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いつきが日々を綴ります。日々のぐだぐだを語ったりしてます。時々本の感想が紛れ込んでたりするかもです。
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 で、魔王サマ更新。
 あー。仕事持ってったのに、ほとんどやってないというね……。ティアちゃんたちのも、28ページ止まり。
 アレクの受難は続く。

 『drop』も本当に真剣に完結目指さないといけないんで、頑張るぞー。

 ところで、このお話も、あと十話くらいで終わりです。まぁ、オマケが多いので、あと二十話といったところでしょうか……。
 気長にお付き合いくだされば。幸いです。
 週一のペースを崩さないように頑張ります。

+ + + + + + + + + +
「ユキノ」

「お帰りなさい。ノアレス様」

 わざとらしく言うと、ノアは一瞬だけ目をすがめ、それからわたしを睨みつけた。

「どういうつもりですか? あんな人間を中に入れるとは」

 アレの持っている剣の気配を感じるだけで、気分が悪くなりますよ、まったく。
 そう鬱陶しげに呟いてから、ノアはさらりと髪をかき上げた。
 ――そんな仕草も似合う美丈夫ぶりは相変わらずですね。ノア。
 心の中で呟きつつも、口に出したが最後たぶん生きて帰れないのでため息として出した。

「仕方ないの。色々あっ」

 あったんだから、という前にノアがわたしの肩を掴み、壁に押しやった。人気のない廊下に、ドンと鈍い音が響く。
 この感覚は前にも味わった。……もう勘弁してほしいんですけど。

「ユキノ、あなたは賢者です」

 凄みのある声に、体が反応する。ビクリと肩を震わせれば、ノアは面白そうに笑った。本当に、この人、加虐趣味がある。絶対ある。
 強めに押さえつけられた左肩がギシリと軋んだ気がする。

「それが何を意味するか、あなたはまだ分かっていないようですね」

 何を意味するか? 今までに知った以上のことがある、とノアは言いたいのか。

「あなたはこちらへ来た時点で、人間の裏切り者。しかしこちらでもあなたは完全な味方として見られていない」

 そんなこと薄々気付いている。確かに賢者の存在は魔王にとって不可欠だろう。
 しかし、それを喜ぶだけの人たちではないこともまた分かっていた。大臣の態度を見て、予想が確信に変わった。ただそれだけ。

「つまりあなたは、勇者を殺せる理由にもなりえる。どうしてだか分かりますか?」

「わたしを殺して、ルークが殺したとでも難癖つけるつもり?」

 裏切り者を許さない勇者が賢者を殺した。

「それでルークを殺す?」

 馬鹿げている。
 
 そう呟くと、今度は両手で壁に押し付けられた。両肩は壁に縫い付けられ、身動きが取れない。
 そして人間という弱い肉体は外からの力に悲鳴を上げる。

「理由なんて、意外にくだらないものです」

 勇者さえいなければ、戦争になったとて負けることなどありません。

「勇者を殺すのです。犠牲は数十人には上るでしょう」

 ……しかし。

「戦争になったときの数百人、数千人の犠牲を思えば安いモノでしょう?」

 ここであなたを殺しても、大臣たちが喜ぶだけです。
 私は何の罪にも問われたない。勇者を殺し、人間と戦い、今度こそ人間を支配できる。

「ジルが、それを望むと、実行すると思っているの?」

「私たちは魔王の命令だけで動いているのではありません。魔王陛下にとって一番よいと思われることを」

「それはあなたたちの勝手な想像でしょう?!」

 押さえつけられて動かない肩を無理矢理動かして、ノアを押しのけようとした。
 しかし反対に手を捕まれ、より一層体を近づけられる。端整な顔が間近に迫り、顔を背けた。

「賢者も人の子でしたね」

 わずかに赤くなっているであろう顔が朱に染まっていくのが分かった。赤くなった顔を見られたことが屈辱だった。
 でも慣れていないのだからしょうがない。心拍数が上がらないことを祈るのみだ。
 ジルが、抱きしめたときは、こんなこと思わなかったのに。ただただ、温かい熱にくるまれていると思っていただけなのに。
 そこでジルの言葉が浮かんだ。

「あなたたちの身勝手な予想が、いつもジルを傷つけているのに」

 どうして誰も気がつかないの?

「わたしよりずっと、ジルの近くにいるのにどうして」

 誰もジルの悩みが分からないの?

 手の痛みとは別の痛みに眉をしかめ、次いで涙をこぼした。
 ここへ来て三度目の涙。私らしくなくて少し驚いた。随分と表情を押し隠すことが下手になった。
 わたしの涙を見て、小さく目を見開きノアは手の力を緩める。その隙にノアの体を押しのけた。

「あなたたちがそんなこと言うからジルが」

 不意にジルの言葉を思い出した。『父のような力は俺にはない』
 ――そして心が沈んだ。あんなに国のことを考えているジルが、どうしてあんな言葉を口にしなければいけなかったのだろうか、と。


 そのときのわたしはまだ知らない。
 このとき、大臣たちがジルになんと言ったか、知らなかった。
 ジルがどんな気持ちでそのとき、一人で大臣たちと話していたか、知りようもなかった。


「陛下ご決断を!!」

「陛下!」

「このままではなりませぬぞ」

「人間と対等で条約を結ぶなど、言語道断」

「五百年前も結局は崩れ去ったのですから」

「その前に結んだ条約でさえ、百年したら廃れたのですから」

「だから、結局前代の勇者がここへ来たのですから。結ぶだけ無駄なのです」

「人の生は短い。百年もすれば結んだ人間たちは死に絶え、そして事情も知らぬ人間が勝手をする」

「支配してこそです」

「我らは人間らよりも優れているのですから」

「ここで、あの勇者を殺してしまえば戦争になったとて負けはしません」

「戦争にならないように来たのだ。殺してどうする」

「もし条約を結ぶのに失敗したら、どうするおつもりです。七百年前のようにまた闘うのですか? また民に血を流させるのですか?」

「どうでは……」

「また民を殺すのですか?」

「……っ」




 もうすぐ……終わる。

 この苦しみも、恨みも、全て消える。あと少しで。
 全てを終わらせるのは、あの小さかった魔王。『あの人』と同じ、国を、民を愛している魔王。
 仕上げはあの娘(こ)だろう。あの娘が“YES”と言わなければ全てお終い。

 さぁ、はじめようか。
 終焉の幕開けだ。美しくも寂しい、終焉の始まり。




『ねえ、ダンテ。私はあなたを愛していたわ』

 あなたのためなら人間(なかま)を裏切ったと言われてもよかった。
 私を悪魔の娘だと言った奴らに何を言われてもよかった。

『だからこそ、殺してしまいたいほど憎んだ』

 あなたが死んだからこそ、『殺してしまいたい』と言うのよ?

『ねぇ、ダンテ……』

 私はあなたに何かできていたのかしら。この国にでなく、あなたに。誰でもない、あなたに。

『とても、憎んでいたわ。そして同じだけ』


 私はあなたを愛したの。



                           17話
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