いつきが日々を綴ります。日々のぐだぐだを語ったりしてます。時々本の感想が紛れ込んでたりするかもです。
完成してあったものをようやくUPします。
なぜ出没回数が少ないかと言いますと、単に模試があったからじゃないんですよね。
韓国ドラマがね。ほぼ毎日あるから(月曜日~木曜日)、学校から帰って見てたんですよ。そしたらパソコンに向かう時間なんてなくなってしまって……。
というわけで、『あわてんぼうの』の続きです。
サンタの彼がえらく気に入ってしまいました。
余談ですが、今日友人にお姫様抱っこされました。女として、何かを失った気がするのは私だけでしょうか。
なぜ出没回数が少ないかと言いますと、単に模試があったからじゃないんですよね。
韓国ドラマがね。ほぼ毎日あるから(月曜日~木曜日)、学校から帰って見てたんですよ。そしたらパソコンに向かう時間なんてなくなってしまって……。
というわけで、『あわてんぼうの』の続きです。
サンタの彼がえらく気に入ってしまいました。
余談ですが、今日友人にお姫様抱っこされました。女として、何かを失った気がするのは私だけでしょうか。
+ + + + + + + + + +
「あわてんぼうの、サンタクロース、クリスマス前にやっ」
「今二月よ? 今更、何歌ってるの」
鼻歌のつもりが、いつの間にか口に出ていたらしい。
後ろにいた母に笑われて、慌てて口を噤んだ。ついでに手も止まり、作業が中断してしまう。
湯煎しつつ、混ぜていた卵とグラニュー糖を見つめ、またその作業を再開した。
ばれてしまうのは恥ずかしいので、黙ってやることにする。
「もう大学生なんだから、お父さん以外の人に渡す機会とかないの?」
「あるよ。友チョコ」
型に生地を流し入れ、十cmほどの高さから空気を抜くために落とす。今年はチョコレートケーキを作る予定。
「男の子よ。男の子」
「……お母さんからしたら、『男の子』なんだね。もうすぐ成人しようかという人は」
ちらり、と思い出したのは、白色の髪と鮮やかな蒼い瞳。そしてサイズの合わない“サンタクロース”の服を着た彼のこと。
一ヶ月ちょっと前に出会った彼の名さえ知らないと気がついたのはつい最近、もらったテキストをパラパラとめくっていたときのことだ。
残念なことをしてしまったと思う。
と、いうより自分の名も彼に知られていないのは、ちょっとショックだ。聞いておけばよかったし、名前を言えばよかったかな、とも思う。
せっかくサンタクロース(来年……いや、今年から本物)に出会うという珍体験をしたわけであるし。
でも『サンタクロースが本名だよ』とか言われたらどうしよう。
予熱しておいたオーブンを開けて、ケーキ生地を入れる。
年に一回しか来ないサンタクロースに、バレンタインのチョコレートは不要だろう。それは十分分かっているのに。
「お母さん。卵、あと三つ出して。あ、あとバターも残ってたでしょ? ココアパウダーは~」
「え? どうして」
今年は一個だけでいいよ、と前もって言っていたので、母は怪訝そうな顔をした。その怪訝そうな顔から逃げるために、オーブンを覗き込んだ。
まだ全く膨らまない、茶色の液体を見つめ、言い訳するように口を開いた。
「もう一個作るの。友チョコ、あげる人増えたのを急に思い出した」
作るだけなら、いいだろうと思う。
『念のため』だ。新米サンタさんがまた間違えるかもしれない。いざとなれば、私が食べてしまえばいいのだから。
二月十三日の深夜、やはり来ない人を思ってため息をついた。期待していないつもりだったのに、がっかりしている自分がいて驚いた。
「来るわけないのにね」
それに恋、とかしてるわけではないし。サンタさんが“元”子供として好きなだけだし。
と、なんだか自分にぶつぶつ言い訳しているときだった。
「今っ、今何時っ?!」
ガラリ、窓を開ける音がして、赤いマフラーを首に巻いた彼が、いや彼と思われる人物がこちらへ聞いてくる。
「二月十三日の、午後十一時五十分、だけど」
「間に合ったぁ」
赤いマフラーの人物がため息をつく。
そこで小さな沈黙が訪れた。この気まずいものに耐えられなくなった私は、やっと勇気を出して、『彼』に問いかける。
「サンタ、さんだよね?」
「え~~。忘れたの?」
「いや、そうじゃなくって、髪が……。髪が、金髪だから」
前会ったときは真っ白だった髪が、今は柔らかく照明を反射し金色に瞬いている。
それに服装も黒いコート(に、赤いマフラーって)なので、クリスマスのときとイメージが違う。やっぱり私服になると、若さが目立つな。
「あぁ。染めてるんだ。クリスマスの時期は。サンタさんって白い髪でしょ? おじいちゃんくらいになると、染めなくてもいいんだけどねぇ」
「あ、そう」
あっけにとられて、とりあえずそれだけ答える。染めてるんだ。髪の毛。
「それと、ハイ、これ。ハッピーバレンタイン」
そう言って差し出された、赤い生地に黒いリボンがかけられた箱を手に取る。ずっしりとはしなくて小さく安心するが、首をかしげた。
「えっと、何、コレ」
「何って、チョコレート」
開けてみて、と促されたので開けると、中身は本当にチョコレートだった。これは世に言う逆チョコだろうか。
意図が分からず、ニコニコ笑っている彼を見つめる。
これは『何』のチョコレートと受け取ればいいのだろうか。義理チョコにしても、“義理”をもらうほど親しいわけではないと思うのだが。
「日本では十二月十四日の朝、女性の枕元にはチョコレー」
「違うよ、それ」
またやってしまった。
去年もこれで彼を落ち込ませてしまったのだ。『もう受験生ではない』という一言で。
今も彼はびっくりした顔をして、こちらを見つめていた。いや、でも間違った日本の知識を正すのは悪くないはずだ。むしろ正しい、はず。
「え、いや、大切な女性に日頃の感謝と愛情を込めて、サンタクロースに扮した男性が彼女たちの枕元にチョコレートをおく、というのが日本流のバレンタインデーでしょ?」
「いやいや、女性が……最近はそうでもないけど、まぁ、主に女性が好きな人とかお世話になっている人とか、あと友達とかにチョコレートを贈るのが、日本のバレンタインですよ??」
「「…………」」
二人の間に思い沈黙が続く。たっぷり十秒ほど経ってから、彼はそっと確認してきた。
「じゃぁ、バレンタインデーにサンタクロースが来るというのはウソ?」
「嘘」
「おじいちゃんが、昨日僕に言ったことは」
「嘘、だろうね」
元祖(?)サンタクロースさん。孫で遊ぶのはやめてください。今、彼がすっごく可哀想です。
おじいさんの話を信じて疑わなかった彼が不憫です。
「『本物のサンタクロースになったのだから、今年のバレンタインデーの仕事はお前にもやらせてやろう。
だが、まだ修行していないから、全部任すことはできない』とか大真面目に言ってたくせにっ」
「えっと、修行云々はわかんないけど、おちゃめな元サンタクロースさん、だね」
多分、孫をだまして楽しんでるんだろうなぁ、と考える。
優しそうなイメージのサンタさんだが、実は孫で(決して、孫『と』ではない)遊ぶのが好きなお人らしい。
「『一番初めは、去年お世話になったお嬢さんだろうな』って言われて、喜んでチョコレート作ったのにっ!!」
彼が赤いエプロンをつけて、楽しそうにチョコレートをテンパリングしている姿が簡単に想像できる。
「お世話なんて、してないけど、いただきます」
気まずくなったので、一つをつまんで口に入れる。口の奈あで転がせば、甘いチョコレートが溶けて頬が緩んだ。
美味しいものは幸せの素だ。きっと。
「おいしい」
チョコレート、といえば。あれ、私、何か忘れてる……??
「あぁっ!!」
「何?!」
「ちょっと、待ってて。すぐだから」
扉を開けつつ、彼に言いおいてから少し迷った。
さて、どういう名目で渡そうか。義理というほど互いを知っているわけでもないし(名前も知らない)、本命ではないと言い切れる自信もある。
だって去年の十二月(しかも末)に出会ったばかりなのだから。
「名前教えてもらうためのエサ、とか?」
自分の考えに笑いつつ、華やかにラッピングされた箱を一つ手に取る。
赤い箱はたった一つだけ。そして何も書いていないメッセージカードも一枚だけ。
それを手に取り、ペンを走らせた。
『What's your name?』
たったこれだけ。だけど今、私にとってとても必要なこと。
新米サンタさん、友人としての一歩、始めません?
それがバレンタインデーのプレゼントでいいですよ。そんなこと、言えないけれど。
「今二月よ? 今更、何歌ってるの」
鼻歌のつもりが、いつの間にか口に出ていたらしい。
後ろにいた母に笑われて、慌てて口を噤んだ。ついでに手も止まり、作業が中断してしまう。
湯煎しつつ、混ぜていた卵とグラニュー糖を見つめ、またその作業を再開した。
ばれてしまうのは恥ずかしいので、黙ってやることにする。
「もう大学生なんだから、お父さん以外の人に渡す機会とかないの?」
「あるよ。友チョコ」
型に生地を流し入れ、十cmほどの高さから空気を抜くために落とす。今年はチョコレートケーキを作る予定。
「男の子よ。男の子」
「……お母さんからしたら、『男の子』なんだね。もうすぐ成人しようかという人は」
ちらり、と思い出したのは、白色の髪と鮮やかな蒼い瞳。そしてサイズの合わない“サンタクロース”の服を着た彼のこと。
一ヶ月ちょっと前に出会った彼の名さえ知らないと気がついたのはつい最近、もらったテキストをパラパラとめくっていたときのことだ。
残念なことをしてしまったと思う。
と、いうより自分の名も彼に知られていないのは、ちょっとショックだ。聞いておけばよかったし、名前を言えばよかったかな、とも思う。
せっかくサンタクロース(来年……いや、今年から本物)に出会うという珍体験をしたわけであるし。
でも『サンタクロースが本名だよ』とか言われたらどうしよう。
予熱しておいたオーブンを開けて、ケーキ生地を入れる。
年に一回しか来ないサンタクロースに、バレンタインのチョコレートは不要だろう。それは十分分かっているのに。
「お母さん。卵、あと三つ出して。あ、あとバターも残ってたでしょ? ココアパウダーは~」
「え? どうして」
今年は一個だけでいいよ、と前もって言っていたので、母は怪訝そうな顔をした。その怪訝そうな顔から逃げるために、オーブンを覗き込んだ。
まだ全く膨らまない、茶色の液体を見つめ、言い訳するように口を開いた。
「もう一個作るの。友チョコ、あげる人増えたのを急に思い出した」
作るだけなら、いいだろうと思う。
『念のため』だ。新米サンタさんがまた間違えるかもしれない。いざとなれば、私が食べてしまえばいいのだから。
二月十三日の深夜、やはり来ない人を思ってため息をついた。期待していないつもりだったのに、がっかりしている自分がいて驚いた。
「来るわけないのにね」
それに恋、とかしてるわけではないし。サンタさんが“元”子供として好きなだけだし。
と、なんだか自分にぶつぶつ言い訳しているときだった。
「今っ、今何時っ?!」
ガラリ、窓を開ける音がして、赤いマフラーを首に巻いた彼が、いや彼と思われる人物がこちらへ聞いてくる。
「二月十三日の、午後十一時五十分、だけど」
「間に合ったぁ」
赤いマフラーの人物がため息をつく。
そこで小さな沈黙が訪れた。この気まずいものに耐えられなくなった私は、やっと勇気を出して、『彼』に問いかける。
「サンタ、さんだよね?」
「え~~。忘れたの?」
「いや、そうじゃなくって、髪が……。髪が、金髪だから」
前会ったときは真っ白だった髪が、今は柔らかく照明を反射し金色に瞬いている。
それに服装も黒いコート(に、赤いマフラーって)なので、クリスマスのときとイメージが違う。やっぱり私服になると、若さが目立つな。
「あぁ。染めてるんだ。クリスマスの時期は。サンタさんって白い髪でしょ? おじいちゃんくらいになると、染めなくてもいいんだけどねぇ」
「あ、そう」
あっけにとられて、とりあえずそれだけ答える。染めてるんだ。髪の毛。
「それと、ハイ、これ。ハッピーバレンタイン」
そう言って差し出された、赤い生地に黒いリボンがかけられた箱を手に取る。ずっしりとはしなくて小さく安心するが、首をかしげた。
「えっと、何、コレ」
「何って、チョコレート」
開けてみて、と促されたので開けると、中身は本当にチョコレートだった。これは世に言う逆チョコだろうか。
意図が分からず、ニコニコ笑っている彼を見つめる。
これは『何』のチョコレートと受け取ればいいのだろうか。義理チョコにしても、“義理”をもらうほど親しいわけではないと思うのだが。
「日本では十二月十四日の朝、女性の枕元にはチョコレー」
「違うよ、それ」
またやってしまった。
去年もこれで彼を落ち込ませてしまったのだ。『もう受験生ではない』という一言で。
今も彼はびっくりした顔をして、こちらを見つめていた。いや、でも間違った日本の知識を正すのは悪くないはずだ。むしろ正しい、はず。
「え、いや、大切な女性に日頃の感謝と愛情を込めて、サンタクロースに扮した男性が彼女たちの枕元にチョコレートをおく、というのが日本流のバレンタインデーでしょ?」
「いやいや、女性が……最近はそうでもないけど、まぁ、主に女性が好きな人とかお世話になっている人とか、あと友達とかにチョコレートを贈るのが、日本のバレンタインですよ??」
「「…………」」
二人の間に思い沈黙が続く。たっぷり十秒ほど経ってから、彼はそっと確認してきた。
「じゃぁ、バレンタインデーにサンタクロースが来るというのはウソ?」
「嘘」
「おじいちゃんが、昨日僕に言ったことは」
「嘘、だろうね」
元祖(?)サンタクロースさん。孫で遊ぶのはやめてください。今、彼がすっごく可哀想です。
おじいさんの話を信じて疑わなかった彼が不憫です。
「『本物のサンタクロースになったのだから、今年のバレンタインデーの仕事はお前にもやらせてやろう。
だが、まだ修行していないから、全部任すことはできない』とか大真面目に言ってたくせにっ」
「えっと、修行云々はわかんないけど、おちゃめな元サンタクロースさん、だね」
多分、孫をだまして楽しんでるんだろうなぁ、と考える。
優しそうなイメージのサンタさんだが、実は孫で(決して、孫『と』ではない)遊ぶのが好きなお人らしい。
「『一番初めは、去年お世話になったお嬢さんだろうな』って言われて、喜んでチョコレート作ったのにっ!!」
彼が赤いエプロンをつけて、楽しそうにチョコレートをテンパリングしている姿が簡単に想像できる。
「お世話なんて、してないけど、いただきます」
気まずくなったので、一つをつまんで口に入れる。口の奈あで転がせば、甘いチョコレートが溶けて頬が緩んだ。
美味しいものは幸せの素だ。きっと。
「おいしい」
チョコレート、といえば。あれ、私、何か忘れてる……??
「あぁっ!!」
「何?!」
「ちょっと、待ってて。すぐだから」
扉を開けつつ、彼に言いおいてから少し迷った。
さて、どういう名目で渡そうか。義理というほど互いを知っているわけでもないし(名前も知らない)、本命ではないと言い切れる自信もある。
だって去年の十二月(しかも末)に出会ったばかりなのだから。
「名前教えてもらうためのエサ、とか?」
自分の考えに笑いつつ、華やかにラッピングされた箱を一つ手に取る。
赤い箱はたった一つだけ。そして何も書いていないメッセージカードも一枚だけ。
それを手に取り、ペンを走らせた。
『What's your name?』
たったこれだけ。だけど今、私にとってとても必要なこと。
新米サンタさん、友人としての一歩、始めません?
それがバレンタインデーのプレゼントでいいですよ。そんなこと、言えないけれど。
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