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いつきが日々を綴ります。日々のぐだぐだを語ったりしてます。時々本の感想が紛れ込んでたりするかもです。
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 昨日更新忘れてました。イエ、更新できなかったんです! 土曜日もしてたし、まぁ、いいかな、とか思ったり。……したんですが。
 火曜に来る方が多いようなので、火曜日に更新できるようには、頑張ります、よ??
 
 まっ、コピーして貼るだけだしね。(それでもしないモノグサ)
 肝心な『鐘の音』は打ち込んでないし。『姫と騎士』のも打ち込んでないし。そろそろ書き直さなきゃいけない『drop』も進んでないし。
 ――一度に手を出しすぎだと最近気が付きました。笑ってください。短編ちょこちょこ書いてますが、やっぱり長編のほうがいいです。
 短編だと話がぶつぶつ切れて面白くない。
 オムニバスなのにしようかなと思いつつ、そんな微妙につながったなんて賢いこと思いつかないわけでして。
 
 単純に何か甘いものを衝動的に求めています。

<追加>9:00
 拍手を十種類に戻しました。今回は『姫と騎士』を書き終わったので、後半はそればっかりです。
 ティアとアレクがどうなったかなんて、想像つくけど見たくないっ!! という方は九個目と十個目はご注意です。

+ + + + + + + + + +
『別離も何もかも』




「私は、あなた以外に大切なモノなんてないのに?」

 その言葉に今度はダンテが首を傾げる番だった。
 それが示すものが分からず、エリスの顔を見つめるとエリスは小さく微笑した。

「でもダンテは違うでしょう?」

 これが答えだ。

「あなたには王妃も王子もいる。何より守りたい民がいる。これ以上に何が大事なの?」

 私は賢者という地位以外、何も持っていない。守りたいものさえない。

「ダンテを失ったら、私は存在理由もなくなるの」

 エリスは血で染まるドレスに目を向け、そして斑点に指を這わせた。どうしようもないくらい、彼女は今悲しかった。
 今まで誰にも必要とされなかったという事実を突きつけられた。
 そしてダンテが死ねばまたそうなるのだろうと、簡単に分かった。……分かったことを、真正面から突きつけられたのだ。

「あなたは、大丈夫でしょう。私が死んでも、皆がいる。息子が後を継いで、そしてその子供の顔を見て――。
魔王として生きれば、独りになることもない。王妃様だっていつもあなたの側にいる」

 エリスは苦笑した。これではまるで王妃と王子に嫉妬しているように聞こえてしまう。

「いずれ、あなたは私を忘れるはずだったのよ。私が、死んだ後」

 長い、永い一生の内のほんの数年の出来事だから。

「でも私は、あなたしか必要じゃないし、あなた以外に必要とされたくない。私はっ!!」

 私の寿命では、あなたを忘れられない。
 泣き出したくなるほど優しくされたことなどなかった。
 誰からも『大切だ』と言われたことなどなかった。どういうときに、抱きしめてあげたいと思うのか知らなかった。

「あなたが死んだ後、私は何のために生きるの?」

「エリス」

「どうして、私は生きてるの……」

 嗚咽が漏れて、それから幾時泣いたかエリスには分からなかった。
 ただダンテは何も言わず、落ち着かせるように時折背中を叩くだけだった。そして初めて感じた。取り残されていく、その恐ろしさを。
 何時間そうしていたか、あるときダンテは口を開いた。
 未だ涙の枯れぬエリスに小さな口付けを落とし、安心させるように笑う。
 そうするといつも厳しく見える顔がとても優しく見えてしまう。

「エリス。死ぬために生きろ」

 何時(いつ)か来る、そのときを探して生きろ。

「死ぬのを、目的にしろと言うの?」

「そうだ」

 そうすれば、いつかきっと迎えに来てやろう。

「生きる者には等しく死がある。だから」

 お前がそれまで目的を持って生きたのであれば、俺はどんなことをしてでも迎えにいく。

「お前は俺が唯一、欲した女だからな」

 初めて手に入れたいと思ったのは国の領土や宝石などではなく、一対の強い光を宿す瞳の少女だった。
 民が幸せならそれでいいと思っていた自分が、唯一誰よりも幸せにしたいと思ったのはこの少女だった。

 置いて逝かれるのを恐れるくらい、愛したのもこの少女だった。
 その恐れを相手に押し付けることでしか、その恐れを取り去ることができなかった。それでも謝罪の言葉は出てこない。

「土産話は飽きるほど用意してろよ」

 そしてそのとき、二人で笑って会おう。でも。

「あと数百年は一緒にいてやるさ」

 だからお前が独りになるのは当分先だ。それまでに、決心はつくだろう?


 『数百年は一緒にいる』
 ――その約束は破られることはないはずだった。


 しかしそれは思いがけない形で破られる。エリスでさえ、予想し得ない形で。





 そのときは唐突にやってきた。
 気配さえ感じさせず、影さえ見せず――予想さえ、させなかった。
 メイドたちの悲鳴も、大臣たちの怒声も、吹き飛ぶ人影も倒れ行く人も。全てその瞬間にならなければ分からなかった。

 倒れた人から流れ出る血が、広く広く床に血溜まりを作る。
 見知った男が血に染まっていくのを、エリスは他人事のように見ていた。何が起こったのかすぐには理解できず呆然としていた。
 人々に王妃と呼ばれている人物は、細身のナイフを持った腕をだらりとたらしている。ナイフの先から血が一滴、静かに落ちた。

「お慕い、しておりましたのに」

 ポツリと彼女は言った。
 倒れている人物を見つめ、感情の抜け落ちた声で呟く。血溜まりの中心に倒れた人物は小さくうめいた。
 それでやっとエリスは事態を把握する。

「ダンテっ」

「大丈夫だ」

 何が、と口が動くのに、エリスはそれ以上言えなかった。
 同じナイフをこちらへも向け、王妃はにっと顔を歪める。いつも穏やかでも上品だと思っていた顔が崩れた。

「ジルベールを産み、王妃としてあなたを支えていたわたくしの、どこが不満でしたの」

 こんな人間ごときに心を奪われ、『賢者』の地位まで与えて。

「数百年をともにした、あなたを慕い続けたわたくしを、蔑ろにして」

 ナイフの先がエリスに向けられる。
 エリスは一歩下がり、しかしそれ以上動くことはなかった。

「あなたさえ、いかなったら」

 わたくしはまだ愛されていたのに。
 近づくナイフを見ながらも、エリスが考えていたことは別のことだった。
 『この人を自分は傷つけたのだ』と、『優しかったこの人を壊したのは自分だ』と。それならば。

 殺されても仕方がないのかもしれないと。

 エリスはそう思って目を閉じた。数年前ならば死を覚悟したときでさえ、しっかりと開いていた瞳を閉じた。
 しかし襲ってくるはずの痛みは泣く、代わりに温かな腕に抱き上げられた。

「生きろと、言ったはずだ」

 耳元で強く言われる。体の芯を震わせるような深い声だった。

「急所を外したことが、せめてもの救いだな」

 エリスを抱き寄せ、苦く笑う。服から滴り落ちる血が、それを信じさせなかった。
 ダンテがどうここまで来たのか分かってしまうくらい、血の跡が床についていた。
 自分の服さえ濡らす血を、エリスは何とか止めようと手で押さえた。
 それでも少しずつ溢れ出る血は手を伝い、制限なく床へと落ちていく。

「大丈夫だ、すぐには死なない」

 『すぐには』? と聞き返したかった。
 しかしダンテはその言葉さえ許さず、王妃に向き直る。僅かな哀れみを含んだ視線に王妃は顔を歪める。
 泣く寸前の顔をしながらも、ダンテを見る瞳はあくまで冷静だった。

「エリスを、狙わせたのもお前だな。そしてエリスを殺すのに失敗すると、今度は俺を狙う」

 慎重にやっていたようだが、俺の周りの者は優秀なんだ。
 たかだか王妃の浅知恵が通用すると思うか? お前の周りにいる人間だって、所詮は半端者だろう。

「何故急所を刺さなかった?」

「すぐ、死なれたくなかったのです」

 ――ゆっくり、毒に侵されてくださいませ。

「わたしくの受けた苦しみを少しでも味わってくださいませ」

 美しく優しい声が怖くて、怖くて仕方なかった。


                           22話
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でも本人は精一杯急いでいるつもりだったりします。
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