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いつきが日々を綴ります。日々のぐだぐだを語ったりしてます。時々本の感想が紛れ込んでたりするかもです。
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 一週間とちょっとぶりですかね、小説の更新。今日は調子がいいので、もう一回更新です。

 微妙なところできっておいて、放って置いてすみません。アレクよりエイルさんの方が好きと言われました……。どうなんだろう、ヒーローより好きって。

 アレクとティアちゃんはお友達がイラストを描いてくれました。のせたいのですけど、あくまでその方に著作権があるので載せられません。
『載せてイイ? Kちゃん(可能な限り媚を売る)』
『駄目(取り付く島もなく、一刀両断)』
 という、会話が繰り広げられています。すっごく美麗なのに。ティアちゃんなんて超美人なのに。
 アレクは線が細いです。かっこいい……。ちなみに今度載せていく予定の『勿忘草』という小説の紫苑さんと弥絃ちゃんもいます。

 そのうち載せてみせますから!! ケータイで写真とって(スキャナーがないのです)。

 と、いうわけで美麗イラストにニヤケながら書いています。『姫と騎士』です。
 エイルさんが活躍する回であり、アレクとティアちゃんがちょっといちゃこらしてます。

+ + + + + + + + + +
「そこにいるのは本物の姫君か?」

 一人の男が出てきてアレクに聞く。アレクたちの顔から血の気が一斉に引いた。彼らが誘拐したのが別人だとばれている。

「姫君はさぞかし優しいんだろうと市井のものは噂している。その姫の身代わりにこの女が死んだと知ったら、どんなに悲しむだろうな」

 不惑の年をいくつか過ぎたような、がっしりとした男はニヤリと気味悪く笑った。その男の後ろからプルーが引きずられて出てきた。
 ぐったりと力なくうなだれ、美しいドレスはところどころ破られたようにぼろぼろだった。首や脚がむき出しで赤い痕が付いている。
 硬いもので殴られたように、その赤い痕の奥に青いあざが浮き上がっている。顔のあちこちに血がこびりつき、ティアは手を握り締めた。
 思わず駆け寄ろうとするアレクは半ば押さえるようにして留めた。

「死んでいるの……?」

 ひどく幼い声で、それでも必死に冷静さを保とうとして努力する。男は再び笑った。

「ほぉ。噂通りの優しい姫だ。あなたが大人しくこちらに来ればこいつは返そう。もう役には立たない。なぁに、命に別状はないさ」

 ぐいっとプルーの髪を掴み、上を向かせる。その顔が痛みに歪むことすら、なかった。

「リシティア様……」

「姫様が行く必要はない」

 アレクの声を遮るようにエイルは言った。そしてティアを後ろへと押し返した後、男たちをゆっくりと見回した。めったに怒ることも、声を荒げることもないエイルの表情が今はとても冷たい。
 それが信頼している副隊長を傷つけられた所為か、ティアをこちらへ渡せと言われた所為かは分からない。

「その者は国を守るための警備隊の副隊長だ。その者の為に何故、姫様がお前のような者の元へ行かなければならない?」

 いつも厳しいアレクとは対称的だと思っていたエイルの声はとても鋭い。いつも笑顔だったその表情は全くなく、やはり若くして隊長をやっているだけの眼光があった。

「その者も姫様の身代わりに死ぬのなら本望だろう。殺すのなら、さっさと「やめて!!」

 これ以上聞いていられなくて、ティアが声を上げる。そんなこと言って欲しくなかった。プルーを心配して、わざわざティアに言いに来るようなエイルに、プルーが死んでもいいなんて口に出して欲しくなかった。
 例えそれが本当のことでなくても、ただの狂言だったとしても。言葉にすれば、口に出せば、本当に思っているのかと、疑ってしまうから……。
 アレクが支えているが、ティアの体からはすでに力が抜けていた。その様子を見てもエイルは言葉を止めなかった。

「姫様はいずれ女王になられるお方。いえ、例えならなかったとしても、国にとって重要な方です。こんなところで亡くならなくてはならないお方ではございません。守られるべき方なのです」

「それでも……」

 それでも、そんなことを言うのはあなたじゃなくてもいいでしょう? そう聞きそうになる。しかし、ティアは絞り出すような声で、違う言葉を紡いだ。

「騎士も、兵も立派な我が国の民です。わたしは女王になる身である前に、一人の王女です。わたしが王女である限り、無駄なけが人も、死人も出させません。無益な争いだってさせない。民も守れぬ王はもはや王でなく、ただの為政者です」

 そう言ってアレクを押しのけた。アレクはティアの手を掴もうとするが、その手は宙をきる。
 ティアは今まで結っていた髪を解いた。ふわり、とブロンドが広がり波立たせた。
 先程までの弱さは消え、顔には笑みさえも浮かべている。王女だと言われなくても、誰もが認めるであろう、威厳ある姿。

「我が兵は我が民。何人たりとも傷つけることは許さぬ」

 低い宣言に回りの男たちが、隊員でさえもびくりと身をすくませた。服装は普通の見習い騎士の制服姿だったが、その姿は王宮にいるときとか変わりなかった。コツリ、足音が一際大きく響く。一歩、一歩プルーの傍へ歩いていく。

「わたしがくれば……プルーは用なし、なんでしょ?」

 自分より遥かに身長の高い男を真っ直ぐと見つめ、声を出した。

「でも、覚えておきなさい。わたしはあなたたちの主謀者を知っているわ。あなたたちの目的も大体分かる。わたしをここで軟禁したからといって、あなたたちの思い通りになるとは思わないで」

 凛とした声に男はたじろぎつつ、それでもティアの腕を掴んで笑った。背筋の寒くなるような笑み。

「そんなことはいいさ。俺たちに任された仕事はあんたをおびき寄せて、ここに監禁しておくだけ。あとはお偉い方が考えてくれるさ」

 そう言うとティアの腕を掴んだまま、自分たちの仲間の方へと歩く。ティアは大人しく従い、俯いたまま顔を上げようともしない。

「姫。怖さで上を向かっていられないか? 先程までの威勢のよさはどうしたんだ? えぇ? 傷つけることは許さぬ、と言ったくせにいざ自分が傷つくとなると怖気づく。所詮、身分の高い人間はそんなもんだろうな。そうだろう? 蝶よ花よと育てられた深窓の王女様?」

 男はティアの頤に手をそえ、くいっと持ち上げた。掴まれていた腕はだらりと垂れ下がり、フラフラと揺れている。

「あぁ、思い出したから言うけど、誰があなたたちの言いなりになるって言ったかしら? わたしがそんなに大人しいように見えて?」

 にやり、といつもと全く違う笑みを浮かべ、ティアは言った。

「なっ」

 何が言いたい? と問う暇もなく首筋に冷たい物が当たる。目だけを動かし伺うと、ティアが細身の剣を突きつけていた。

「動いたら、ごめんなさい。わたし慣れていないから力加減が分からないの。命の保障は出来ない、って言ってるの分かる?」

 ひやりとするような言葉に、どう返したらいいのか一瞬迷う男。

「姫に人が殺せるのか?」

 首筋の冷たさに冷汗をかきながらも、男は気丈に話しかける。その顔には未だ余裕と呼べるようなものが僅かに残っている。しかし次の言葉で、その僅かな余裕も完全になくなることになる。

「あら? わたし、今殺すって言った? ただ保障しないって言っただけよ? わたしはあなたの動きを止めるだけでいいの。脅して。だって、ほら」

 そう言って嬉しそうに男の後ろを指差した。

「アレクがここに来るまでの時間を稼げばいいんですもの」

 無邪気とも取れる顔が一瞬に冷たくなる。

「王族に反旗を翻す者、之重罪なり。王族に仕える者に危害を与えた者、之許すべからず」

 冴え冴えとした声が響き渡ると同時に、男の仲間が一斉に剣を抜き放った。それを見てティアは少しだけ、顔を俯ける。

「アレク。全てはあなたとエイルに任せます」

 それだけ言い置いて、プルーの方へ下がろうとしたティアの腕をアレクが掴む。

「……っ!!」
 びくりと震え、ティアは咄嗟にアレクの腕を振り払った。その顔は恐怖で染まり、歪んでいる。そしてその後、すぐに自分がしたことに気付き、一層顔を青ざめさせた。
 アレクに握られた右手首を左手で包み、カタカタと震えている手を必死に止めようとする。

「アレク、あの」

 何とか言わなくてはと思いつつ、何も口をついて出てこない。恐る恐るティアはアレクに手を伸ばした。一度はじいておいて、自分から手を伸ばすなんて。そんな思いもよぎるが、その考えを振り切った。
 スッとアレクの手が伸びて来るのを見て、ティアは突然『はじかれたらどうしよう』と思った。先程自分がしたようにはじかれたら……。意識するとその思いはますます大きくなり、ティアは怖くなって思わず目を瞑った。そう思うと先程の行為をより一層悔いる。

「まったく……」

 いつもより少しだけ感情の見え隠れする声がして、ティアは目を開けた。アレクの手がティアの手を掬い取り、優しく力を込めた。ピクリ、と体が反応してしまう。
 小さい頃はよく手をつないだ。その頃は剣を持ち初めで掌は柔らかく、肉刺が出来たと言っては痛がっていた。手の大きさだってそんなに変わらなくって……。どちらかと言うと、剣を持ち始めたのが早い分ティアの方がしっかりした作りをしていた気がする。
 今ではもう、硬かった肉刺もなくなってしまい、どこからどう見てもお姫様の手になってしまった手を見て悔しさ半分、それでも女らしくなったと嬉しくも思ってしまう。
 一方アレクの手はあれから随分変わってしまった。ティアよりも随分と大きくなり、すらりと細く長いにもかかわらず、しっかりとした……剣を扱う手になっていた。
 無骨ではないけれど、決して華奢な印象も与えないような手。幾つかある傷は大小様々で、公爵家の次男が……と眉を顰めるご婦人もいる。
 しかしその傷は努力の量であり、国を守りたいと言う気持ちの表れだと、ティアは信じて疑わなかった。アレクに握られた自分の手はいつもよりずっと小さく見えて、改めて違う生き物なんだと認識した。

「守りにくくて仕方がありませんね。あなたは……。怖いなら怖いと、大人しくしていればいいものを……。こちらは寿命が縮まるような思いでした」

 そう言って息を吐いた。そこで初めてアレクにいつもの余裕がないことに気付き、小さく驚いてしまう。
 しかしそれを指摘してしまえば、あっさりと否定される気がしたのでティアは口を噤んだまま、アレクを見つめ次の言葉を待った。

「弱いなら弱いなりに守る方への負担を考えてください。本当に血の気が引いてしまいました」

 その顔がとても、痛そうで、今回自分はとても心配かけてしまったんだとティアは改めて悟った。しゅん、と項垂れるようにして、アレクの胸に頭を預けた。

「ごめ……んなさい」

 自分の声が震えているのが分かって、それでやっと怖かったのだと自覚した。殺されることが怖かったわけではない。
 王族である以上、いつ国のために首を差し出さなければならないときが来るのか分からないのだ。国と民のために死ぬ覚悟は出来ている。でも……。
 あんな男たちに例え五年という歳月の間でも好きにされるのがたまらなく嫌だった。何をされるか分からない。王族への不満をぶちまけるか、それとも……。考えるだけで悪寒が走り、きゅっとアレクの軍服を握った。



 気が付くと当たりは静まっていて、男たちは地面に伏していた。……血と泥にまみれて。ティアがそれらを……生きているように人と呼べなくなった者たちも見つめ続ける。
 いつの間にかアレクの手はティアから離れ、アレクは目の前にいるティアを心配そうに見つめていた。
 死体を見るティアの表情に目に見える悲しみはなく、ただ喪失感と言うに相応しい感情が表れていた。そんな表情を見ていたアレクは唐突にティアの目を後ろから塞いぐ。

「え……?」

 いきなり暗くなった視界に驚き、それでもその原因が信頼している人間だと知り肩の力を抜く。ティアは目隠しをされたまま、仰け反ってアレクの顔を見ようとした。アレクは右手でティアに目隠しをして、左手でティアの体を引き寄せるとティアの耳元に唇を持っていく。
 ティアは状況が分からない混乱と、耳元にあるアレクの気配に固まり、されるがままになっている。

「できれば……」

 そう小さな声でアレクが言う。いつものきびきびとした説教めいた口調ではない。もっと頼りなくって、弱い声だった。

「できることならあなたに……。こんな光景を見せたくありませんでした」

 悔やむような、自分を戒めるような声にティアは声を挟むこともできず、アレクの左手の袖をそっと握り締めた。

「あなたには見る必要のないものです」

 それは一体何のことを言っているのだろう、とティアは暗闇の中で考えた。暗闇は大嫌いだったはずなのに、この暗闇は全てを包み込むように優しく、穏やかだ。

 国民同士が傷つけ合うところを見せたくなかった?
 誰かが死ぬところを見せたくなかった?
 ボロボロな死体を見せたくなかった?
 国民が自分を……王女を裏切るところを見せたくなかった?

 全て合っているのかもしれないし、全て合っていないかもしれない。しかしティアにはアレクに聞き返すほどの勇気はなく、大人しく体重をアレクに預けた。
 その時遠くの方でプルーの名を呼ぶ声が聞こえ、ハッとした。ティアは今までプルーの状態を気にしていなかった自分を恥じ、すぐさま向かおうとする。
 が、一拍差でアレクがティアの体を抱く力を強めた方が早く、ティアはアレクから逃げられない。首をめぐらせると、やっと目隠しをはずされ、目の前にアレクの顔が現れる。いつも通りの顔だ。アレクは小さく笑い、そっと耳打ちした。

「しばらくそっとして置いてやってください。プルーの心配を一番していたのはエイルですから」

 そう言えばプルーを呼んでいた声は焦っていて、いつもとは違っていたけど……。言われてみればエイルかもしれない。ティアは大人しくアレクに従い、二人の様子を見守った。




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でも本人は精一杯急いでいるつもりだったりします。
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