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いつきが日々を綴ります。日々のぐだぐだを語ったりしてます。時々本の感想が紛れ込んでたりするかもです。
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 そろそろ終わりに近いですよね……。ストックが尽きていく。これが終わったらどうしようか迷い中です。
 もう、ここでのっけられるような、まともなお話がないんですよね。(涙)
 なんか、もう二年位前の学園モノが唯一残ったものでまとも(完結作)なんですが(それでもベタベタ)、二年前の産物は恐ろしくて手がつけられない。
 

 あ~~。お題でも借りてチマチマ短編祭りにでもしましょうか。短編好きだし。

 早く今書いているものたちを完成させたいのですが、中々進まないのです。
 なるべく冬休み中に下書きは完成させたいです。(多分ムリ)

 年末、お正月はごろごろするので、出没回数は少なくなるかもです。携帯での更新が主かもしれません。あしからず。

 ではでは、あと数話ですので、付き合ってくだされば幸いです。

+ + + + + + + + + +
「……し、おん。紫苑」


 初めて呼ばれた名に、力が宿り言霊となる。紫苑は目を見開き、自分の腕の中にいる少女を見つめた。
 初めて見た時は生きることを諦めてさえいたのに。近頃では笑顔を見せるようになった少女。

 今までの自分を恐れる人とは違い、ただ『優しい』と笑う少女。その笑顔を放したくないと思ったのはいつ頃か。

 それでも少女は『人』で、自分は『人ならざるもの』だ。その隔たりは広くて、深い。いくら手を伸ばしても、届きはしない。届くはずがない。
 それが、人と人ならざるものの運命だからと言ってしまえば、割り切ってしまえばあっけないほどすぐに離れるだろう。
 それが世界の理で、何年も何十年も何百年も前から続いている。世界ができた時から決まっている。
 
 だから、いずれは村へ帰るものとして接していた。少女の笑顔が自分の傍へなくともいいと思っていた。
 少女の笑顔がどこかで存在するなら……いいと思っていたのに。いつの間にか手を離す、その時が来なければいいと思っていた。

 そして、忘れていた。人がとても弱いということを。

 いつでも、この世から消えてしまうということを。目を離せば、気をつけなければいつでも儚くなってしまうということを忘れていた。
 それはあまりにも少女が明るかっただろう。その笑顔があまりにも美しかったからかもしれない。

「私、あなたを、呼ぶ名さえ、知らない」

 苦しげに目を細め、少女は言った。少女はそっと手を伸ばすが、その手は何もない宙に伸ばされる。

「私、ね。あなたが何を恐れて、悲しんでいるのか、分からない……」

 その手を引き寄せると弱々しい力で握り返してくる。
 いつからだろう。この力ない手を守りたいと思ってしまったのは。
 そんなことできないと知りつつ、それでも離したくないと思ってしまったのは。
 安心して何もかも預ける少女を守りつつ、何もかも奪いたいと思ってしまったのは、一体、いつからだろう。

「紫苑だ。俺の真名は『紫苑』だ」

 そう言うと、見えていない目を小さく見開き……そして、笑った。これまで見たことないほど美しく――儚い笑みだった。
 優しく、何かを慈しむような声だった。

「私、あなたのこと……何も知らないと、思っていたけど。一番大切なこと、知ってたのね」

 さよならと、少女の口が動いた気がした。それは別れの言葉だけれど、少女から聞くとは思わなかった。
 いつかいなくなると思っていたにもかかわらず、それなのにその言葉が少女の口から出てくるのが意外だった。

「私も、あなたを置いて逝っちゃう」

 そこで初めて泣きそうな顔をした。『死ぬのか』と聞いた時でさえ、穏やかだった顔が、その時初めて歪んだのだ。
 ごめんなさいと震える声で言う。何を少女が謝っているのか紫苑には分からなかった。

 置いて逝かないでくれと言えば、逝ってしまわないのだろうか。

 どう言えば、この少女は――傍にいてくれるのだろうか。

「お前は……」

 勝手に口が動く。駄目だとどこかで、誰かが警鐘を鳴らす。これは少女の一番大切なものを奪う行為だと知っている。

 少女が一番嫌う禁忌であると簡単に想像がつく。分かっている、してはいけないということを。なのに。

 少女を失いたくなくて、言葉を紡ぐ。

「生きたいと思うか?」

 少女の頬に手を添え、聞く。少女は何を言われているのか分からないとでも言うように、虚ろな目を小さく細めた。

「生きたい……?」

 それが答えなのか分からないような、聞き返しているのではないかと思うような声が聞こえてくる。
 真意の掴めない吐息のような言の葉がよりいっそう強く紫苑を揺さぶる。

「人の生を捨てて、生きたいかと、問うている。俺は、その術(すべ)を持っている」

 けいしょう、が、なる。

 け、いしょうが、なりやまず。

 なりつ、づ、ける。

 あ、たまの、なかで、う、るさい、くら、い、に。

「忌まれる存在になってまで、生きる覚悟が、お前にはあるのかと、聞いたのだ」

 頭の中で、たえま、なく。

 なりやむ、ことなく。
 
 激情が、収まることなく。
 それを押さえつけようと思わぬまま……。紫苑は問うた。抱きしめている弥絃の着物に皺が寄る。
 何かを握り締めていないと、激情をぶつけそうだった。初めて手にする感情の正体を知らぬまま、警鐘だけがやけにはっきりと響いて
 ――耳障りだった。

「いいえ……」

 少女は静かに首を振り、涙を零した。幾度も、幾度も首を振る。血の海がまた、広がっていく。
 それを気にすることなく、濁った瞳を紫苑の声のするほうに向け少女は言った。

「私は、人の子です。どう足掻いても、あなたの隣にいられない……。神とも恐れられるあなたとは違う、穢れた存在……」

 薄くなる呼吸で、言葉をつむぎ続ける。もう紫苑はそれを止めることもなかった。

「人の子として、死なせてくださいませんか?」

 許さぬ、その声は喉で潰えた。言おうとしていた言葉が、呑み込まれる。この少女のどこが、穢れた存在なのだろう。
 その瞳も、声も、全てが凛と澄んでいるのに。自分より余程、神々しく見えるのに。
 なのに、そう思うのにもかかわらず、どの言葉も少女には届かない気がした。

「許、せないんです。あなたの傍にいても、きっと……私は、何もできない」

 口から赤い吐息が出続ける。自分の体温に、人としては低すぎる体温に、少女のそれは近付いてくる。
 それは死の気配。もう慣れたと言ってもおかしくないくらい見てきたもの。それなのに、体の震えを止めることができなかった。





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