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いつきが日々を綴ります。日々のぐだぐだを語ったりしてます。時々本の感想が紛れ込んでたりするかもです。
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 と、いうことで、戒めとしてことあるごとに記事に載せていた、『勿忘草』です。
 暗め、をコンセプトに掲げつつ、頑張って書き上げました。なので、コメディー要素なし。(途中、何度か本気で止めようと思いました)
 『姫と騎士』も『勿忘草』も、私が書くものからは少し離れているのですが(ラブコメすきーなので)、こういう雰囲気を読むのは好きです。

 お友達から『エロい』と言われて、傷ついた経験もあります。(そんなこと全くありませんから!! 全年齢対象ですから)


 と、無駄話もここら辺にして、注意書きです。

 このお話に出てくる設定は、あくまで私のイメージです。鬼も巫女も日本の本物を参考にはしていますが、全く一緒ではありません。
 特に、『鬼神』 これは全くといっていいほど、別物です。妄想の産物といって差し支えないほど……。こんなことどこにも書かれてませんでした。
 なので、詳しく勉強していたりして『適当なのは許せん!!』という方はお気をつけください。
 また、このお話の題名でもある『勿忘草』は、西洋原産(?)で、物語の舞台の時代にはまだなかったと憶測されます。まぁ、物語の時代も適当で、日本かさえも怪しいんですけど。

 あとは……。血、がでます。お気をつけを。
 最後、甘いものがいやーという方は非難勧告を出します。逃げてください。


 と、言いつつ、今回鬼さんは出てきません。序章です。それでも読んでくださるお優しい方は、続きから。

+ + + + + + + + + +
美しいものは怪しく人を惑わせる。それを知りつつ……、人は惹かれる想いをとめることはできない……。
 それが、まるで運命であるかのように、逆らえない。逆らうなんて、考えない。
 ただ、想いが向かう先へ、手を伸ばすだけ……。




 旱魃(かんばつ)が続くと思えば、雨で作物は流れ……。冬は暖かくて、なのに夏は寒くて作物は駄目になる。
 村は食べるものをなくし、人々は飢えに耐えられず死んでいく。そしてある時、それを嘆いた男が一人、口を開いた。

「生贄を捧げてはどうか」

 と。
 それは誰もが思っていて、しかし口には出せなかったこと。以前にも何人かが生贄に差し出された。
 しかし誰一人、帰ってはこなかった。村の飢饉が治まることはあったが、大抵の場合は何も変わらなかった。
 だから誰も言わなかったのだ。生贄を出そうなんて、言えなかった。
 しかし、男は引き下がらなかった。あの山へ生贄を出そうと言って、意見を変えなかった。
 
 その村から少し離れた場所に『幻桜鬼山(げんおきやま)』という山がある。
 その名の通り、美しい桜が咲き誇り、四季を通じて少し寒く、時には鬼も出ると言われる山。
 しかし、その山の鬼は神とも呼ばれ、人々から尊ばれてきた。
 
 その山の主である鬼に生贄を供えれば、きっと何かが起こる。もしかしたら、この窮地から逃れられるかもしれない。
 そう男は言い続けた。しかし、村人の中にも反対する人はいた。

「前にも同じようなことをしたのに、無駄だった。人の命を無駄にはしたくない」

 と。
 男は笑って答えた。

「力のあるものにすればいい。巫女の素質を持つ生娘ぐらい、いるだろう。
 ほんの少しでいいんだ。それだけで、常人とは違った魅力があるはずだ。鬼にとって」

 村人はそう言われて黙った。他にこの窮地を脱出する案が浮かばなかったのだ。その意見に従うしかなかった。



「お父様、お母様。今までお世話になりました。満足な親孝行もできなかったこの弥絃(みお)をお許しください」

 まるで花嫁のように美しく……けれどそれよりもっと悲しそうな顔で少女は笑った。
 白く、目に鮮やかな白無垢―花嫁衣裳―に身を包みながら、少女は、弥絃は美しく化粧が施された顔を歪ませた。
 まだ嫁入りするには少し早すぎる、幼い顔立ち。しかし、その中にも神秘的な輝きをもつ瞳がひどく妖艶に映った。
 本人が意識していないところで、その美しさが薄らぐことはない。
 弥絃は愛しい男の元に嫁ぐのではない。深い森の、鬼神のところへ嫁にいくのだ。いや、形がどうであれ、彼女は生贄以外の何者でもなかった。
 両親はそんな娘を見やり、無理に作った笑顔で口を開く。

「元気で、いるのだよ」

「しっかりと、仕えるのよ」

 殺されるであろう我が娘に、ひれ伏して謝ることも許されない、多くの視線。
 両親の言葉を聞くと弥絃はなお一層美しく、悲しげに笑った。無理して作っているのが分かり過ぎる分、痛々しさが募る。

「時間ですよ」

 一人の女が弥絃に囁く。この家を離れる時が近付いた。弥絃はそれに頷くだけで答えると、もう一度だけ両親を見た。
 どこか諦めを滲ませたような表情(かお)で、弥絃はゆっくり頭を下げる。

「本当に、今まで、ありがとうございました。お二人に育ててもらったこと、本当に、嬉しく思います。
 さようなら……。――お元気で。私は、村を救えて幸せです」


 そんなこと思ってもいないのに、『幸せ』って何なの? と問いただしたかったのに、弥絃の口から出たのはそれだけだった。
 くるりと背を向け、静々と前へ進む。家を出れば迎えの輿(こし)がもう来ていた。
 それへ乗り込むと弥絃は自分の生まれ育った家を見やる。もう二度と見れないだろう家を頭に刻みつけ、最後のその瞬間まで思いを馳せようと脳裏でいくつもの思い出をなぞる。
 そして……、未練を断ち切るように首を振った。しゃらしゃらと美しい、金属がこすれる音が頭の上でなる。
 弥絃を載せた輿が前へと進みだした。その足取りは重く、その場にいた人、全員の心情を表しているようだった。
 弥絃の母親がたまらず地に伏せる。俯けた顔から、いくつもの涙が何度も何度も流れ落ちる。いくつもの言葉が幾度も幾度も零れ落ちる。それは届くはずがないけれど、伝わることはないけれど。

「どうして、あの子が……」

 声になっていない嗚咽が溢れ、空気を振るわせる。空気のみならず、人々を振るわせる。

「何故……? 何で!! どうしてあの子なの?! 何かあの子が悪いことしたの?! あの子は、普通の子だわ。あの子は、私たちの子よ。
 少しだけ、ほんの少しだけ、人とは違う光をもつだけなのに。それだけなのに、ど、うして……?」

 幾度も幾度も問うその声に、答える声はなく、父親がただそっとその肩を抱いた。しかしそこへ、唐突に答えが聞こえた。

「少し……? あの娘の力がほんの少し、常人とは違うと言うか」

 痩せこけて、生気がまるで感じられない蒼白い顔。ぎらぎらと光る、気味の悪い瞳の光。それは、弥絃の瞳が持つ光とは対照的だった。

「あの娘は特別な力を持つ……。ゆえに、この村を救うために鬼神の元へと嫁入りした。お前たちの私情で、この村を滅ぼすか?」

 ――もっと早くにこうすれば、私の妻も子も、死なずに済んだ。その言葉を聞き、父親と母親は返す言葉を失った。
 娘さえ無事なら、この村なんてどうなってもいいとは言えなかった。それは弥絃も一緒だ。
 結局は人のことを考えすぎて、優しすぎる人間が傷つく。

「あの娘も幸せだろうて。あの神は美しい神なのだから……」

 もう誰も、何も言わなかった。



 どうして、私でなければいけないの? 

 どうして私は山へ向かっているの?

 ねぇ、母様、父様。私、幸せになれないの? 

 ただ死ぬのを待たなければいけないの?

 村を救う方法は、本当にこれしかなかったの?



 かたん、と輿が地に付いた。音も立てず、扉が開く。

「お降り下さい」

 女の言葉に従い、弥絃は輿から降りた。今まで着たこともない深い山の中。
 村の空気とどこか違う、新鮮で神々しいまでの気。その気配に、体が自然と強張るのを感じる。
 静かで、生き物さえいないのではないかと思わされるような……小さな祠(ほこら)の前だった。
 ここが死に場所か、と弥絃は呆然と思う。その時、突然目を何かで覆われた。
 光さえ感じられないごつい布で目隠しされる。それに抗議を上げようと口を開くと、その口にも猿轡(さるぐつわ)を噛まされた。
 そして手足もしっかりと縛られる。弥絃はなす術もなく項垂れた。

「逃げられては、困るんだよ」

 女の声が優しく、優しく響いた。ゆっくり、ゆっくり、人の気配が消えていく。
 ただでさえ静かな世界から音がなくなる。それを肌で感じ弥絃は身じろぎした。怖い、とても怖い……。
 
 『置いていかないで』と叫びたいのに、言葉は出てこず……。
 
 『一人にしないで』と追いすがりたいのに、手も足も動かない。
 
 人の気配を求めれば求めるほど、自分が今一人なのだと分かり、弥絃は涙を流した。
 鬼に嫁入りすると村長から聞いた時も、両親と別れる時でさえ出なかった涙が目隠しの布に染み込んだ。
 ひんやりと森の空気に触れ、布は冷たくなっていく。涙が流れている感覚がないせいか、泣いているという実感がわかなかった。
 
 
 『死にたくない』とその時、初めて感じた。
 
 それでも、次の瞬間には全て仕方がないと思っている自分がいることに弥絃は気付く。そう、仕方がなかったのだ、実際。
 何人もの人間が今回の凶作で死んでいった。あの元気だった友でさえも、力なく倒れていった。
 弥絃が生贄にならなければ、その数はもっと増えるだろう。そんなことぐらい、分かりきっていた。
 弥絃は悲惨な状況だった畑を思い出す。毎年太陽の光を受けて輝く穂は茶色く変色し、元気なく枯れていった。
 弥絃の家は決して裕福な家でなく、家族全員が毎年生き延び、ほんの少し売る穀物ができるような家だった。
 しかし弥絃が生贄にと決まったその日、たくさんの穀物や反物、貴金属が送られた。
 贅沢さえしなければ、五、六年は余裕で暮らせるであろうその物たちと弥絃は交換されたのだ。
 しかし弥絃はそれらに怒りは感じなかった。皆生きたいに決まっている。そして、それ相応の犠牲も仕方がない。
 そうしなければ生きられない。それは本当に仕方がないことなのだ。だけど……。
 
 『生きたい』という、その思いを止めることができなかった。
 
 村を救いたいという気持ちと、生きたいと思う気持ち、そのどちらも嘘ではない。
 そのどちらを取ることもできない。弥絃は涙を止めることなく、俯いたまま時間が過ぎるのを感じた。




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無題
弥弦チャン可愛い!!ってか綺麗!!泣いてるけど…(誰ですか?!泣かしたのは!?)良いなぁ花嫁衣装~vv凄い綺麗ですよね~白無垢vv

いつきサンは結婚式は“ドレス”ですか?“着物”ですか?それとも贅沢に“どっちも”ですか?凄く気になる所です!!
RareFeel 2008/09/14(Sun) 編集
にゅ。
あぁ~。結婚自体、できるかどうか、なんですけど。
私はのっぺり平安時代美人顔(下ぶくれ、一重で細い)なので、ドレスは着れない気がします。
似合わなさすぎですね。髪だけは伸ばしているので、着物ですかね。

着物もドレスも好きですけど。
いつき 2008/09/14(Sun) 編集
無題
良いですね。着物。私は似合わないんですよ。正月の度に着させられるんですけど……姉妹で一番似合わないんですよねぇ(遠い目)いつきサンの着物姿見たみたいです。もぅお正月に会いましょう!デートしましょう!
RareFeel 2008/09/14(Sun) 編集
ハハハ
え。見るのは好きですけど、着るのはどうも。

初詣は三日ぐらいにいく、出無精なので。(笑)
似合わないし。着物で歩くなんて、貧血で倒れるの覚悟で行かなきゃ。(締め付けが強いので)
いつき 2008/09/15(Mon) 編集
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でも本人は精一杯急いでいるつもりだったりします。
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