いつきが日々を綴ります。日々のぐだぐだを語ったりしてます。時々本の感想が紛れ込んでたりするかもです。
ついについに、最終話です。感慨深いですね……。いや、もうとっくに書き上げてはいたんですが。(続きを書きたいのに、手一杯でティアもアレクも出てきてはくれません)
ちょっと前までは(これを始めて載せたときぐらいは)、『勿忘草』のことばかり考えていましたが、今はそれも薄れてきました。
今はちょっと、のめり込むまで仲のよい登場人物はいません。色々書きかけ、書き始めが多いので。
ところで!! トップランナー見ました。40分弱しかなかったのが残念なんですが、よかったです~~。『有川先生かっこいい』とさかんに言っておりました。
前野さんがとっても素敵。階段下りてきた時点できゃーーー、と叫んでしました。『アホか、貴様』 ……言われてみたいような、怖いような。
でも、ちょっと思ったのですが。『主人公』は郁ちゃんですよね? 教官じゃないですよね。少し気になったので……。
と、だらだら書いてきましたが、なんか本当に終わっちゃうんだなぁ、と思うと『あれも、これも、まだ書きたかったなぁ』と思うことが非常に多い作品だということに気がつきました。
まぁ、何だかんだ言って、アレクが好きなだけですけど。
最終話は私と一緒に感慨にふけってみてください。
ちょっと前までは(これを始めて載せたときぐらいは)、『勿忘草』のことばかり考えていましたが、今はそれも薄れてきました。
今はちょっと、のめり込むまで仲のよい登場人物はいません。色々書きかけ、書き始めが多いので。
ところで!! トップランナー見ました。40分弱しかなかったのが残念なんですが、よかったです~~。『有川先生かっこいい』とさかんに言っておりました。
前野さんがとっても素敵。階段下りてきた時点できゃーーー、と叫んでしました。『アホか、貴様』 ……言われてみたいような、怖いような。
でも、ちょっと思ったのですが。『主人公』は郁ちゃんですよね? 教官じゃないですよね。少し気になったので……。
と、だらだら書いてきましたが、なんか本当に終わっちゃうんだなぁ、と思うと『あれも、これも、まだ書きたかったなぁ』と思うことが非常に多い作品だということに気がつきました。
まぁ、何だかんだ言って、アレクが好きなだけですけど。
最終話は私と一緒に感慨にふけってみてください。
+ + + + + + + + + +
「ティア」
小さくアレクは呼びかける。今までのような冷たい声ではない。優しい、いつかの声。
"何?"と問いかけるように小首をかしげ、ティアはその呼びかけに答えた。
これくらいなら、許されるだろうか。アレクは自分に問いかける。
「俺を守れなかった罰……聞いてくれる?」
砕けた口調に、そして"罰"という言葉の響きにティアは震えるようにアレクを見上げた。心配そうな瞳が、下から真っ直ぐアレクを見つめた。
「俺を、一生あなたの騎士にして下さい」
その言葉の意味がつかめず、ティアは不思議そうに首をかしげた。アレクはもう、わたしの騎士のはずなのに、と言っているようだった。
アレクはそれを見て微笑んだ後、もう一度ティアの体を捕まえた。と、いうより強い力で抱き上げた。
ふわりと体が浮き、「きゃぁ」と小さい悲鳴がアレクの耳朶を掠めて、アレクは少年のように笑った。
微笑むのではなく、思いっ切り顔を綻ばせた。ティアの体は横抱きにされ、アレクの膝に落ち着く。
少し恥ずかしいのか、ティアはフイッと横を向いてしまう。もう、血の臭いも気にならなくなっていた。
紅い血は罰ではなく、二人を結ぶ絆だから。血という、もっともその人の身体に近い一部が繋がっている事は、特別な気がした。
ティアが身動きした拍子に風が起こり、髪が流れた。アレクの目に真っ白な首筋が露わになる。美しい、白い毛の艶やかなユニコーンが。
乙女の前にしか現れないというユニコーンがこの国の守護神。レイティアが使役する、気高く、決して穢れた場所に姿を現さない、幻獣。
それは王族にしか彫ることを許されない紋章であり、逃げることを許さない茨の鎖だ。もちろんティアは逃げようなんて考えたこともないのだろうと思いながら。
責任と国から……秩序から。紋章さえなければ――ティアは、アレクは……。
憎いけれど、見るのも嫌だけど、これさえなければと思うけど……。王族として育ち、王女として立ち振る舞う気高さも惹かれた要因だから。
アレクは気付かない程度に首筋に唇を寄せた。首筋の、紋章の横に、そっと、そっと、唇を押し当てた。ティアが王族だということへの感謝と、紋章への小さな嫉妬心は、小さな口付けで表す。
本当は、紅い花を咲かせて、印をつけたかったけれど。
「ちょっ……、アレク!!」
赤くなったティアはくすぐったそうに身じろぎした。
「こんなに俺が怪我しっぱなしなのは、あなたがちっともじっとしていないから。――次期女王の護衛くらいの地位じゃないと割に合わない」
冗談半分に言うと『お転婆って言いたいのなら、そう言えばいいじゃない!』とティアは怒ったように言う。
でもどこか楽しそうで、しかし突如真顔となった。
その変容にアレクはそっと首をかしげた。
「ではアレク。あなたにもわたしを守れなかった罰を与えましょう」
いつもより少しだけ偉そうに。いかにも王女ですという、高飛車な口調。それは似合っているようで、実はちっとも似合っていない。
もしかしたら、一番似合っていないかもしれない。
「わたしを一生守りなさい」
命令口調なのに、どこか伺うような雰囲気を残して。それが、ティアの答え?
「こんなにわがままな次期女王の世話をするような変わり者、そうそういるものじゃないでしょう?
今のうちに、きちんと予約しておかなかったら、シエルに取られてしまうわ。わたしが死ぬまで……。ずっと傍にいて、死なずに、怪我もせずに、一生わたしを守るの。そして、わたしが死んだら……」
何か言おうとして、何も言わず結局口を閉じた。そして、『何でもないの』と首を振った。
「あなたが死んだら、もしかしたら、追いかけて逝くかもしれない」
不意に真剣な顔をしたアレクは、ティアの言葉を続けた。
ティアは大きく目を見開き、アレクの瞳をじっと見る。その瞳の中にある、何かを読み取ろうとしているようにも見えた。
ティアは自分の蒼色の瞳とは似ても似つかない、黒い深い瞳に魅入る。中々外せない視線はお互いが離さないようにしている所為か、それとも――。
吸い寄せられるようにティアはアレクの顔に近付いた。目と目を合わせたまま、何も言わず、何も考えず、二人の距離が縮まる。
しかし、お互いの吐息が唇にかかるくらい近付いた時にやっと、ティア自分が何をしているのか悟った。すると瞬く間に頬を染め、顔を背けた。 それを誤魔化すように、無理矢理アレクの腕から降り、目の前に立つ。
年頃の女の子から、一気に王女の姿へと変わる。真剣な瞳とぴしっと伸ばされた背筋がそれを顕著に物語る。
「アレク・ボールウィン近衛騎士隊長。汝の答えはいかに?」
二人の他には誰もいない、静かな部屋に厳しいほどに凛とした声。その声に頭を垂れずにはいられない。膝を屈せずにはいられない。
「アレク・ボールウィン。謹んでお受けいたします。リシティア・オーティス・ルラ・リッシスクに永久の忠誠を」
その答えにティアは笑った気がする。いつかの日と同じように、額に唇を寄せられると。
「汝に神の加護と幸あらんことを」
と言われた。
すっとベッドから起き上がり、跪いた。本当は痛いはずなのに、何故か痛みを感じない。ただずっと欲していた"何か"を手に入れたに違いないということは分かった。
ティアがそっと、右手を差し出した。
跪いたままティアの手を取ると、恭しく口付けする。苦労を知らないと言われる真っ白で、細くて長い指を持つ手。
指の付け根に唇を寄せる。触れるか触れないかという、それ程小さな、口付け。
口付けられた手を胸の前で左手に包み込んだティアは、アレクの着ていた制服と一緒に置かれていた長剣を持って来た。
スラリと鞘から剣を抜き放ち、ティアはそれを照明に照らした。確かめるような厳しい視線が、剣に据えられる。
キラリと剣は、月の白い光りを受けて光る。その月光のような光に、ノルセスが持っていた剣の光りのような禍々しさはない。
どこまでも澄んでいる、人の為だけに剣を振る者特有の強い信念を宿した光。汚されることなんて、絶対にない、白く鮮烈な光り。
それを見るとティアは息を吐き出し、その剣をアレクに向けた。
アレクの右肩と、左肩を一度ずつ叩き、しっかりとした声で宣言した。
「アレク・ボールウィンはわたし、王女リシティア・オーティス・ルラ・リッシスクの名において、わたしの生涯の護衛騎士とする」
二人の関係は……主と護衛の関係は変わらないのに、前よりずっと近くに感じるのは何故だろう。
多分、それはきっと……。二人ともそこまで考えて、そこで思考を打ち切った。
封印したはずの想いが何かの拍子に浮かんできて、相手にぶつけてしまいそうになったのを感じたから。
二人の罰という名の誓いは違えられることなく、きっと続いていく。そうであると信じているし、信じたいと思った。
『あなたが好きです』
そう、伝えないままだったけど。お互いの気持ちなんて知らないままなんだけど。
それでも、お互いがお互いを必要としていて、そして大切だということを知っているから。
だから……、もう少しだけ、この温かな関係で。
あとがき 番外編 『ハロウィン』
小さくアレクは呼びかける。今までのような冷たい声ではない。優しい、いつかの声。
"何?"と問いかけるように小首をかしげ、ティアはその呼びかけに答えた。
これくらいなら、許されるだろうか。アレクは自分に問いかける。
「俺を守れなかった罰……聞いてくれる?」
砕けた口調に、そして"罰"という言葉の響きにティアは震えるようにアレクを見上げた。心配そうな瞳が、下から真っ直ぐアレクを見つめた。
「俺を、一生あなたの騎士にして下さい」
その言葉の意味がつかめず、ティアは不思議そうに首をかしげた。アレクはもう、わたしの騎士のはずなのに、と言っているようだった。
アレクはそれを見て微笑んだ後、もう一度ティアの体を捕まえた。と、いうより強い力で抱き上げた。
ふわりと体が浮き、「きゃぁ」と小さい悲鳴がアレクの耳朶を掠めて、アレクは少年のように笑った。
微笑むのではなく、思いっ切り顔を綻ばせた。ティアの体は横抱きにされ、アレクの膝に落ち着く。
少し恥ずかしいのか、ティアはフイッと横を向いてしまう。もう、血の臭いも気にならなくなっていた。
紅い血は罰ではなく、二人を結ぶ絆だから。血という、もっともその人の身体に近い一部が繋がっている事は、特別な気がした。
ティアが身動きした拍子に風が起こり、髪が流れた。アレクの目に真っ白な首筋が露わになる。美しい、白い毛の艶やかなユニコーンが。
乙女の前にしか現れないというユニコーンがこの国の守護神。レイティアが使役する、気高く、決して穢れた場所に姿を現さない、幻獣。
それは王族にしか彫ることを許されない紋章であり、逃げることを許さない茨の鎖だ。もちろんティアは逃げようなんて考えたこともないのだろうと思いながら。
責任と国から……秩序から。紋章さえなければ――ティアは、アレクは……。
憎いけれど、見るのも嫌だけど、これさえなければと思うけど……。王族として育ち、王女として立ち振る舞う気高さも惹かれた要因だから。
アレクは気付かない程度に首筋に唇を寄せた。首筋の、紋章の横に、そっと、そっと、唇を押し当てた。ティアが王族だということへの感謝と、紋章への小さな嫉妬心は、小さな口付けで表す。
本当は、紅い花を咲かせて、印をつけたかったけれど。
「ちょっ……、アレク!!」
赤くなったティアはくすぐったそうに身じろぎした。
「こんなに俺が怪我しっぱなしなのは、あなたがちっともじっとしていないから。――次期女王の護衛くらいの地位じゃないと割に合わない」
冗談半分に言うと『お転婆って言いたいのなら、そう言えばいいじゃない!』とティアは怒ったように言う。
でもどこか楽しそうで、しかし突如真顔となった。
その変容にアレクはそっと首をかしげた。
「ではアレク。あなたにもわたしを守れなかった罰を与えましょう」
いつもより少しだけ偉そうに。いかにも王女ですという、高飛車な口調。それは似合っているようで、実はちっとも似合っていない。
もしかしたら、一番似合っていないかもしれない。
「わたしを一生守りなさい」
命令口調なのに、どこか伺うような雰囲気を残して。それが、ティアの答え?
「こんなにわがままな次期女王の世話をするような変わり者、そうそういるものじゃないでしょう?
今のうちに、きちんと予約しておかなかったら、シエルに取られてしまうわ。わたしが死ぬまで……。ずっと傍にいて、死なずに、怪我もせずに、一生わたしを守るの。そして、わたしが死んだら……」
何か言おうとして、何も言わず結局口を閉じた。そして、『何でもないの』と首を振った。
「あなたが死んだら、もしかしたら、追いかけて逝くかもしれない」
不意に真剣な顔をしたアレクは、ティアの言葉を続けた。
ティアは大きく目を見開き、アレクの瞳をじっと見る。その瞳の中にある、何かを読み取ろうとしているようにも見えた。
ティアは自分の蒼色の瞳とは似ても似つかない、黒い深い瞳に魅入る。中々外せない視線はお互いが離さないようにしている所為か、それとも――。
吸い寄せられるようにティアはアレクの顔に近付いた。目と目を合わせたまま、何も言わず、何も考えず、二人の距離が縮まる。
しかし、お互いの吐息が唇にかかるくらい近付いた時にやっと、ティア自分が何をしているのか悟った。すると瞬く間に頬を染め、顔を背けた。 それを誤魔化すように、無理矢理アレクの腕から降り、目の前に立つ。
年頃の女の子から、一気に王女の姿へと変わる。真剣な瞳とぴしっと伸ばされた背筋がそれを顕著に物語る。
「アレク・ボールウィン近衛騎士隊長。汝の答えはいかに?」
二人の他には誰もいない、静かな部屋に厳しいほどに凛とした声。その声に頭を垂れずにはいられない。膝を屈せずにはいられない。
「アレク・ボールウィン。謹んでお受けいたします。リシティア・オーティス・ルラ・リッシスクに永久の忠誠を」
その答えにティアは笑った気がする。いつかの日と同じように、額に唇を寄せられると。
「汝に神の加護と幸あらんことを」
と言われた。
すっとベッドから起き上がり、跪いた。本当は痛いはずなのに、何故か痛みを感じない。ただずっと欲していた"何か"を手に入れたに違いないということは分かった。
ティアがそっと、右手を差し出した。
跪いたままティアの手を取ると、恭しく口付けする。苦労を知らないと言われる真っ白で、細くて長い指を持つ手。
指の付け根に唇を寄せる。触れるか触れないかという、それ程小さな、口付け。
口付けられた手を胸の前で左手に包み込んだティアは、アレクの着ていた制服と一緒に置かれていた長剣を持って来た。
スラリと鞘から剣を抜き放ち、ティアはそれを照明に照らした。確かめるような厳しい視線が、剣に据えられる。
キラリと剣は、月の白い光りを受けて光る。その月光のような光に、ノルセスが持っていた剣の光りのような禍々しさはない。
どこまでも澄んでいる、人の為だけに剣を振る者特有の強い信念を宿した光。汚されることなんて、絶対にない、白く鮮烈な光り。
それを見るとティアは息を吐き出し、その剣をアレクに向けた。
アレクの右肩と、左肩を一度ずつ叩き、しっかりとした声で宣言した。
「アレク・ボールウィンはわたし、王女リシティア・オーティス・ルラ・リッシスクの名において、わたしの生涯の護衛騎士とする」
二人の関係は……主と護衛の関係は変わらないのに、前よりずっと近くに感じるのは何故だろう。
多分、それはきっと……。二人ともそこまで考えて、そこで思考を打ち切った。
封印したはずの想いが何かの拍子に浮かんできて、相手にぶつけてしまいそうになったのを感じたから。
二人の罰という名の誓いは違えられることなく、きっと続いていく。そうであると信じているし、信じたいと思った。
『あなたが好きです』
そう、伝えないままだったけど。お互いの気持ちなんて知らないままなんだけど。
それでも、お互いがお互いを必要としていて、そして大切だということを知っているから。
だから……、もう少しだけ、この温かな関係で。
~END~
あとがき 番外編 『ハロウィン』
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