いつきが日々を綴ります。日々のぐだぐだを語ったりしてます。時々本の感想が紛れ込んでたりするかもです。
出没回数少なくてすみません。それなのに、クリスマス小説さえ遅れると言う体たらく……。
25は三者懇談でK.Oされたのでしかたない、と言い訳しておきます。勉強なんて、勉強なんてもうしたくないんだよっ!!
そして韓国版の『花より男子』に見入っていました。いえ、画面はあまり見ず、どっちかっていうと音声重視で。
類くんの声が遊佐さんで、西門さんが潤さんでしたー。類くんの声が無駄に色っぽくて困る。(もともと道明寺よりは類くん派。そして原作派)
日本版は全く見てない、けど韓国版は声だけ聞いて頑張ります。
ところで、毎年発行される学校誌があります。一クラスずつテーマを決め、それにそって何かを一ページする、というのが毎年恒例。(一クラス×27)
だいたい、全員が答えるようなテーマ(質問のようなもの)を決め、それを皆で答えるようにする、という感じ。
我がクラスの今年のテーマは『地球最後の日に何をするか』というもの(2012に触発された??)
えっと~、25Mプールでゼリーを作ると書いた人もいれば、アラン・リックマン(俳優さん)に会いに行くと宣言する人も。
九九を限界まで覚えると言うような変り種もありましたね。
いつきは……。最初、『完全犯罪』と書きそうになったのですが(推理小説好き)、さすがに怒られそうなので、『今までにやったことのない暴挙を一つ』で抑えておきました。
これなら具体的に何するか分からないし。某K林さんに喧嘩を売るかもしれない。
さてさて、あまりのできに載せるかどうか迷ったんですが、また年越し前に何かあげるとして、とりあえずクリスマス小説。
25は三者懇談でK.Oされたのでしかたない、と言い訳しておきます。勉強なんて、勉強なんてもうしたくないんだよっ!!
そして韓国版の『花より男子』に見入っていました。いえ、画面はあまり見ず、どっちかっていうと音声重視で。
類くんの声が遊佐さんで、西門さんが潤さんでしたー。類くんの声が無駄に色っぽくて困る。(もともと道明寺よりは類くん派。そして原作派)
日本版は全く見てない、けど韓国版は声だけ聞いて頑張ります。
ところで、毎年発行される学校誌があります。一クラスずつテーマを決め、それにそって何かを一ページする、というのが毎年恒例。(一クラス×27)
だいたい、全員が答えるようなテーマ(質問のようなもの)を決め、それを皆で答えるようにする、という感じ。
我がクラスの今年のテーマは『地球最後の日に何をするか』というもの(2012に触発された??)
えっと~、25Mプールでゼリーを作ると書いた人もいれば、アラン・リックマン(俳優さん)に会いに行くと宣言する人も。
九九を限界まで覚えると言うような変り種もありましたね。
いつきは……。最初、『完全犯罪』と書きそうになったのですが(推理小説好き)、さすがに怒られそうなので、『今までにやったことのない暴挙を一つ』で抑えておきました。
これなら具体的に何するか分からないし。某K林さんに喧嘩を売るかもしれない。
さてさて、あまりのできに載せるかどうか迷ったんですが、また年越し前に何かあげるとして、とりあえずクリスマス小説。
+ + + + + + + + + +
『あわてんぼうの』
雪の全くちらつく様子のない本日、十二月二十三日の深夜。そろそろ寝ようとしていた私の目の前に一人の男が現れた。
……いや、窓から普通に入ってきた。あまりにも自然すぎて、何も言うことができない。まるで自分の家に帰ってきたかのような自然さだ。
間違いなく不審者であるにもかかわらず、悲鳴を上げようとも思えなかった。
「あのー」
「こんばんは。お嬢さん」
真っ白な髪に、明るい青い眼。そしてサンタクロースの目に痛いほど派手な赤い服。
ご丁寧に大きな白い袋まで担いでいる。どこからどう見ても、サンタクロースの格好。
が、サンタクロースには見えない。ふわふわの白い髭もないし、なんせ彼は若い。ついでに言うと、恰幅もよろしくない。
「まさにクリスマス日和ですね」
日和? クリスマス日和って具体的にどんな日を指すんだろう。
ホワイトクリスマスのことを言うんなら、今日はクリスマス日和には当てはまらないと思う。
肝心なのはそんなことではないだろう、と自分自身につっこみつつ、サンタと言うには細すぎ、若すぎの男を見た。でも格好はサンタなのだ。間違いなく。
「よい子のあなたにプレゼントを」
男がそういいつつ、後ろに置いた白い袋を探る。そこでようやく私は今自分のおかれている状況と、今日の日にちを思い出した。
「今、二十三日の十一時五十分なんですけど」
ゴソゴソと白い袋を漁っていた男の手が止まる。
そしてちらりとこちらを振り向いた。日本人とは違う雰囲気を纏っている彼の、綺麗な蒼い瞳としばらく見つめ合う。
チッチッと時計の秒針の音だけが響いたあと、彼はにっこりと笑った。サンタさんの柔和な笑顔だということは認めよう。
「お嬢さん、さっきの言葉をもう一度言っていただけますか?」
酔っている様子はない。『よい子のあなたに』とも言った。そして明日はクリスマスイブだ。
サンタのふりをして子どもにプレゼントを届けるバイトさん、とかかもしれない。今日初めてで、日にち間違えちゃったという可能性だってある。
そう思いつつ、彼の瞳に見入る。カラーコンタクト? それともそれっぽい北欧系の方を雇った?
「今日は二十三日で、今、十一時五十分過ぎなんですけど」
「ウソっ!!」
あ、やっぱり間違えてたんだ。この人。
しかも私はプレゼントをもらうような年でもないので、届け先も間違えたことになる。バイト代、ちゃんと出るかな、こんなので。
「二十四日の深夜では……」
首を横へ振った。確かに、町中がクリスマスモードなので、たとえ今日が二十四日だったとしても違和感はないだろう。
間違えるのも、まぁ、少し無理はあるにしてはないとも言い切れない。
が、いくらサンタのふりをするバイトだからといって、人の家に勝手に入ってくるのはいかがなものだろうか。
せめて玄関から入るとか、ノックするとか最低限のマナーを守って欲しいと思う。――問題はそこではない気もするが。
「どうしよう……。初仕事でこの失敗」
青い目が揺らめいた。不安そうに光をはじく。悪いことを言ってしまったような罪悪感に襲われた。何故だかこちらが凄くひどいことを言ったみたい。
「サンタ失格? もしかして向いてない? せっかく挨拶からプレゼントを渡すときの言葉まで考えて練習してきたのに?」
今、サンタって。サンタって言った。若い男が、髭もない赤いサンタ服を着た男が自らサンタと名乗った。
やっぱり酔っているのかもしれない。もしかしたらクリスマスイブのイブだからって浮かれているのかも。
「えっと」
「おじいちゃんに何を言われるか。一日早くて、しかも髭は途中で取れるし、お腹の詰め物は忘れてくるし」
あ、髭とか最初はつけてたんだ。詰め物、してくるつもりだったんだね、この人。
「あなた、サンタクロースなの?」
ためしに聞いてみる。すると彼はぱっと顔を輝かせた。サンタというよりは、まだそれを信じている子どもみたいな顔をする。
彼はそのまま私の肩を掴んで前後に揺らしながら、『信じてくれるの??』と聞いてくる。
いや、心のそこから信じているわけでもないんだけど、と言い損ねた。
「サンタクロースって言うか、その跡継ぎなんだ」
聞いてもないのに語りだす。
「今日ちゃんとプレゼントを届けることができたら見事合格。来年から僕がサンタクロース」
「代替わりって、あるんだ。サンタなのに」
まだちょっと信じていない。だけどこの人が嘘をついているようにも見えず、返答に困ってしまった。
「なのにっ! 二十三日に来るとか、どれだけバカなサンタ? 本当に向いてんのかな、この仕事」
その言葉を聞いて、そのまじめに眉を寄せている姿を見て、いけないと分かっているのに思わず笑ってしまった。
クスリ、と響いてしまう。彼はそれを見て眉を寄せて、“やっぱり似合わないかな?”と改めて自分の服装を見た。
バイトの人が少しサイズの違うサンタ服を着たような姿だったのを、今更思い出したらしい。
「ううん。そういうことじゃなくって、『あわてんぼうのサンタクロース』っていうクリスマスソングのフレーズが浮かんできて」
あわてんぼうのサンタクロース、クリスマス前にやってきた。
「あー、まさに僕の状態だね、確かに」
面映そうに、彼は頬をかいた。白い肌が少しだけ桃色に染まっている。そこでようやく思い出した。
「でも、どうして初仕事で私のところへ来たの? やっぱり間違えた?」
彼が首を振る。少し長いらしい白い髪が揺れる。
「ほら、サンタって小さい子のところへ行くのが普通でしょ? 何ももう信じていなさそうな私のところに来なくったっていいと思って」
「それはね!」
彼がニコッと笑う。無邪気な笑顔に一歩後ずさり、どうぞ、と手のひらを向け続きを促す。
彼の口から一体どんな答えが出るのか、気になる。何故新人サンタクロースの彼が私を選んだのか。
「お嬢さん、去年底の窓から叫んだでしょ。『サンタがいるんなら、大学合格させろー!』って、しかも大声で。
おじいちゃんのそりから見てて、大学合格はあげられないけど、他のものをあげたいなぁって」
にっこにっこと彼は嬉しそうに顔を赤く染めながら、こちらへ向かって語る。思い出した、いや、正しく言えば、忘れたことなどなかった。
去年、受験生だった私は重苦しい『何か』に嫌気が差して、窓を開けて叫んだのだ。
勉強しても成果は出ないし、センターは近づくだけだし、失敗は許されないという重責にがんじがらめにされていたし。
なのに世界規模でクリスマス気分。一人だけ取り残されている気がして、イライラしたのだ。とっても。
それで、叫んだ。逃げたしたかったのか、泣きたかったのか、部屋が冷えるのもかまわず窓を大きく広げて叫んだ。
かぁっと一番恥ずかしい記憶がフラッシュバックして、頭に血が上る。
今更それを持ち出されるとは思っていなかった。(近所中の人が窓を開けてこちらを見た姿は、まだ記憶に新しい)
「本当にこの子、頑張ってるんだなぁって思ったら、今年のクリスマスが待ち遠しくて、待ち遠しくて」
「なっ。見てたの?! あのもうどうにでもなれー、って叫んでた私を?」
しかもおじいちゃんのそりって、おじいさん(本物)も見てたってことか。あの醜態を。
「うん。それで今年、お嬢さんにプレゼントを渡そうと思ったんだ」
ハイ、これ。
白い大きな袋から少し大きめの箱を一つ取り出す。
緑のチェックの箱に、赤いリボンが結ばれている。押し付けられるように渡されて、思わず受け取ってしまった。
「いいの? もらって」
「どうぞー。あ、今ちょうど二十四日になったし、二十数時間早いけど、クリスマスプレゼントには変わりないよ、きっと。メリークリスマス!」
ずっしりと重い箱の中身は全く見当もつかない。しゅるりと音を立てて光沢のあるリボンを外し、箱を開けた。
ふわふわとした綿のようなものに埋もれていたのは一冊の本だった。曰く。
「『コレさえあれば合格できる! 受験必須テキスト』?」
テキストだった。中を開いてみる。
一年前に勉強したような気もする公式の山、練習問題の山、山、山……。カラーで化学の無機、有機なんかも説明してある。
「お嬢さんにぴったりだよ」
嬉しそうな彼に、どうやら私は本当のことを告げねばならぬらしい。
受験したのは、去年だということを。(確かに試験自体は今年だったが、気分的にはもう去年の話だ)
「あの、非常に言いにくいんだけど、一応合格したから、必要ないんだけど」
「……」
「……」
長い沈黙がある。彼がぽかんとしていた。そしてそれからゆっくりと瞬きをして、両手を打ち合わせる。
「あ、そっか。去年のクリスマスに合格させろってことは、こっちでは今年の春には試験があったんだ」
うんうん、と納得する。
もう去年のように勉強はしたくない。一生分の勉強をした気がするから。いや、間違いなくしたね! 一生分。
「って、ことは。これ、お嬢さんに必要ないってこと……?!」
どよん、と落ち込む。
あ、これもしかして浪人生のふりをしてまで喜ばなきゃいけなかったかも。
一年間この日を楽しみにしていたサンタさんは、どうやら他の事は全く考えていなかったらしい。
「――あわてんぼうのサンタクロースは、もう一度来るために、一度戻ります」
これも、歌どおり、なのか。
「あ、えっと。で、でも嬉しい! ありがとう、サンタさん」
とってつけたような言葉だったのに、彼はとても嬉しそうな顔をして、再び『また来るね』と笑った。
来年は、本物のサンタさんとして出会えればいいな、と思いつつ、彼の赤いサンタ服を掴む。
「向いてると思うよ、サンタクロース」
優しい、人の幸せを考えられる彼なら、世界中の子どもたちを幸せにできるんではないだろうかと、柄にもなくサンタを信じていた頃のように笑ってしまった。
「来年は、二十四日に来るよ。今度はもっと喜ばれるようなプレゼントを持って」
彼が窓から出る。カーテンを開けると白い物体が空から降ってきた。大きな粒の、真っ白いもの。
「雪……」
「言ったでしょ。クリスマス日和ですねって」
彼が笑っていると向こうのほうからシャンシャンシャン、と鐘の音がした。それと同時に白い軌跡を描いて何かがこちらへ向かってくる。
「お休み、お嬢さん。あなたにステキなことが訪れますように」
最後に見たのは、恰幅のよい、真っ白なお髭を蓄えたおじいさんに何か言われている、サンタクロースに見えない来年本物のサンタクロースさんだった。
All My Love On Christmas!
全ての人にとってよいクリスマスでありますように。
――――――――――――――――――――――――――
クリスマスーー。よく分からないような代物ですが、続きが書けそうなそうでなさそうなものです。
でもサンタクロースな彼が好き。
雪の全くちらつく様子のない本日、十二月二十三日の深夜。そろそろ寝ようとしていた私の目の前に一人の男が現れた。
……いや、窓から普通に入ってきた。あまりにも自然すぎて、何も言うことができない。まるで自分の家に帰ってきたかのような自然さだ。
間違いなく不審者であるにもかかわらず、悲鳴を上げようとも思えなかった。
「あのー」
「こんばんは。お嬢さん」
真っ白な髪に、明るい青い眼。そしてサンタクロースの目に痛いほど派手な赤い服。
ご丁寧に大きな白い袋まで担いでいる。どこからどう見ても、サンタクロースの格好。
が、サンタクロースには見えない。ふわふわの白い髭もないし、なんせ彼は若い。ついでに言うと、恰幅もよろしくない。
「まさにクリスマス日和ですね」
日和? クリスマス日和って具体的にどんな日を指すんだろう。
ホワイトクリスマスのことを言うんなら、今日はクリスマス日和には当てはまらないと思う。
肝心なのはそんなことではないだろう、と自分自身につっこみつつ、サンタと言うには細すぎ、若すぎの男を見た。でも格好はサンタなのだ。間違いなく。
「よい子のあなたにプレゼントを」
男がそういいつつ、後ろに置いた白い袋を探る。そこでようやく私は今自分のおかれている状況と、今日の日にちを思い出した。
「今、二十三日の十一時五十分なんですけど」
ゴソゴソと白い袋を漁っていた男の手が止まる。
そしてちらりとこちらを振り向いた。日本人とは違う雰囲気を纏っている彼の、綺麗な蒼い瞳としばらく見つめ合う。
チッチッと時計の秒針の音だけが響いたあと、彼はにっこりと笑った。サンタさんの柔和な笑顔だということは認めよう。
「お嬢さん、さっきの言葉をもう一度言っていただけますか?」
酔っている様子はない。『よい子のあなたに』とも言った。そして明日はクリスマスイブだ。
サンタのふりをして子どもにプレゼントを届けるバイトさん、とかかもしれない。今日初めてで、日にち間違えちゃったという可能性だってある。
そう思いつつ、彼の瞳に見入る。カラーコンタクト? それともそれっぽい北欧系の方を雇った?
「今日は二十三日で、今、十一時五十分過ぎなんですけど」
「ウソっ!!」
あ、やっぱり間違えてたんだ。この人。
しかも私はプレゼントをもらうような年でもないので、届け先も間違えたことになる。バイト代、ちゃんと出るかな、こんなので。
「二十四日の深夜では……」
首を横へ振った。確かに、町中がクリスマスモードなので、たとえ今日が二十四日だったとしても違和感はないだろう。
間違えるのも、まぁ、少し無理はあるにしてはないとも言い切れない。
が、いくらサンタのふりをするバイトだからといって、人の家に勝手に入ってくるのはいかがなものだろうか。
せめて玄関から入るとか、ノックするとか最低限のマナーを守って欲しいと思う。――問題はそこではない気もするが。
「どうしよう……。初仕事でこの失敗」
青い目が揺らめいた。不安そうに光をはじく。悪いことを言ってしまったような罪悪感に襲われた。何故だかこちらが凄くひどいことを言ったみたい。
「サンタ失格? もしかして向いてない? せっかく挨拶からプレゼントを渡すときの言葉まで考えて練習してきたのに?」
今、サンタって。サンタって言った。若い男が、髭もない赤いサンタ服を着た男が自らサンタと名乗った。
やっぱり酔っているのかもしれない。もしかしたらクリスマスイブのイブだからって浮かれているのかも。
「えっと」
「おじいちゃんに何を言われるか。一日早くて、しかも髭は途中で取れるし、お腹の詰め物は忘れてくるし」
あ、髭とか最初はつけてたんだ。詰め物、してくるつもりだったんだね、この人。
「あなた、サンタクロースなの?」
ためしに聞いてみる。すると彼はぱっと顔を輝かせた。サンタというよりは、まだそれを信じている子どもみたいな顔をする。
彼はそのまま私の肩を掴んで前後に揺らしながら、『信じてくれるの??』と聞いてくる。
いや、心のそこから信じているわけでもないんだけど、と言い損ねた。
「サンタクロースって言うか、その跡継ぎなんだ」
聞いてもないのに語りだす。
「今日ちゃんとプレゼントを届けることができたら見事合格。来年から僕がサンタクロース」
「代替わりって、あるんだ。サンタなのに」
まだちょっと信じていない。だけどこの人が嘘をついているようにも見えず、返答に困ってしまった。
「なのにっ! 二十三日に来るとか、どれだけバカなサンタ? 本当に向いてんのかな、この仕事」
その言葉を聞いて、そのまじめに眉を寄せている姿を見て、いけないと分かっているのに思わず笑ってしまった。
クスリ、と響いてしまう。彼はそれを見て眉を寄せて、“やっぱり似合わないかな?”と改めて自分の服装を見た。
バイトの人が少しサイズの違うサンタ服を着たような姿だったのを、今更思い出したらしい。
「ううん。そういうことじゃなくって、『あわてんぼうのサンタクロース』っていうクリスマスソングのフレーズが浮かんできて」
あわてんぼうのサンタクロース、クリスマス前にやってきた。
「あー、まさに僕の状態だね、確かに」
面映そうに、彼は頬をかいた。白い肌が少しだけ桃色に染まっている。そこでようやく思い出した。
「でも、どうして初仕事で私のところへ来たの? やっぱり間違えた?」
彼が首を振る。少し長いらしい白い髪が揺れる。
「ほら、サンタって小さい子のところへ行くのが普通でしょ? 何ももう信じていなさそうな私のところに来なくったっていいと思って」
「それはね!」
彼がニコッと笑う。無邪気な笑顔に一歩後ずさり、どうぞ、と手のひらを向け続きを促す。
彼の口から一体どんな答えが出るのか、気になる。何故新人サンタクロースの彼が私を選んだのか。
「お嬢さん、去年底の窓から叫んだでしょ。『サンタがいるんなら、大学合格させろー!』って、しかも大声で。
おじいちゃんのそりから見てて、大学合格はあげられないけど、他のものをあげたいなぁって」
にっこにっこと彼は嬉しそうに顔を赤く染めながら、こちらへ向かって語る。思い出した、いや、正しく言えば、忘れたことなどなかった。
去年、受験生だった私は重苦しい『何か』に嫌気が差して、窓を開けて叫んだのだ。
勉強しても成果は出ないし、センターは近づくだけだし、失敗は許されないという重責にがんじがらめにされていたし。
なのに世界規模でクリスマス気分。一人だけ取り残されている気がして、イライラしたのだ。とっても。
それで、叫んだ。逃げたしたかったのか、泣きたかったのか、部屋が冷えるのもかまわず窓を大きく広げて叫んだ。
かぁっと一番恥ずかしい記憶がフラッシュバックして、頭に血が上る。
今更それを持ち出されるとは思っていなかった。(近所中の人が窓を開けてこちらを見た姿は、まだ記憶に新しい)
「本当にこの子、頑張ってるんだなぁって思ったら、今年のクリスマスが待ち遠しくて、待ち遠しくて」
「なっ。見てたの?! あのもうどうにでもなれー、って叫んでた私を?」
しかもおじいちゃんのそりって、おじいさん(本物)も見てたってことか。あの醜態を。
「うん。それで今年、お嬢さんにプレゼントを渡そうと思ったんだ」
ハイ、これ。
白い大きな袋から少し大きめの箱を一つ取り出す。
緑のチェックの箱に、赤いリボンが結ばれている。押し付けられるように渡されて、思わず受け取ってしまった。
「いいの? もらって」
「どうぞー。あ、今ちょうど二十四日になったし、二十数時間早いけど、クリスマスプレゼントには変わりないよ、きっと。メリークリスマス!」
ずっしりと重い箱の中身は全く見当もつかない。しゅるりと音を立てて光沢のあるリボンを外し、箱を開けた。
ふわふわとした綿のようなものに埋もれていたのは一冊の本だった。曰く。
「『コレさえあれば合格できる! 受験必須テキスト』?」
テキストだった。中を開いてみる。
一年前に勉強したような気もする公式の山、練習問題の山、山、山……。カラーで化学の無機、有機なんかも説明してある。
「お嬢さんにぴったりだよ」
嬉しそうな彼に、どうやら私は本当のことを告げねばならぬらしい。
受験したのは、去年だということを。(確かに試験自体は今年だったが、気分的にはもう去年の話だ)
「あの、非常に言いにくいんだけど、一応合格したから、必要ないんだけど」
「……」
「……」
長い沈黙がある。彼がぽかんとしていた。そしてそれからゆっくりと瞬きをして、両手を打ち合わせる。
「あ、そっか。去年のクリスマスに合格させろってことは、こっちでは今年の春には試験があったんだ」
うんうん、と納得する。
もう去年のように勉強はしたくない。一生分の勉強をした気がするから。いや、間違いなくしたね! 一生分。
「って、ことは。これ、お嬢さんに必要ないってこと……?!」
どよん、と落ち込む。
あ、これもしかして浪人生のふりをしてまで喜ばなきゃいけなかったかも。
一年間この日を楽しみにしていたサンタさんは、どうやら他の事は全く考えていなかったらしい。
「――あわてんぼうのサンタクロースは、もう一度来るために、一度戻ります」
これも、歌どおり、なのか。
「あ、えっと。で、でも嬉しい! ありがとう、サンタさん」
とってつけたような言葉だったのに、彼はとても嬉しそうな顔をして、再び『また来るね』と笑った。
来年は、本物のサンタさんとして出会えればいいな、と思いつつ、彼の赤いサンタ服を掴む。
「向いてると思うよ、サンタクロース」
優しい、人の幸せを考えられる彼なら、世界中の子どもたちを幸せにできるんではないだろうかと、柄にもなくサンタを信じていた頃のように笑ってしまった。
「来年は、二十四日に来るよ。今度はもっと喜ばれるようなプレゼントを持って」
彼が窓から出る。カーテンを開けると白い物体が空から降ってきた。大きな粒の、真っ白いもの。
「雪……」
「言ったでしょ。クリスマス日和ですねって」
彼が笑っていると向こうのほうからシャンシャンシャン、と鐘の音がした。それと同時に白い軌跡を描いて何かがこちらへ向かってくる。
「お休み、お嬢さん。あなたにステキなことが訪れますように」
最後に見たのは、恰幅のよい、真っ白なお髭を蓄えたおじいさんに何か言われている、サンタクロースに見えない来年本物のサンタクロースさんだった。
All My Love On Christmas!
全ての人にとってよいクリスマスでありますように。
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クリスマスーー。よく分からないような代物ですが、続きが書けそうなそうでなさそうなものです。
でもサンタクロースな彼が好き。
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Re:あら
声……声かぁ。あんまり決めて書かないからなぁ。最近。
でもそんなイメージだと思います。明るい、少し高めの声。あわてんぼうな彼が可愛くていけないんです。来年はきっと、25日の深夜に来るんですよ。
『ごめんっ! 遅れた!!』とかトナカイに乗りながら。
おじいちゃんは昔、不良でサンタなんか継ぐかーーとか言ってたらいいな。なのに今では恰幅のよいおじいちゃん。
でもそんなイメージだと思います。明るい、少し高めの声。あわてんぼうな彼が可愛くていけないんです。来年はきっと、25日の深夜に来るんですよ。
『ごめんっ! 遅れた!!』とかトナカイに乗りながら。
おじいちゃんは昔、不良でサンタなんか継ぐかーーとか言ってたらいいな。なのに今では恰幅のよいおじいちゃん。