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いつきが日々を綴ります。日々のぐだぐだを語ったりしてます。時々本の感想が紛れ込んでたりするかもです。
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 すっかり忘れていました~。昨日確認してくださった方がいたらすみません。
 いろんなことに手を出していたので、更新のことは頭にありませんでした。トリップモノも書いてはいるんですが、まずはクリスマスを乗り切らねば。
 ついでに新年にも何かをしたい……。そう思って、色々書いておりました。また幼馴染モノですみません……。好きでしょうがないんです。
 今更ですが、私は小さい子を書くのが好きなんで、所々に幼かった日々が出てきます。主人公たちの過去を妄想することが好きなんですよ。
 

 あと二、三話で完結ですかね。何か最後に短編を載せようかとは思ってるんですけど、とりあえず完結まで突っ走ります。
 ただ、冬休みは23日からなのですが、27日まで学校で補習があるので、クリスマス小説は少し遅れるかもしれません。(補習は全員参加のですからね!!)

+ + + + + + + + + +
「どうして」

 どうして人は無力で、弱くて、強欲で、強かで――不可解なんだろう。

「どうして……!!」

 人を想う気持ちはこんなにも強くて、純粋で――真っ直ぐなんだろう。
 弥絃はゆっくりと立ち上がり、男の方を見る。もう男は痛みに体を丸めていなかった。
 代わりに、呆然と座り虚空を仰いでいた。その瞳には日の光さえ映ってはいなかった。

「私を殺しても、村は豊かになりません。それはあなたも、分かっていたのではないですか?」

 歩み寄り、そして男から離れた地面に落ちている小刀を見る。

「あんなもの、もう必要ないでしょう? 田を耕す人には必要ないものでしょう?」

 男はその声に顔を上げる。無機質な表情だけが現れていた。そしてふらふらと危なかしげに立ち、弥絃に近付く。
 そして、懐から小剣を取り出した。先ほどのような片刃のものでなく、諸刃(もろは)で、どちらでも人を傷付けられるものだ。

「ど……」

 どうして、と続くはずの言葉が不自然に途切れた。弥絃の目に映るのは、先程まで目の前にいた男の背中だった。
 抱きしめられているのかと疑うほど近くに男がいる。
 自分が刺されたのだと気付いたのは一瞬後で、男の手によって引き抜かれた小剣には紅い血がついていた。
 着物を、土を、草を、空気さえも染め上げる、混じりけのない血が噴出す。
 重心が後ろへと移る。体はそのまま地に倒れようと動いた。しかし弥絃の体は地に叩きつけられることなく、紫苑に抱き留められる。
 弥絃はそれを不思議そうに見ながら、聞いた。

「私……。死ぬの、かな?」

 ひどく幼い声が零れる。今まで聞いたことが無いほど幼く聞こえる。紫苑の腕を掴み、自分の方へ引き寄せようとする。
 その力さえ、かすかにしか感じなかった。

「ねぇ、私。ここで死ぬの?」

 痛みを感じているはずなのに、落ち着いた声で――紫苑へ呼びかける。紫苑は返事をせず、男をそっと見つめた。
 その瞳に映る感情は何なのだろうか。

「これで……、村は豊かになる。生きられる。敏子も、一郎も帰ってくる……」 

 繰り返し、繰り返し呟く言葉はまるで意味を成さず、ただ男は言葉を紡ぎ続けるだけだった。

「憐れだな。己の悲しみに捕らわれたか……。人を傷付けることの真の意味を見出さぬまま、人を殺めるか――。人は何と、愚かなものか」

 憐れみか、怒りか、悲しみか。それとも、呆れか。

「だが、この娘は我が生贄。触れることも、傷つけることも許さぬ」

 ――その死をもって、償え。

 すっと、紫苑の目が細まる。あたりの空気が一気に冷えた。緊張の糸がぎりぎりまで張られる感覚。
 凍てつき、触れるもの全てを切り裂く空気。ざわざわと耳障りなほどにざわめく木々たち。
 しかしそれに男は気が付かなかった。……それほどに、男は偽りの世界に捕らわれていた。

「帰ってくる。もうすぐだ。もうすぐ、帰ってくる。家を掃除しなければ。ご馳走を、用意しよう。一郎は、何が好きだったか」

 風が刃と化し、真っ直ぐに男へと向かうはずだった。にもかかわらず、それは寸でのところで方向を変えてしまう。
 そして代わりに声が聞こえた。

「殺さないで」

 と。

「傷付けないで」

 と。

 紫苑はそれを黙ってみていた。

「しゃべるな。死にたいのか――?」

 一瞬、ほんの一瞬だけ、どこか痛む顔をする。本当は弥絃自身が痛いはずなのに、まるでその痛みを紫苑が丸ごと引き受けたかのように思えた。
 それでも体に走る痛みは引いてくれず、弥絃はかすかに顔をしかめた。
 それでも自分以上に顔を歪める紫苑を見て、小さく笑った。

「そうではありません……」

「ならしゃべるな!!」

 初めてのような気がした。この人が、鬼が、こんなにまで感情を露わにするのは。
 もっとその顔が見たいのに、視界はかすれた。白銀の髪も、鮮紅の瞳も、何も映ってはくれなくて、黒く――染まっていく。
 
 見えなくなっていく。

「あ……っ」

 最後に見えたのは、ふらふらと村へ向かう男と、泣き出しそうな鬼の姿だった。




 どうして、そんな顔をするのと聞きたいのに。大丈夫と言いたいのに、その頬に触れたいのに……。目も口も、手も動かない。
 役に立たない。もう意識にも白もやがかかってきた。

 "死ぬの?"

 "もういいじゃない?"

 "とっくの昔になくなる命だったのだから"

 いくつもの言葉が浮かび上がる。そのどれもが正解のようでいて、正解からは程遠い。
 最後に、最後に……。『名』を、呼びたいのに。自分には紫苑を呼ぶ『真名』さえ知らない。
 それでも、名を呼ぼうか。泣いてほしくないから。
 
 ――自分が知っている名に、ありったけの思いを込めて……。






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