いつきが日々を綴ります。日々のぐだぐだを語ったりしてます。時々本の感想が紛れ込んでたりするかもです。
一週間ぶりですね。『勿忘草』 ……う~ん、なんだかいろいろ筆が乗らない調子です。
テスト近いからかな。ということで、明日からテスト週間です。多分、十月十日が次の『勿忘草』更新です。
多分ですけどね……。我慢できずにしちゃうかもです、パソコン。
月曜日からは携帯からちょこちょこ更新しそうです。
トリップものとか、三姉妹の恋愛ものとかいろいろ早くも行き詰ってる感が否めません。
う~ん、トリップものなんかはプロットも出来上がってるのに。キャラがつかめない所為か……。城の構造が思いつかず、主人公たちがどこにいるのかわからない所為か……。
いや、面白いですけどね。主に、終盤の想像している時とかは。でもまだ序盤なんで、説明とかが難しい。
少年陰陽師、結局全部読み返してしまった……。本棚の整理~!! 理科の最後の一問を済ませたかったのに。
理科の計算の所為で泣きそうです。もう、意味わかんない。
テスト近いからかな。ということで、明日からテスト週間です。多分、十月十日が次の『勿忘草』更新です。
多分ですけどね……。我慢できずにしちゃうかもです、パソコン。
月曜日からは携帯からちょこちょこ更新しそうです。
トリップものとか、三姉妹の恋愛ものとかいろいろ早くも行き詰ってる感が否めません。
う~ん、トリップものなんかはプロットも出来上がってるのに。キャラがつかめない所為か……。城の構造が思いつかず、主人公たちがどこにいるのかわからない所為か……。
いや、面白いですけどね。主に、終盤の想像している時とかは。でもまだ序盤なんで、説明とかが難しい。
少年陰陽師、結局全部読み返してしまった……。本棚の整理~!! 理科の最後の一問を済ませたかったのに。
理科の計算の所為で泣きそうです。もう、意味わかんない。
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「俺の名は――」
そこまで言って、鬼は言葉を止めた。何か悩むように、じっと弥絃の顔を見つめる。
言おうか、言うまいか迷った末、鬼はふぅっと大きく息をついた。そして首を振り、口を開いた。
「いや、いい」
「何故、名前を教えてくださらないのですか?」
弥絃が首を傾げると、唯一残っていた簪が落ちた。かしゃん、とはねて転がる。
そして、もうほとんど残されていない日の光を反射し、弥絃の顔を小さく照らした。
きゅっとその光から逃れるように弥絃が目を瞑り、首を振った。
「俺たちのようなものにとって、真名(まな)は呪だ。命を晒すのも同然」
そう言って鬼は弥絃を見つめた。俺の命を、お前は抱えきれぬだろう。そう言い聞かせるように鬼は言う。
しかし、弥絃は何か思いついたように、鬼を見つめ返した。
「私たちにとっても同じではないのですか? 力のなるものに名前を呼ばれれば、その者は縛られ、ただの傀儡子(くぐつし)になる。
あるいは……」
弥絃の唇が小さく震えた。
「好きなだけ弄ばれ、殺される……」
自分が口に出した言葉の不吉さに怯えながら、それでも弥絃はゆるく笑った。
「私の名は、弥絃です。弥生の"や"に、楽器の弦の"げん"」
宙で"弥絃"と書いてみせた。
「お前は何故、俺に名を教えた」
鬼は不思議そうに弥絃を見つめる。本当に弥絃の真理が分からないのか、瞳が僅かに揺れていた。
それを見て、弥絃はおかしそうに、それでも眉を下げる。泣き笑いのような顔を見た。
「村を救うための、生贄だから。もう死んだも、同然の存在だから」
多くの諦めと悟りを綯い交ぜにして、弥絃は言った。
強がったような、無理にはっきりと発音される言葉は、とても弱々しい印象しか与えられなかった。詭弁とも、強がりとも呼ばれる顔を見せる。
「縛られても、殺されても、私は――村を救える。役に、立てる。だから……」
何が彼女を変えてしまったのだろうか。半年、巫女に預けられただけで、こんなにも生きる気力がなくなってしまうのか。そう紫苑は思った。
鬼は本能で生きている。
生きるために人を喰らうこともある。傷を負えば治そうとする。殺されそうになれば、相手を殺す。
決して人々の言う"鬼神"ではない。悪しき神は鬼と呼ばれ、人々から忌まれる。
それが鬼の正体であり、性(さが)である。そのことをこの娘は知っているのだろうか、と鬼は眉を顰めた。
「紫苑(しおん)」
呟くように鬼は言う。
「真名は教えられぬ。だが、呼び名は必要だろう」
そう言い終らないうちに鬼――紫苑は弥絃を抱き上げた。まるで荷物か何かのように軽々と持ち上げられ、膝の裏と背中に腕を回される。
一気に整った顔が近くなる。
弥絃は慌てながら、動きにくい花嫁衣裳を懸命に翻した。
「あ、あの」
「落ちたくなければ掴まっていろ」
弥絃の言葉に返し、そして歩き出した。浮遊感はあるものの、全く持って揺れる気配はない。
しっかりとした安定感はやがて安心に変わり、弥絃は大人しく体を預けた。
危なげの一切ない足取り、それは突然に止まった。
「村が救われれば、お前は帰る。しかし、その間住む家は必要だろう」
その言葉に驚き、弥絃は紫苑を振り返って目を合せた。
殺さない……と、今この鬼は言っただろうか。
「私の魂は必要ないのですか?」
紫苑の顔を見つめる顔は小さく歪んでいた。
まるで、存在さえ否定されたように、『必要ない』という自分自身のその言葉に傷付いたような顔をする。
その顔を見て、紫苑は不機嫌そうに目を眇めた。
「お前の魂を喰らっても、俺たちの性は変わらぬ。それに、愉悦のためだけに人を殺すようなことはしない」
そう言うと、紫苑は弥絃を下ろした。押し倒した時同様、多少の震動は伴うものの、思ったよりずっと優しい仕草に弥絃は驚きを隠せない。
だが、先ほどいた場所よりさらに静かさが高まったのを感じ、瞬時に体を硬くする。
説明されなくても、聞かなくても、分かってしまったのは、きっと彼女だから。
「ここは……」
聖域――神籬(ひもろぎ)。
神を祀(まつ)る、常盤木(ときわぎ)で囲まれた神座。神を祀るためだけの、場所。
人間ごときが入ることなど許さない、絶対の清さ。
一切の穢れの侵入をも阻む、聖なる場所。社(やしろ)と言うに相応しすぎる、神々しい気配。
そこまで言って、鬼は言葉を止めた。何か悩むように、じっと弥絃の顔を見つめる。
言おうか、言うまいか迷った末、鬼はふぅっと大きく息をついた。そして首を振り、口を開いた。
「いや、いい」
「何故、名前を教えてくださらないのですか?」
弥絃が首を傾げると、唯一残っていた簪が落ちた。かしゃん、とはねて転がる。
そして、もうほとんど残されていない日の光を反射し、弥絃の顔を小さく照らした。
きゅっとその光から逃れるように弥絃が目を瞑り、首を振った。
「俺たちのようなものにとって、真名(まな)は呪だ。命を晒すのも同然」
そう言って鬼は弥絃を見つめた。俺の命を、お前は抱えきれぬだろう。そう言い聞かせるように鬼は言う。
しかし、弥絃は何か思いついたように、鬼を見つめ返した。
「私たちにとっても同じではないのですか? 力のなるものに名前を呼ばれれば、その者は縛られ、ただの傀儡子(くぐつし)になる。
あるいは……」
弥絃の唇が小さく震えた。
「好きなだけ弄ばれ、殺される……」
自分が口に出した言葉の不吉さに怯えながら、それでも弥絃はゆるく笑った。
「私の名は、弥絃です。弥生の"や"に、楽器の弦の"げん"」
宙で"弥絃"と書いてみせた。
「お前は何故、俺に名を教えた」
鬼は不思議そうに弥絃を見つめる。本当に弥絃の真理が分からないのか、瞳が僅かに揺れていた。
それを見て、弥絃はおかしそうに、それでも眉を下げる。泣き笑いのような顔を見た。
「村を救うための、生贄だから。もう死んだも、同然の存在だから」
多くの諦めと悟りを綯い交ぜにして、弥絃は言った。
強がったような、無理にはっきりと発音される言葉は、とても弱々しい印象しか与えられなかった。詭弁とも、強がりとも呼ばれる顔を見せる。
「縛られても、殺されても、私は――村を救える。役に、立てる。だから……」
何が彼女を変えてしまったのだろうか。半年、巫女に預けられただけで、こんなにも生きる気力がなくなってしまうのか。そう紫苑は思った。
鬼は本能で生きている。
生きるために人を喰らうこともある。傷を負えば治そうとする。殺されそうになれば、相手を殺す。
決して人々の言う"鬼神"ではない。悪しき神は鬼と呼ばれ、人々から忌まれる。
それが鬼の正体であり、性(さが)である。そのことをこの娘は知っているのだろうか、と鬼は眉を顰めた。
「紫苑(しおん)」
呟くように鬼は言う。
「真名は教えられぬ。だが、呼び名は必要だろう」
そう言い終らないうちに鬼――紫苑は弥絃を抱き上げた。まるで荷物か何かのように軽々と持ち上げられ、膝の裏と背中に腕を回される。
一気に整った顔が近くなる。
弥絃は慌てながら、動きにくい花嫁衣裳を懸命に翻した。
「あ、あの」
「落ちたくなければ掴まっていろ」
弥絃の言葉に返し、そして歩き出した。浮遊感はあるものの、全く持って揺れる気配はない。
しっかりとした安定感はやがて安心に変わり、弥絃は大人しく体を預けた。
危なげの一切ない足取り、それは突然に止まった。
「村が救われれば、お前は帰る。しかし、その間住む家は必要だろう」
その言葉に驚き、弥絃は紫苑を振り返って目を合せた。
殺さない……と、今この鬼は言っただろうか。
「私の魂は必要ないのですか?」
紫苑の顔を見つめる顔は小さく歪んでいた。
まるで、存在さえ否定されたように、『必要ない』という自分自身のその言葉に傷付いたような顔をする。
その顔を見て、紫苑は不機嫌そうに目を眇めた。
「お前の魂を喰らっても、俺たちの性は変わらぬ。それに、愉悦のためだけに人を殺すようなことはしない」
そう言うと、紫苑は弥絃を下ろした。押し倒した時同様、多少の震動は伴うものの、思ったよりずっと優しい仕草に弥絃は驚きを隠せない。
だが、先ほどいた場所よりさらに静かさが高まったのを感じ、瞬時に体を硬くする。
説明されなくても、聞かなくても、分かってしまったのは、きっと彼女だから。
「ここは……」
聖域――神籬(ひもろぎ)。
神を祀(まつ)る、常盤木(ときわぎ)で囲まれた神座。神を祀るためだけの、場所。
人間ごときが入ることなど許さない、絶対の清さ。
一切の穢れの侵入をも阻む、聖なる場所。社(やしろ)と言うに相応しすぎる、神々しい気配。
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