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いつきが日々を綴ります。日々のぐだぐだを語ったりしてます。時々本の感想が紛れ込んでたりするかもです。
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 八月二十七日発売でした。正式な発売日は。『フリーター、家を買う』の話です。 


 さてさて、八雲の興奮もやっと治まり(?)、落ち着いています。まぁ、模試の結果返されたりしているわけですけど。
 志望校とかを書くやつだったんで、すこーし心臓に悪かったです。

 で、友人から漫画を借り、さっそく号泣しております。恋愛モノでも、何でもないような漫画なんですけど、切ないくらい綺麗なお話です。
 『人形芝居』(高尾滋)です。この人の作品は、同じ友人から薦められて『ディア マイン』を読んだのが最初です。
 その作品はとても可愛くて好きなのですが、今回の作品とは毛色が違うかな。


 夏休みが終わり、結局何も進まないまま学校が始まってしまいました。
 何が出るかな、とわくわくしながらあみだくじをしたのはいつだったか……。
 えっと、とりあえず、先生×生徒をとろとろと書き進めておりますので、それの書き直しをして、完結させようかな、と。
 それが終わったら、中編くらいで『姫と騎士』を書こうかな(遠い目)

 そうそう。友人内で、ある友人の誕生日が話題になったのですが、正確な日付を全員忘れていて、その友人に『おめでとう』を言い損ないました。
 三者三様で、全員一日違い。最大二日の差ですよっ。間違えたら失礼じゃないですか。
 自分の誕生日が案外分かりやすいので、目印がない誕生日だと間違えて覚えちゃうんですよね。
 ごめんね、友人様。ちなみに私は『模試+一日』だと思ってました。
 ↑私信です。心当たりのあるわがご友人。ドラッグ。
 去年は祖母の、今年は弟の誕生日を一日ずつ外しました。物忘れの激しいお年頃なのです。(笑)

+ + + + + + + + + +
『壊す』




「賢者様。本日は魔王陛下の公務が立て込んでおりますので、本日の授業は夕方からにしていただきたいとのことです」

「分かりました、と伝えてください」

 ドレスを着るのを手伝ってもらっているメイドは『かしこまりました』と返事をして退がる。
 贅沢な生活に慣れてしまいそうで怖い、というかやることが少なくって少し手持ち無沙汰な感じがするのだ。
 午後のお茶……二時半から三時半がぽっかりと空いてしまった。

 賢者というのは情報が少ないせいかかなり神聖視されていて、周りの人もなじんでくれないから一緒にお茶をするような親しい人もいない。

 さぁ、どうしようかと迷っていると、机の上においてあった一冊の本が目に入る。
 日課の図書館通いは未だ続いていて、今日も既に二時間ほどそこで過ごしていた。
 膨大な数の本から本物の賢者様やその時代の事情、さらにはわたしが元の世界へ帰る方法を探している。
 賢者の資料は前言ったようにほぼなく、この間見せてもらった写真さえ見つからない。
 あの写真、ノアはどこで手に入れたんだ?
 わたしが元の世界へ戻る方法にも有力な情報はなく、すでに諦めかけている。
 珍しい魔術の資料はあらかたノアの部屋にあるらしい……。でももうあの部屋には二度と入りたくない。
 残るは賢者様のいた時代背景だけど、これには困ることはなかった。
 もう調べれば調べるだけ出てくるので、今のところわたしは目下そのことばかり学習している。
 ――どうせ時間も空いたし、勉強のために行くか。ノアに知らない間に啖呵きっちゃったし。
 トントンと羊皮紙(書きにくい)とインクをしみこませて使うペン(使い難い)を持ち、扉を開ける。
 そこには今まで調べてきたことが書いてあるのだ。



 この国のことを簡単に説明するにしても長い。ので、現在わたしが調べているのは賢者様がご活躍なされたという五百年前から六百年前だ。
 その頃の魔王はジルのお父様らしい。
 思うけど、魔王って、いや魔王に限らずこの世界の人ってすごく長生きな気がする。わたしなんてせいぜい生きて百年とちょっとが限界なのに。

 で、その前魔王様、ダンテ・リュシラーズ様はリュシラーズ王国(今更ながらこの国の名前らしい)始まって以来の(賢者様、名前も知らないこの人の影響もあるが)賢君で、国民に慕われていたらしい。
 初めて人間国―シトリラス王国―と不可侵条約を結んだのもこの人。
 しかもそれは即位して十年目にしてというから驚きなのだそうだ(この国では在位数百年~千年くらいが普通らしい)。
 長い間争い続けてきた戦争を平和的な話し合いで収め、条約を結び、両国に平和をもたらした。

 その後何らかの形で賢者様と出会い、全盛期を築くが、五百年前ダンテ様は急病で六百八十七歳という短い一生(非常に疑問ではある)……を終えたらしい。
 詳しく調べるのはやめたけど、本ではそのまま行き続けたら今でも生きているはず――というようなことが書かれていたような気がする。
 ダンテ様が死ぬのと同時期に賢者様は姿を消して、二度と戻ってこなかったと書いてあった。
 今気付いたんだけど、そのときの賢者様との記憶があまりないにしても、会ったことがあるジルってだいたい何歳?
 確実に五百歳以上ではあるよね。
 それで外見年齢二十歳(はたち)にも見えないとかちょっと詐欺じゃない?
 わたし十六年しか生きてないのに、ジルと見た目そんなに変わらないように見えるって理不尽な気がする。

 話はそれたが、ダンテ様の死は様々なところに余波を引き起こしたらしい。
 賢者様が消えたこともそうだが、なによりダンテ様の死がきっかけで不可侵条約が不安定になった、という話だ。
 ジルは小さすぎて即位したはいいが、政治なんて分かるはずもなく、臣下たちがうろたえまくった結果らしい。
 ついでに、何人かの大臣も相次いで亡くなってるし。
 幸い、今は不安定ながら落ち着いていると書いてある。

 ペラペラと羊皮紙を捲りながら長々と説明を読んでいると、いつの間にか図書室の前にまで来ていた。他のところよりも大きくて、立派な扉が目に入る。
 取っ手にはこうもりをモチーフにしたのか羽の生えた動物がついている。
 少々気味が悪いが、慣れてしまえばどうでも良かった。中へ入ると紙の匂いがかすかに香る。別に嫌な匂いではない。
 ここだけ空間から切り離されたような、そんな感覚が体を支配した。
 時計さえ進むことを遠慮しそうな、たとえ数百年後ここへ来ても変わらなさそうな永遠に近い時間が空間を覆いつくしているような感じだった。
 時々見かける司書さんも見かけない。今日はいつもより静かだった。

 歴史資料棚の近くの席を取り、羊皮紙とペンとインク壺を置く。そして少し見慣れてしまった本棚の間にすべりこんだ。
 ここには検索機なんてない。写真はあるみたいだけど、電話も電気もない。中世ヨーロッパのような雰囲気だと思う。
 つくづくここは別の世界なんだと感じ、ため息をつきたくなる衝動を押さえつけ、本の背表紙に指を走らせる。
 ここだけを考えれば、学校の図書室とそう大差ないのに。目に入るわけの分からない単語や地名が出てくると、いやでも現実に戻される。

 『ここはわたしがいていい場所ではない』ということを。

 忘れることなく、幾度となくわたしの前に現れては消えていくその考え。事実そうなんだからと思っても、何故か心に突き刺さった棘は抜けなかった。
 その考えを嘲笑して、一冊の本を手に取る。早く帰る方法を見つけてしまえば、こんな考えが絵に付き合わされることもないのだ。



 魔王陛下の地位が危ない?
 わたしが知るか、そんなこと。
 わたしはわたしのことで精一杯で他人のことを考える余裕なんて持ち合わせていないし、メリットもないのにどうしてわたしがジルを助けなきゃいけないわけ?

 

 そうノアに言ってしまえば楽だった。
 実際来た当初なんてもっと酷いこと思ってたし。それを口に出して言わないのは自分の立場を考えているからに過ぎない。
 変なこと言って、自分自身に被害が及ばないようにしているだけだ。
 自分が一番大切なくせに、人に嫌われたくないからかぶっているいい子の仮面。
 この世界に来てからもそれは一緒だった。変わらなかった。
 ――変わるはずないのだ、結局。だってそれが十六年間生きてきたということだから。
 そういうふうにしか、生きてきたことがなかったから。自分勝手で、それでも離れていかれることが怖かった。ただそれだけだから。

「結局どこに行っても変わらない」
 
 そんな自分の性格。知り尽くしている、どんなに自分がいやな性格をしているかということぐらい。でも。

「自分が大切だって、思うの」

 人間って、そういうものでしょ? それって当たり前でしょ?

『そうね』

 優しい誰かの声がした。
 知っているはずの……誰かの声。
 しかしその余韻はすぐに消えて、残らなかった。やがて声を聞いたことさえ、記憶から遠ざかっていった。
 手元にある本を捲ると、六百年よりもう少し前の歴史書だった。一番、人間と魔族たちの争いが激化していた時代。
 殺し、殺され、血で血を洗うようなことを繰り返した歴史たち。
 魔族は寿命が長い分、人口は少ないらしい。人間の約三分の一にも満たないと書いてあった。
 生む必要を感じないということだろうか。人間であるわたしには少々理解できない事情ではある。
 人間よりも長寿で、不思議な術を使って――それで人口が少なくても人間と戦うことを止めなかった『人』たち。
 犠牲者は人間よりずっと少ないと書いてあるが、それでも少なからず、血は流された。

 いったい、何のために?
 何を守るために?

 きっと理由なんてないのだ。人間は魔族からもともと人間の地だった土地を取り返すため、なんて言いつつ、魔族が恐ろしいから。
 魔族は本能的に、人間を蹂躙するのが好きだから……たぶん、それだけ。
 ノアを見てるとその本性がとてもよく分かる。つまり心の底で楽しんでいるのだ。何かしら理由をつけつつも、その本性は変わらない。
 変わりっこない。だから今だって、いつ戦いが起こってもおかしくないような状況に陥ってる。
 双方が狙っているのだ。戦う、正当な理由を。

「馬鹿らしい」

 そう思うのは、その本性自体を愚かだと教えられ続けているからだろうか。確かに自分の国に戦争はない。
 戦いがあったとしても、それは『外国(よそ)』でのことで、自分たちには関係がないことだ。
 どこか他人事で、関係なんてなくて、どこで起こっていようと影響がない以上、自分にとっては『起きていない』のと同じ。
 しかし自分にもまた、その本性があるのかと思う。
 この人たちと同じように、血の匂いに酔い、快楽に身を任せて人を傷つけることがあるのだろうか。

 人を、物理的に壊したことはない。

 だからその感触がどういうものかを知らない。
 ただふとした瞬間に出た言葉で人を傷つけたことなら、多分自分が思っているよりたくさんあるのだろう。
 気づいたときの、あの後ろめたさと、ほんの少しの後悔と、それから自分に対する苛立ちと……。
 人の体を傷つけるとき感じるのは、どんなものなんだろうか。もしかしたら、あの人たちはそれさえも感じないのかもしれないけれど。

 そう、考えていた。



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