いつきが日々を綴ります。日々のぐだぐだを語ったりしてます。時々本の感想が紛れ込んでたりするかもです。
えっと、前回の日記でかなりの数の人にご心配をおかけしました。拍手などでご心配くださった方、すみません。
大丈夫ですよー。能天気かつ自己中に過ごしてます。基本、落ち込むことも泣くこともない人間ですから。
ええ、おとなしそうに見えてかなり図太くできてますから。
話は変わりますが、拍手のアレクを見て『誰ですか』と質問されました。そんなに本編での彼と性格変わってるんでしょうか。
続編であまりにもあまりな役柄の彼へのせめてもの気遣いだったのですが。覚悟しててください、かなり可哀想なことになってますから。
……アレクがカッコイイと言われるより、ティアがカッコイイと言われるほうが多いのが、目下の悩みですが。(笑)
大丈夫ですよー。能天気かつ自己中に過ごしてます。基本、落ち込むことも泣くこともない人間ですから。
ええ、おとなしそうに見えてかなり図太くできてますから。
話は変わりますが、拍手のアレクを見て『誰ですか』と質問されました。そんなに本編での彼と性格変わってるんでしょうか。
続編であまりにもあまりな役柄の彼へのせめてもの気遣いだったのですが。覚悟しててください、かなり可哀想なことになってますから。
……アレクがカッコイイと言われるより、ティアがカッコイイと言われるほうが多いのが、目下の悩みですが。(笑)
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『本番』
「椿?」
「お父さん、私、やっぱり」
「早くしなさい」
やっぱりお見合いしたくないと、今更言えるだろうか。まだあの人が好きだと、言っても許されるだろうか。
椿は雑誌を胸に抱く。いつの間にか自分の前には襖があり、父と母に挟まれていた。観念するしかないのか。
「お相手が来るから」
「女性の方が早く来ないと……そのために少々遅れてきてくださるのだから」
母に襟元を直され、髪をそっと触れられる。それだけでもう、何も言えなくなる。したくない、と言いたいのに、今すぐあの人に逢いたいのに。
それでももう、口には出せない。
「椿」
「お父さんっ」
せめて言おうと口を開いた瞬間、襖が開く。見知らぬ男が立っていた。立ち姿の美しい人だった。すっと伸びた背丈に長い足。
スーツがよく似合う男は椿を見て笑った。
すでに男のほうが来ていたのだ。
「初めまして」
「――はじめ、まして」
にこりと邪気のなさそうな笑顔に毒気が抜かれる。来た瞬間断ろうと思っていたのに、呆気にとられた。
ぎゅっと机の下に置いた雑誌を握った。父が笑いながら座る。自分も母もそれに習った。
その人の父親と母親もまたきちんとした身なりだ。その人が何かを言って、椿の口はひとりでに何かを返す。
男は満足そうに笑ってまた何か話す。椿の父も笑う。
ぎゅっと再び雑誌を握って目を瞑る。
時間が過ぎるのを、ひたすら待とうとした。いつの間にか、父も母もいなくなっている。
「と、いうことです。椿さん」
「あっ、はい。そうです、ね」
まともにこの人の声を聞いた気がして、椿は慌てた。
名前も聞いたはずなのに覚えていない。ひどく現実味のない感覚が椿を包んでいた。
「あの……」
やっとのことで声を出す。手の中にある紙の感触だけが唯一、はっきりと意識させられた。
雑誌からそっと手を離し、その男を見つめる。目鼻立ちのはっきりした人で、でも文彦とは全く違う。
「やっとこちらを向いてくれましたね」
すっと男の手が伸びてくる。
避けるまもなく、その手が椿の頬へ触れた。びくりと方が震えると、その男は微笑したまま、二度三度指をゆっくりと上下に動かした。
「やめっ」
「怖いですか?」
椿の声を聞き、男が目を伏せて笑う。
怖いと思う。初対面の、しかも男の人に触れられるなんて思いもしなかった。椿が逃げようと腰をわずかに浮かすと、すかさず手首を掴まれた。
つかまれた右手首にひんやりとした手の感触を感じる。
「椿さん?」
「あのっ、わた、私……私好きな」
引き寄せられる、と思った寸前、後ろから手が出てきて、腰に手を回された。
あっと、声が出る。それと同時に、どくりと胸が鳴った。恐ろしくて、後ろを向けなかったのに、その手を持った人は分かった。
求めて、求めて……手に入らなかったもの。
11話
「椿?」
「お父さん、私、やっぱり」
「早くしなさい」
やっぱりお見合いしたくないと、今更言えるだろうか。まだあの人が好きだと、言っても許されるだろうか。
椿は雑誌を胸に抱く。いつの間にか自分の前には襖があり、父と母に挟まれていた。観念するしかないのか。
「お相手が来るから」
「女性の方が早く来ないと……そのために少々遅れてきてくださるのだから」
母に襟元を直され、髪をそっと触れられる。それだけでもう、何も言えなくなる。したくない、と言いたいのに、今すぐあの人に逢いたいのに。
それでももう、口には出せない。
「椿」
「お父さんっ」
せめて言おうと口を開いた瞬間、襖が開く。見知らぬ男が立っていた。立ち姿の美しい人だった。すっと伸びた背丈に長い足。
スーツがよく似合う男は椿を見て笑った。
すでに男のほうが来ていたのだ。
「初めまして」
「――はじめ、まして」
にこりと邪気のなさそうな笑顔に毒気が抜かれる。来た瞬間断ろうと思っていたのに、呆気にとられた。
ぎゅっと机の下に置いた雑誌を握った。父が笑いながら座る。自分も母もそれに習った。
その人の父親と母親もまたきちんとした身なりだ。その人が何かを言って、椿の口はひとりでに何かを返す。
男は満足そうに笑ってまた何か話す。椿の父も笑う。
ぎゅっと再び雑誌を握って目を瞑る。
時間が過ぎるのを、ひたすら待とうとした。いつの間にか、父も母もいなくなっている。
「と、いうことです。椿さん」
「あっ、はい。そうです、ね」
まともにこの人の声を聞いた気がして、椿は慌てた。
名前も聞いたはずなのに覚えていない。ひどく現実味のない感覚が椿を包んでいた。
「あの……」
やっとのことで声を出す。手の中にある紙の感触だけが唯一、はっきりと意識させられた。
雑誌からそっと手を離し、その男を見つめる。目鼻立ちのはっきりした人で、でも文彦とは全く違う。
「やっとこちらを向いてくれましたね」
すっと男の手が伸びてくる。
避けるまもなく、その手が椿の頬へ触れた。びくりと方が震えると、その男は微笑したまま、二度三度指をゆっくりと上下に動かした。
「やめっ」
「怖いですか?」
椿の声を聞き、男が目を伏せて笑う。
怖いと思う。初対面の、しかも男の人に触れられるなんて思いもしなかった。椿が逃げようと腰をわずかに浮かすと、すかさず手首を掴まれた。
つかまれた右手首にひんやりとした手の感触を感じる。
「椿さん?」
「あのっ、わた、私……私好きな」
引き寄せられる、と思った寸前、後ろから手が出てきて、腰に手を回された。
あっと、声が出る。それと同時に、どくりと胸が鳴った。恐ろしくて、後ろを向けなかったのに、その手を持った人は分かった。
求めて、求めて……手に入らなかったもの。
11話
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