いつきが日々を綴ります。日々のぐだぐだを語ったりしてます。時々本の感想が紛れ込んでたりするかもです。
一週間ぶりです。そんなに久しぶりでない気もしますが、ほぼ毎日更新だったので、久しぶりに感じる方もいらっしゃるのかな。
アレクたちのお話は完結の目処がついたので、打ち込み開始。誤字脱字の多さにびっくりです。
まぁ、いいさ。ノートに書いてるのはあくまで筋書きだから。(ということにしておく)
打ち込むと文章が多くなる罠があるので、まだ油断できません。
『あ、これ書いてない』、『あーー。このシチュいいかも』、『いやいや、糖度足んないわ』などなど呟きは絶えません。
ちなみに一番多いのは最後。今回、甘さを求めるお声が多かったので。そのわりに、『甘くない』と友人にばっさりと言われたので。
ラストをベタベタにする予定です。
だからそれまでの30ページ間での色々を許してっ! どんなに『甘くないっ』と思ってもお付き合いください。(笑)
アレクたちのお話は完結の目処がついたので、打ち込み開始。誤字脱字の多さにびっくりです。
まぁ、いいさ。ノートに書いてるのはあくまで筋書きだから。(ということにしておく)
打ち込むと文章が多くなる罠があるので、まだ油断できません。
『あ、これ書いてない』、『あーー。このシチュいいかも』、『いやいや、糖度足んないわ』などなど呟きは絶えません。
ちなみに一番多いのは最後。今回、甘さを求めるお声が多かったので。そのわりに、『甘くない』と友人にばっさりと言われたので。
ラストをベタベタにする予定です。
だからそれまでの30ページ間での色々を許してっ! どんなに『甘くないっ』と思ってもお付き合いください。(笑)
+ + + + + + + + + +
『伝える術(すべ)』
「そういえば、藤野君。いつも自分のそばにいた人が、いきなり消えたとする」
「はい?」
その言葉の意図を計りかねたように、藤野は首をかしげた。
唐突過ぎて、この人には時々ついていけないことがある、と常々思ってはいたが、と心の中でため息をついた。
「それまではただの仲のよい友人のような関係だった。本を読んだり、感想を言い合ったり。
しかしその人がいきなり消えてしまって、自分は一人っきり。それがすごく……何と言うか、変な気持ちになる」
「はぁ」
真剣な目で語る文彦に悪いと思いつつ、藤野は別のことを考えていた。全く別、と言うことではないと、藤野は自己弁護する。
「もう二度と、姿が見れないと思うと、何とも言えない気持ちになって、その人を連れ戻したくなる。君ならどうする?」
「答える前に、質問を一ついいですか?」
数秒考えて出した答えが俄かに信じられず、思わず手を上げて質問する。
思わぬ行動だったらしく、文彦は一度瞬きしたあと、こくりと頷いた。いつもの彼にしては若干幼い行動だ。
「その人は、えっと、女性ですか?」
「そうだ……いや、たとえ話だから気にしないでくれ」
その答えを聞き、藤野は目を見開いて、一度、二度、大きく目を瞑ったり開いたりした。何と言うか、ありえないものを見てしまったという顔だ。
それだけ文彦の言葉と、それから導き出された答えが考えられないということである。
「先生、失礼ですが、その方に恋をされていたのですか?」
当たり前のように、しかし最終確認で聞いてみる。
「は……??」
今度は文彦が目を開く番だった。言葉の意味が理解できないらしく、じっと藤野を見つめ、それから小さく頷き、そして……。
かっと顔全体を赤らめた。リトマス紙もかくや、と言うくらいの反応のよさだ。
「なっ、な。藤、野君っ!! 何を」
「そうですか。浮いた話一つなかった先生にもついにお相手が――」
うんうんと、一人で頷く藤野とは反対に、焦ったように文彦は言葉を吐き出した。顔は未だに赤い。
「藤野君。誤解だ。第一彼女はまだ年端も行かぬ少女で」
「最近の子は大人びてますから、大丈夫ですよー。あぁ、次回作は恋物語でも言いですねぇ。
ところで、彼女は先生のことをどう思っているかご存じないんですか?」
赤くなって叫ぶ文彦とは対照的に、藤野嬉しそうだ。
「いや、一応好きだと言われたが、それは憧れで」
「なんですか、両想いならどうして別れる事態に?!」
気圧される文彦は一歩下がり、それから意志をはっきりとさせて藤野へ問い直す。
「それで、きみならどうする?」
自分の意思で来なくなった彼女をどうする? お見合いをして、結婚すると言った彼女に何を望む?
「恋をして、その女性も自分のことが好きで、でも彼女はお見合いをするんですか。
最近人気の浪漫小説に似てますね。攫ってはどうでしょう」
「彼女は自分の意思で来なくなったのに、か?」
彼女は彼女の考えで行動している。それを無視して行動することは、彼女の心を無視することに他ならない。
そんなことをすれば、彼女は傷つくだろう。それだけは避けたい、と文彦は思う。
「本当に好きなら、攫えばいいと思いますけど、そうですね。それもできないならせめて、自分のお気持ちを伝えるべきではないですか?
せめて一言でも、想いを伝えればいいと思います」
藤野は何でもないように言う。それがまるで当たり前であるかのように、文彦へ向かって言った。
「私のは、恋ではないよ?」
「ではせめて、寂しいと思っているとお伝えすればよろしいでしょう? あなたはその術(すべ)を持っていらっしゃる。
『野色 くちなし』の売り文句は“繊細な心理描写と瑞々しい表現力”」
丁度いいのがあるじゃないですか。
「来月の『青夕社』の企画。『十人の人気作家が描く色』 十人十色に引っ掛けてますけど、先生の頁(ページ)はそれで決まりですね」
「彼女が見るとも限らないだろう。それに、この気持ちは人に曝すものじゃない」
文彦の言葉に藤野は眉を寄せる。きっとこの人は自分の感情を持て余しているだけなんだと確信して、文彦へ詰め寄った。
作家の背中を押すのも仕事のうちだ、と思いながら。
「書けば整理できるし、作品にもなる。大丈夫ですよ、先生ですから」
「彼女の結婚祝いってとこか――。読むかどうかも知らないけど」
自分のことも、自分の小説も忘れると言って笑った少女は、今きっと泣いているだろう。
ならば自分は涙を落とす代わりに、言葉を落とそうと思った。
流れるこの気持ちを何と呼ぶか知らない。
『恋』というには少々苦くて、しつこい気がする。『愛』と呼ぶには希薄すぎて、『友情』と笑うには甘すぎた。
名のない感情は底を知らない水のように流れて、溢れて、紙に落ちる。
涙のように沁み込むことなく、嗚咽のように響くことなく、黒々としたインクという名の雫で並べていく。順序よく、丁寧に。
彼女が好きだと言ってくれた、言葉たちで。
「書こうか」
そう言って家へ入ろうとして、文彦は藤野の手から封筒を取る。あっけにとられた藤野を見て、文彦は小さく笑って右眉だけを器用に上げた。
「自棄酒くらい飲まなくてはね」
諦めては、いない。
7話
「そういえば、藤野君。いつも自分のそばにいた人が、いきなり消えたとする」
「はい?」
その言葉の意図を計りかねたように、藤野は首をかしげた。
唐突過ぎて、この人には時々ついていけないことがある、と常々思ってはいたが、と心の中でため息をついた。
「それまではただの仲のよい友人のような関係だった。本を読んだり、感想を言い合ったり。
しかしその人がいきなり消えてしまって、自分は一人っきり。それがすごく……何と言うか、変な気持ちになる」
「はぁ」
真剣な目で語る文彦に悪いと思いつつ、藤野は別のことを考えていた。全く別、と言うことではないと、藤野は自己弁護する。
「もう二度と、姿が見れないと思うと、何とも言えない気持ちになって、その人を連れ戻したくなる。君ならどうする?」
「答える前に、質問を一ついいですか?」
数秒考えて出した答えが俄かに信じられず、思わず手を上げて質問する。
思わぬ行動だったらしく、文彦は一度瞬きしたあと、こくりと頷いた。いつもの彼にしては若干幼い行動だ。
「その人は、えっと、女性ですか?」
「そうだ……いや、たとえ話だから気にしないでくれ」
その答えを聞き、藤野は目を見開いて、一度、二度、大きく目を瞑ったり開いたりした。何と言うか、ありえないものを見てしまったという顔だ。
それだけ文彦の言葉と、それから導き出された答えが考えられないということである。
「先生、失礼ですが、その方に恋をされていたのですか?」
当たり前のように、しかし最終確認で聞いてみる。
「は……??」
今度は文彦が目を開く番だった。言葉の意味が理解できないらしく、じっと藤野を見つめ、それから小さく頷き、そして……。
かっと顔全体を赤らめた。リトマス紙もかくや、と言うくらいの反応のよさだ。
「なっ、な。藤、野君っ!! 何を」
「そうですか。浮いた話一つなかった先生にもついにお相手が――」
うんうんと、一人で頷く藤野とは反対に、焦ったように文彦は言葉を吐き出した。顔は未だに赤い。
「藤野君。誤解だ。第一彼女はまだ年端も行かぬ少女で」
「最近の子は大人びてますから、大丈夫ですよー。あぁ、次回作は恋物語でも言いですねぇ。
ところで、彼女は先生のことをどう思っているかご存じないんですか?」
赤くなって叫ぶ文彦とは対照的に、藤野嬉しそうだ。
「いや、一応好きだと言われたが、それは憧れで」
「なんですか、両想いならどうして別れる事態に?!」
気圧される文彦は一歩下がり、それから意志をはっきりとさせて藤野へ問い直す。
「それで、きみならどうする?」
自分の意思で来なくなった彼女をどうする? お見合いをして、結婚すると言った彼女に何を望む?
「恋をして、その女性も自分のことが好きで、でも彼女はお見合いをするんですか。
最近人気の浪漫小説に似てますね。攫ってはどうでしょう」
「彼女は自分の意思で来なくなったのに、か?」
彼女は彼女の考えで行動している。それを無視して行動することは、彼女の心を無視することに他ならない。
そんなことをすれば、彼女は傷つくだろう。それだけは避けたい、と文彦は思う。
「本当に好きなら、攫えばいいと思いますけど、そうですね。それもできないならせめて、自分のお気持ちを伝えるべきではないですか?
せめて一言でも、想いを伝えればいいと思います」
藤野は何でもないように言う。それがまるで当たり前であるかのように、文彦へ向かって言った。
「私のは、恋ではないよ?」
「ではせめて、寂しいと思っているとお伝えすればよろしいでしょう? あなたはその術(すべ)を持っていらっしゃる。
『野色 くちなし』の売り文句は“繊細な心理描写と瑞々しい表現力”」
丁度いいのがあるじゃないですか。
「来月の『青夕社』の企画。『十人の人気作家が描く色』 十人十色に引っ掛けてますけど、先生の頁(ページ)はそれで決まりですね」
「彼女が見るとも限らないだろう。それに、この気持ちは人に曝すものじゃない」
文彦の言葉に藤野は眉を寄せる。きっとこの人は自分の感情を持て余しているだけなんだと確信して、文彦へ詰め寄った。
作家の背中を押すのも仕事のうちだ、と思いながら。
「書けば整理できるし、作品にもなる。大丈夫ですよ、先生ですから」
「彼女の結婚祝いってとこか――。読むかどうかも知らないけど」
自分のことも、自分の小説も忘れると言って笑った少女は、今きっと泣いているだろう。
ならば自分は涙を落とす代わりに、言葉を落とそうと思った。
流れるこの気持ちを何と呼ぶか知らない。
『恋』というには少々苦くて、しつこい気がする。『愛』と呼ぶには希薄すぎて、『友情』と笑うには甘すぎた。
名のない感情は底を知らない水のように流れて、溢れて、紙に落ちる。
涙のように沁み込むことなく、嗚咽のように響くことなく、黒々としたインクという名の雫で並べていく。順序よく、丁寧に。
彼女が好きだと言ってくれた、言葉たちで。
「書こうか」
そう言って家へ入ろうとして、文彦は藤野の手から封筒を取る。あっけにとられた藤野を見て、文彦は小さく笑って右眉だけを器用に上げた。
「自棄酒くらい飲まなくてはね」
諦めては、いない。
7話
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