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いつきが日々を綴ります。日々のぐだぐだを語ったりしてます。時々本の感想が紛れ込んでたりするかもです。
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 一週間ぶり以上?? やっとあと少し。
 オマケをあわせたら、半分??

 あー、本当にそろそろ『drop』の続き書かなきゃ、性格忘れそうです。ティ、ティアちゃんのを書き終わったらきっと書きます!!
 予告しとかなきゃ、本当に書かなさそうなので、ダメだ。
 とりあえず、
 ① 『姫と騎士』の続きの完成。
 ② 『drop』の続き。
 ③ し、新作……。(シンデレラ→ロミジュリ→シンデレラというリクエスト)
 こんな感じで計画立ててます。(勉強はとなりに捨て置く)

 『鐘の音』は明日、きっと明日にはっ。(打ち込むのが面倒)
 でもノートで下書きしないと、『drop』の二の舞に。(いきなり書き始めるという暴挙に出た一年前の私)

+ + + + + + + + + +
『相応しい姿』



 ばん、と力一杯扉を開けた。
 そして、息を呑む。大臣たちで埋まっていたその場所に、今は二人しかいなかった。『生きている』モノは。

「……ぁ」

 恐怖で喉が鳴った。抑えきれない悲鳴が口から零れ出る。
 そしてそのまま固まった。部屋一面の血の海、むっとするような臭いが鼻を突く。
 壁にべっとりと付いた血も、床に溜まる血も、一人や二人の血ではない量だった。

『どうやら、ずいぶん暴れた後みたいね』

 あの軟弱な吸血鬼の坊やが、変に止めようとするから。
 不満そうな声が隣から聞こえた。隣に立つ人は小さく眉を顰めながらも、目を背けるようなことはしなかった。
 この光景を、ただ冷静に見ていた。気が狂いそうになるくらい紅く染まった部屋を。

『あれが、あなたの望んだ魔王様でしょ?』

 白くたおやかな手が示す先にいるのは二人。大振りな剣を易々と操り、切りかかる……まだ少年と呼んでもおかしくない顔立ちの人間が一人。
 細く長い剣でそれを防ぐ――いつもは穏やかな青年が一人。

「ちがっ」

 わたしが望んだのは、こんなことじゃない。

 こんな魔王様になってほしかったんじゃない。こんなもののために、あんなことしたんじゃないのに。
 二人の剣はぶつかっては離れ、離れては再びぶつかった。
 その間も二人の体をかすり、血が滴る。鮮血が、紅い血が、剣が振るわれる度に散る。まるで、紅い花びらのように。怖いくらい美しく、散る。

『でも、魔王らしいわよ?』

「だけど」

 言い訳は喉で消えた。何も言えなくなった。
 だって確かに望んだのだ、自分は。ジルが魔王らしい魔王様になることを。わたしが。わたし自身が。

「どうして」

 ジルは傷つけあいたくないと言った。寂しそうに、泣き出しそうに、そう言った。
 血を流したくないと。優しい、とても魔王様に見えない笑顔でそう言った。

「どうして」

 ルークも言ったのに。血を流さない方法があるのなら、それが一番いいと言った。
 大賛成だと、そうならば条約を結んでもいいと。勇者様には似合わないくらい童顔で、優しい声で。

「どうして闘ってるの? 剣を振るってるの?」

 どうして今わたしは、ここにいるのだろう。

『あなたは無力ね』

 その言葉が、深くわたしの心に突き刺さる。
 そして、抜けなくなった。無力だ。ここへ来て何度思っただろう。わたしは、無力だ。何もできない。思うだけで、どうすることもできない。

「闘ってほしくて、魔王らしく教育したんじゃないのに」

 傷つけあうことを是とするようになるのなら、そうなってしまったのなら。

「それなら、魔王らしくなくてよかった」

 そんなことするくらいなら、あの優しいジルのままでよかった。闘いたくないと言ったジルの方がよかった。
 お茶を淹れてくれて、わたしを気遣ってくれて、みんなの心を慮(おもんばか)るジルの方がよかった。

「わたし、ダメだなぁ」

 小さく呟いた。自分の耳にさえ、届くか届かないか微妙な、それくらい小さな声で呟いた。

「賢者なんて、全然務まってない」

 どうしてこんなことも予想できなかったんだろう。

 予想して、止めて――両方が傷つけ合わなくてもいいようにして、それが本当の賢者の役目のはずなのに。

 五百年前は争わずに済んだのに。

 ぎゅっと自分の無力さを悔やむように唇を噛んだ。
 自分を守る言い訳が出てこないように、強く、強く噛みしめる。
 少しだけ鉄の味と鈍い痛みがして、これが罰ならばどんなにいいだろうと思った。

「どうすれば」

 いいのか分からない。どうすることがいいのか。

『あなた賢者でしょう?』

「偽者よ」

 意地悪そうな顔。まるで、わたしを試すような。

『ねぇ、ユキノ。たった一つだけ、方法があるって言ったらどうする?』

 歌うように滑らかに、笑っているように軽々しく。彼女はその言葉を口にした。

『もし、この二人を止められる力があなたにあって、それをたった一回だけ使えるとしたら、あなたは代わりに何を差し出す? 
何を、私にくれる?』

 ニヤリ、と企むような笑顔でわたしに問いかける。
 わたしがそれを撥(は)ねつけられないことを知っていた。
 どうしても何とかしたいと思っていることを知っていて、それでこの取引を持ちかけているのだと分かる。
 いつものわたしなら、絶対のらない取引だ。
 他人のために、自分の身をどうにかするなんてありえないことなのに。

『ねぇ、どうする?』

 でも、どうしても止めたくて。

「あなたの、望むものをあげる」

 そう言ってしまった。





「そろそろ終わりにしませんか?」

 ルークは苦笑いで言った。
 あちこちの傷から滴る血が顔や手を紅く染めているのにも拘らず、その笑顔はいつもどおり優しくて、穏やかなままだ。

「大臣を何人も殺しておいて」

 そう呟くジルの肌も紅く染まっていた。
 死んだ大臣たちの亡骸は残ることなく、砂となって消えていった。脱ぎ捨てられたような服だけがあちこちにあった。

「あなた方が、多勢に無勢というに相応しいことをしたんです」

 卑怯だと思いませんか? 僕は闘うつもりなんてなかったのに。

「知っていた。俺も闘うつもりなんてなかった。ユキノに、止められたからな」

 真っ直ぐに向けてきた瞳に、決意を固めたのに。

「俺は立派な支配者じゃないから、どうしても大臣たちの意見に流される」

 苦く笑ってジルは剣を振るった。ルークの頬をかすめ、血が舞う。ルークも高く剣を振り上げた。 

 そのときだった。

「いい加減、止めたらどう?」

 聞きなれた声が入り、二人の剣を受け止める。
 少し長めの髪がゆっくりと肩に落ちた。

「「ユキノ?!」」

「あーあ。やっぱりダメね。全部は受け止められないわ」

 ジルとルークの呼びかけに答えず、少女は自分の手の平を見て言った。
 二人の剣を受け止めた手、はまるで火傷したように赤く爛れている。痛々しいその傷に、二人はそっと視線を外した。
 少女は眉を顰めるが、痛みにというよりも、その傷を苦々しく思って眉を顰めているようだ。
 今は自分のものである体に傷が付いたのが気に入らないらしい。

「ユキノ、どうしてここに」

「ユキノじゃないわ」

 咎めるようなジルの声を遮り、少女は笑った。いつもの少女なら絶対にしない表情と、口から出た言葉に二人は目を見開いた。

「エリファレット・メルザスって言ったら魔王様には分かるかしら?」

「まさか、賢者……?」
 
 『信じられない』とジルの顔が語っている。
 何か別のものをみるように、ジルは呆然とした。 一方ルークは事態が理解できないのか、雪乃の顔をじっと見つめる。

「この子はあなたたちの戦いを終わらせるために、自らの体を私に差し出したわ」

 ジルとルークの顔が一瞬にして固まる。
 それを見て雪乃の顔をした『賢者』は笑った。何が可笑しいのか分からないほど、面白そうに笑う。
 クスクスという明るい笑い声が、紅く血に染まった間に不自然に響き渡った。

「あなたたちの愚かな行動が、この子を傷つけた。
そんなことも分からない? この子が自身を責めるなんて考えつきもしなかった?」

 自分の胸に右手を当て、『雪乃』が笑う。剣を握り締める二人を嘲笑う。

「ジルベール・リュシラーズ。あなた本当にそっくりね」

 その姿も、あり方も、望むことさえも全て。

「ダンテに似てる。怖いくらいにそっくりよ」

 ゆっくりと、雪乃はジルに近づき抱きついた。
 ジルの首に両腕を回し、ぐいっと自分の方へ近づける。雪乃と同じ顔のはずなのに、受ける印象が違いすぎてジルは顔を背けた。
 その様子さえ面白いのかクスリと笑みをこぼし、そしてジルの耳元に唇を寄せる。
 そしてジルにしか聞こえない小さな声で話し始めた。

「大切な女の子の体が近くにあるのに、動揺さえしないのね。つまらない坊やだこと」

 馬鹿にしたような言葉にジルは返さない。雪乃の体の賢者は不満そうに眉を上げながらかまわず続ける。

「坊や、取引しましょう。この子の体、返してほしいでしょう?」

 ピクン、とジルの体が反応する。先ほどまで微動だにしなかったのに、と賢者は笑った。

「私を、殺してくれたら、この子を返してもいいわよ」

 笑ったのを気配で感じ、ジルは雪乃を見た。
 いつもと変わらないような顔とぶつかり、慌てて視線を外す。
 中身は違う。だけど近くで感じる熱も、ふわりと広がる香りも『いつも』の少女のようで。

「この子のこと、大切でしょ?」

 なら取引しましょう?

「あなたのお父様が私にかけた術を、解いて」

 『死なない』術を解いて。同じ魔王であるあなたなら、できるでしょう。

「肉体が死んでも、心までは決して朽ちなかった。――呪いだわ」

 殺して。

「私を」

 殺して。

「ただの人間が、数百年生きることの苦痛がどんなものか分かる?」

 ダンテが死んだのに、なくならなかった『私』という存在。

「父を恨んでいましたか?」

 ボソリとジルが聞いた。賢者は『ええ』と答えて美しく微笑んだ。

「同じくらい、愛していたけれど」



                           19話
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