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いつきが日々を綴ります。日々のぐだぐだを語ったりしてます。時々本の感想が紛れ込んでたりするかもです。
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 久しぶりに……色々書きました。『drop』(先生×生徒)とか、『優しい魔王サマ』(オマケ小説の最後)とか。
 『drop』はあと六話で本編終了です。(書き直してないけど)

 で、ティアちゃんたちのお話も書きました。(そういえば未だに題名は“仮”)
 ちょこちょこ書き直したり、拍手で出したりしてますが、本編自体を書くのは……えっと、三年ぶり??
 ――ちょっとティアちゃん、あんたそんな話し方? アレク、あんたはそんなことしない子だ! エイル、人の話を聞けっ!!
 あれー、キャラの操作ができない。おまけに性格忘れかけてる。
 脳内では結構スキンシップの多い二人なのに、本編は主従の関係で止まってるんでした。
 どうしよう、勘を取り戻すまでに続き書き終わっちゃうかも。
 まぁ、ボチボチ書いていきます。のた打ち回りながら、読み直してみます。


 『優しい魔王サマ』はもう少し、つまらないまんまです。過去編に入ったら少し甘くなりますよ。きっと。

+ + + + + + + + + +
『魔王サマの次は勇者サマ』





 目の前にある扉は何回か見かけたことのある扉だった。
 一際大きくて、立派なもの。刻まれているのは『獅子』。百獣の王とも呼ばれている獣。
 それと目が合った気がして顔を伏せる。それくらい迫力に満ちていた。

「賢者様がお見えになりました」

 そうメイドさんが言った。扉が大きく開くと同時に、何十という瞳がこちらを見る。
 思わず回れ右をして部屋に帰ろうかと思うくらいには、その視線が怖かった。
 そして誰かが一人、ホゥと息を吐いたのを合図にその視線の主たちは言葉を口から出す。

「なんと見事な黒髪と瞳か」

「あれが、賢者……か」

「人間であの外見ということはまだ年若――二十歳前ではないか。物事の判断はつくのかね?」

「そもそも名も、顔も知られていない賢者ですよ。本物だという証拠はどこに……」

「所詮は人間。我らの敵ではないか。信用に足らんな」

「全く。コレの所為でルーフルル卿は処分されたのか? 魔王陛下はどのように考えられているのか」

 いくつもの声が前から、後ろから、ありとあらゆる方向から囁かれる。
 何を言うか考えず、声を出そうとしたときにジルの声が聞こえた。数十時間しか聞いていない時間はないのに、酷く懐かしかった。

「お前たちが何と言おうが、賢者は賢者だ」

 きっぱりと、それはわたしさえ驚くぐらいはっきりとジルは言った。

「しかし。ほれ」

「あぁ、賢者が消えた途端、前魔王のダンテ様の側近たちは次々と死んでしまった」

「気味の悪いことだった」

 あれは自分が選んだ王が死んでしまったからだ。そう大臣たちは囁いた。幾人もの人たちがわたしの方を向く。
 居心地が悪くて、身じろぎすることもできずにいた。しかし。

「今日の本題は貴殿らに賢者の存在を明かすことだけではない」

 ジルのその言葉に広間は一斉に静まった。
 それが王の力だということが一瞬で分かるほど、言葉に力が宿っているのだと実感した。昨日も、そうやってノアを黙らせた。

「人間側から書状が届いた」

 ザワリと広間が騒がしくなった後静まる。しかし大臣たちの目には焦りが映っていた。
 これから魔王の言うことが何を示すのか見極めようとしているようだった。

「領地を侵されたと言っている。侵した者を厳罰にしないのであれば、友好関係も続かないだろうと」

『何が友好関係だ』

 と笑う声がかすかに聞こえる。ジルにも聞こえていないはずないのに、全く反応しなかった。

「六百年前同様、勇者を立てたらしい」

 今度こそ、一間がシンと静まった。話の見えないわたしはぼんやりと立っている。
 文献を調べている途中、何度か『勇者』という文字を見つけたが、私自身と関係がないために詳しく読んでない。
 でもぼんやりと『勇者』というくらいだから強いんだろうな、と思った。魔王様を倒す役回りだし、大体。

 魔王を、倒す?

 浮かんだ言葉にぎょっとしてジルを見るが、いつもどおりの表情だった。
 若干、無表情で瞳に優しい色が宿っていないのは『魔王への道』の特訓の成果だと思いたい。

「魔王陛下!!」

 一瞬何も聞こえない沈黙が続き、そして次には大臣たちの焦ったような声があちこちに広がった。

「呑気にこのようなことをしている場合ではありませんぞ。
すぐさま地方を管理している者へ連絡し、国境の近くの守りを強化せねばなりません。
六百年前の文献同様、お父上のように命を狙われてしまいます」

 一人の男が席を立ち、広間の扉を開く。真っ赤な髪を短く切り、貴族というよりは兵士の気配を感じる。

「モンドレート卿」

「私はこれで失礼いたしますぞ。時間が惜しいゆえ」

 颯爽と去っていく人物が扉を閉めると同時に、広間の大臣たちも動き始める。
 そして数分もしないうちに広間から人はいなくなった。あまりの展開の早さについていけず、立ったままでいるとジルがこちらに向かって来た。
 思わず身構えるわたしに、ジルは薄く笑う。

 謝らなくちゃいけない。――ヒドイことを言ってしまったから。

 お礼を言わなくちゃいけない。――守ってくれたから。

 そう思うのに、まだばれたら殺されるんじゃないかと疑っている自分がいる。怖いと思い、すくんでしまう自分がいる。

「ユキノ」

 この手は優しい。
 そう知っているのに、体がびくりと反応した。わたしの中にある本能が、怖いと告げていた。
 わたしとは違うものに。人一人簡単に殺せてしまう力に。

「ルーフルル卿は自分の領地に返した。ただもう登城できない。今、ノアが領地まで連れて戻っている」

 ノアは無事なんだとか、あの男が生きているとか。気になることはたくさんある。
 だけど、どんな言葉を口にすればいいのか迷っていると、ジルはスッと身を引いた。

「随分、恐ろしい目に合わせてしまった、か」

 顔を上げれば、寂しいそうなジルの瞳に吸い寄せられた。深い、海の色。深海の清い水の色。
 思わずマントの裾を掴んだ。このままではいけないと、なぜかそう思った。

「違うの」

 怖いのは本当だけど。

「ジルが嫌いなわけじゃないの」

 ジル自身が怖いわけじゃない。わたしが怖いのは、その純粋な力。

「わたしが怖いのは」

 賢者の偽者だと分かってしまうくらいに心が弱っているのは。

「その力なの」

 強気な発言さえできないくらい、ばれるのさえ怖くないくらい、自分の無力さを痛いくらい分かってしまったから。
 人ならざる人たちの中でわたし一人。それがどういうことか嫌というほど分かってしまった。
 自分がいかにあっけなく死んでしまう存在かということを。

 もう話してしまおうかとさえ思ってしまう。わたしは賢者なんかではないと。

 かろうじでそれを止めると、笑顔を無理矢理作った。それは以前の世界でも、変わらないわたしのいつもの笑顔。

「大丈夫。わたしはあなたを魔王らしくするために来た。
あなたは魔王らしい、魔王だったけど、もう少し訓練が必要みたいだから。だからもう少し、そばにいるよ」

 そしてわたしは、その場から逃げ出した。ここへ来て、逃げてばかりだと気付いた。




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