がはねた。まさかわたしのことを優しいという人が現れようとは、人間ものは言いようだと思う。

「本当によかったです。ユキノ様が賢者様で」

 えっと、良心を苛む発言ばかり止めてもらえますか? そろそろ。

「あの――。ユキノって呼んでもらっていいから。敬語止めてもらえます? わたし、本当に大した存在じゃないんで」

 話し方に素が交じってるけど、この際気にしない。
 敬語はほどほどが一番。敬われるのも、ほどほどが一番。あまり行き過ぎると申し訳なさが先にたつ。

「ですが、ユキノ様は」

「わたしも勇者様って呼びますよ?」

 そう言うとルークはやっと『では、ユキノと呼び……呼ぶ』と言った。

「その代わり、ユキノも『ルーク』って呼んでくれるかな? 僕二十歳だし、そんなに年齢変わらないよね?」

 頷きかけて、固まった。

「はたち?!」

 嘘でしょう? 冗談ですよね? 見えませんよ、二十歳に。高校生で通りますよ。余裕で。

「え、ユキノ何歳?」

「十六」

「嘘?!」

 それはどういうふうに受け取ったらいいですか? 老けてると言いたいんでしょうか?

「イヤ、ユキノ大人びてるから」

 フォローがフォローに聞こえない悲しさを、どうやって解消したらいいのでしょうか。
 生まれてこの方、年上に見られたことなかったんで分かりません。



                           15話
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でも本人は精一杯急いでいるつもりだったりします。
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