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いつきが日々を綴ります。日々のぐだぐだを語ったりしてます。時々本の感想が紛れ込んでたりするかもです。
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 久しぶりの『勿忘草』更新です。ふぅ。テストも無事終わり(無事、というには出来がよろしくないですが)、これからは遊びまくります。
 この三連休、多分机に向かう時間は皆無に等しいでしょう……。

 テスト期間中、無性に小説が書きたくなり(現実逃避です)、勉強に飽きた十一時ぐらいから、十一時半の三十分ぐらいは執筆タイムでした。
 テスト期間中にもかかわらず、日付が変わる前にはねていたので、とても健康的に毎日を過ごしていました。(テストのできばえに反映された気がする)

 さて、ちょっとしたお知らせですが、今書いている“トリップもの”、完結のめどが立つまでは載せないようにしようと思います。
 はじめは「勿忘草が終わったら連載しようかな~」と思っていたのですが、やはり途中で『かけません』ということになるのはいけないと思うので、様子を見ます。
 原案者様のご意見を反映しつつ、出来上がったのを読み返してもらってから載せたいと思います。
 ですが、まだ10ページ程度しかかけていないんですよね。まだ起承転結の起ですから。
 ですが、書けば書くほど可愛くなっていく登場人物たちのおかけで、割とスムーズに考えがまとまっています。(これで!? というつっこみはなしでお願いします)


 ではでは、勿忘草の続きを読んでくださる方はどうぞ。

+ + + + + + + + + +
 弥絃は自分がひどく浮いている気がして身を縮めた。それと同時に、紫苑の気配がひどくここに馴染んでいるのを感じ、首を傾げる。
 紫苑の言う通り、もし彼が神でないのなら、何故こんなにも彼の空気はここに馴染んでいるのだろう、と思わずにはいられない。

 この聖域が、邪悪なものの侵入を許そうはずがない。ならば、彼はきっと……。

 ――この森を、支配する者――


「やはり私にとっては……神々しい存在」

 呟くようにそう言うと、その声が聞こえたのか、紫苑が弥絃に向き直った。

「お前の、しばらく住む家だ」

 家と呼ぶには、神々しすぎて、弥絃は一瞬立ち入ることを戸惑った。本当に入っていいのか、神の怒りは買わないのか。
 そればかりが心配で、自分が死ぬとか死なないとか、殺されるとかの思考はとっくに消えていた。
 紫苑は人を拒むように空気を鋭くさせた神籬へと進み、社の扉を開いた。

「入れ」 
 
 言葉少なげに命令すると、自分が先に中へ入る。中に入るのも戸惑われたが、外の厳しい気にも耐えられず、弥絃は半ば逃げるように、縋るように紫苑を追いかけて、中へ入った。
 中へ入ると、空気はなお一層鋭くなり、入った次の瞬間には、弥絃は入ったこと自体を後悔した。
 まるで弥絃だけを押し出すように、中へ入ることを嫌がるように。それを感じて、弥絃は中へ入ってすぐに足を止めた。

「どうした」

 命令するよりずっと優しげな声で紫苑は問う。弥絃はただ首を振り、何でもありません、と呟くだけだった。

「人間ごときの私が、踏み入れてはいけない場所に入ってしまっただけ、そう気が付いただけです」

 胸元に手を当て、紫苑を見つめた。そしてそっと下げていた眉を無理矢理上げ、笑顔を作ろうとして失敗した。
 自分が情けない笑顔になっていることに気が付き、さらに泣きそうになる。

「何故お前がそうのような顔をする?」

 本当に理由が分からないのか、紫苑は怪訝そうに言った。弥絃はしばらく宙に視線を彷徨わせると、首を振る。
 紫苑はそれ以上問うことなく、弥絃の視線の方へ同じように目をやった。

「社(ここ)の空気が問題か」
 
 問うているのかいないのか、疑問を口に出すこともなく、出す暇もなかった。
 紫苑が静かに腕を横に振るう。風を切る音も聞こえはしなかった。ただ、鋭い空気が一瞬で柔らかくなっただけ。それだけ……。
 しばらく外の空気に触れなかったせいか、外の空気はひどく生々しく、弥絃の肌に絡みつく。
 ここの空気が異常なまでに研ぎ澄まされていたのだ。美しく、不浄のものを寄せつけない。それは清浄なだけに、激しい性質を持つ。

「人は――脆いな」

 弥絃に言っているようにも聞こえ、『いいえ』と答えた。

「人は、とても強いです。生きるためなら、何でもやってしまう。そしてそれを後悔しながら、また同じことを繰り返す。
だから私がここにいるのです。強か、と言うのかもしれないです」

「そう言う意味ではない」

 弥絃の言葉に紫苑は苦笑しながら答えた。そして弥絃の頭に掌をのせ、掬うように撫でる。
 その手はとても優しいけれど、どこか恐る恐るといった雰囲気を出していた。まるで壊れ物か何かを扱うような仕草だ。
 その手つきに、弥絃は安心しながらも疑問を抱いた。優しすぎる手は、自分がまるで人を壊してしまうとでも言っているような気がした。

 "この手は私を傷つけない"

 そんな根拠も確証も何もない――不確かな、しかし弥絃には絶対の信用。


「人は、特に俺を見るのは若い女だが、それはとても弱い。抱き上げれば軽く、力を込めればすぐにでも折れてしまいそうだ。
それだけ細く、頼りない。病も得やすく、あっけないほどすぐに死んでしまう。それに、健康に生きても、寿命は短い。
俺たちにしてみれば、人の命などほんの一瞬。瞬きをした次の瞬間にはいなくなってしまうような存在だ」

 悟ったような声を聞きながら、弥絃はそれを他人事のように感じていた。
 一体、今までに何人の女(ひと)がこの人の傍にいたのだろう、と。そしてその人が、この人を置いて死んでしまったのだろうか、と。
 
 では――私、は?
 
 ここで生を終えるか、村に帰るか。どちらにせよ、他の人同様に彼を置いていくことに変わりはない。

「あなたは、寂しいのですか?」

 知らず知らずに、小さな問いが口から零れて、空気にはじけた。そして空気に溶け込み、原型が分からないほど混ざりこむ。
 その軌跡を、どこかぼんやりと感じていた。

「どういう、意味だ」

 紫苑は低く呟く。それ以上の発言を、拒んでいるようにも感じれる。警戒しているようだった。
 弥絃を見据える瞳は鋭く、紅く光る。一瞬牙が光った気がして、弥絃は後ろへ下がった。

「気に障ったのなら、謝ります。ごめんなさい。でも、でもあなたは、人の弱さを恐れて、慈しんでいるように思えたのです。
あなたは、自分独りが置いて行かれることに、恐れを抱いている、そうおも……」

「黙れ」

 弥絃の言葉を、紫苑は断ち切った。冴え冴えとしていて、冷めた瞳で弥絃を睨む。その目に、表情(かお)に映るのは、拒絶。




 どうしてあそこまで拒絶の色を強くしたのだろう。何人たりとも触れさせないという、鋭い瞳。
 近づいた者を片っ端から切り裂いていく、鋭利な刃物のような声。優しい瞳で、声で微笑んだあの鬼をあそこまで変えるは、『人』の弱さか、脆さか。
 あの研ぎ澄まされた、神々しいまでの鋭さは、一体何を表すというのか。その鍵を持つは――未だ誰も知らず。
 
 ただ分かることがあるとすればそれは、途方もない暗闇。




「今宵は疲れただろう。ゆっくりと休めばいい」

 しばらくして、弥絃に聞こえたのはそれだけだった。紫苑は弥絃に背を向けたまま、振り向こうともしない。
 冷たく見据えたことを恥じているのか、随分と優しい声だった。
 弥絃は一瞬、その声に誘われるように紫苑へ腕を伸ばした。先ほど感じた恐れさえ忘れ、拒絶されたことも頭にはない。
 ただ、紫苑に触れたいと思った。しかし、足元で床が鳴り、弥絃はそれで我に返った。
 自分がしていたことを自覚し、はっと息を呑んで慌てて手を引き戻す。
 まるで右手が違う人間にでも操られているかのように、左手で右手を引き寄せた。そして、もう伸ばさないようにと
 胸の前で強く握り締める。

「分かり、ました」

 他に何と言っていいかわからず、曖昧に返事をした。
 本当は、どうやって休めばよいか分からないし、鬼でしかも今日初めて会った男の人の傍では、いくらなんでも眠れない。
 そう思っているにもかかわらず、弥絃は何でもないふりをした。
 そろそろと花嫁衣裳を引きずり、部屋の隅へと座り込む。それと同時に眠気に襲われた。
 眠りに落ちる一瞬前、弥絃は呼ばれている気がして、目を開けようとする。しかしそれも叶わず、引きずられるように眠りに落ちていく。

「俺は――れぬ」

 寂しそうな目をした紫苑が頭の中に浮かんだが、何と言っているのか、分からなかった。




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