いつきが日々を綴ります。日々のぐだぐだを語ったりしてます。時々本の感想が紛れ込んでたりするかもです。
咄嗟に思いついて、書きたくなったものです。私にしては珍しく、男の子視点。続きそうですが、続きません。
終わり方が微妙です。(いつものことですが)
読書の秋と言うことで……。
ちょっと主人公の男の子、怪しいかもしれません。書いてて自分でも思いました。
終わり方が微妙です。(いつものことですが)
読書の秋と言うことで……。
ちょっと主人公の男の子、怪しいかもしれません。書いてて自分でも思いました。
+ + + + + + + + + +
一ヶ月に一回。それは月初めにやってくる。だから俺は、いつもその周辺は休みを取らない。
だって、一ヶ月に一回の楽しみだから。
月初め……それは一日だったり、三日だったりするけれど。彼女はやってくる。近くの……俺の通っている高校よりも少しだけ駅よりの高校の制服を着た彼女。
セミロング……と言うと最近知った長さの髪をさらさらと流したまま、他のところへは目もくれず、レジ前の新刊コーナーへとやってくる。
少しだけ眉を寄せて、表紙を目で追う。探し物がどこにも見つからないのだろう、人差し指で表紙の表面をなぞるように一つずつ確認していく。
その仕草が面白くて、毎回、『もう少し左にありますよ』とか、『上ですよ』とか言ってしまいたくなる。
「あ……」
彼女が小さく声を上げる。それも毎度のこと。毎度のことだけど、何故か俺の方まで嬉しくなる。そんな笑顔を、彼女は目当ての本が見つかった時に浮かべる。
そしてとても大事そうに、その本を手に取るのだ。
多分、その笑顔にやられたんだろうな、と冷静な方の自分は思う。その時ばかりは、本になりたいとか、普通の時では思いもしないことを思ってしまう。
そして彼女はその笑顔のまま、こちらへとやって来る。レジは二人いるが、もう一人の人はにやりと笑って言うのだ。
『あんたがして来なさいよ。そして今度こそ話しかけるのよ!!』
三十をいくつか過ぎたおばさんは、母親というよりも年の離れた姉のような存在だ。そんなおばさんに、俺の心は見透かされている。
「すみません」
このセリフも毎度のこと。だから振り向いて笑顔で『ハイ』と返事をするのだ。多分、本のことしか頭にない彼女は知らないと思うけど。
「カバーをおかけしましょうか?」
「あ、お願いします」
本当は、毎回聞いてるから聞かなくても分かってるんだけど。だけど、少しでも彼女の声が聞きたくて。
少しだけ、勇気を出してみようか。どうせバイトとお客さんの間柄なのだし。おばさんだって、よくお客さんと話してるし。
「お買い上げありがとうございました」
何を話そう。どうしたら、振り向いてくれるだろう。この本を手渡してしまえば、もう一ヶ月会えないのに、中々言葉は出てきてくれない。
何か、何か言わなくちゃいけないのに。
そう思いながら、彼女に本を手渡した。そして声をかけようとして口を開いたその時。今度は彼女がしっかりとこちらを見た。
あれ、おかしいな。いつも本しか見ないのに……。
「あ、あの。いつも、レジをしてくれる人ですよね?」
少しだけ顔を上気させて、彼女がこちらを見る。頷くことしか、できなかった。
「あの。いつもあなたがレジをやってくれるから……。いつも、笑顔で返事してくれるから……その」
言いよどんで、俯いて。受け取ったばかりの本をきゅっと握り締めたのが分かった。紙袋が妙に歪んだ。
「お、お礼が言いたくて。あの。ありがとう……ございます」
多分それが、始まりだ。彼女の瞳に映った自分は……。初めて見るぐらい、真っ赤だった。
どうやって返そうか。どうやって、返事すれば……。
おばさんがこちらを見て、にやけてるなんて知らずに、俺は口を開く。そこから出てくる言葉は、俺にだって何なのかは分からない。分からないけど、それが。
始まりの合図。
だって、一ヶ月に一回の楽しみだから。
月初め……それは一日だったり、三日だったりするけれど。彼女はやってくる。近くの……俺の通っている高校よりも少しだけ駅よりの高校の制服を着た彼女。
セミロング……と言うと最近知った長さの髪をさらさらと流したまま、他のところへは目もくれず、レジ前の新刊コーナーへとやってくる。
少しだけ眉を寄せて、表紙を目で追う。探し物がどこにも見つからないのだろう、人差し指で表紙の表面をなぞるように一つずつ確認していく。
その仕草が面白くて、毎回、『もう少し左にありますよ』とか、『上ですよ』とか言ってしまいたくなる。
「あ……」
彼女が小さく声を上げる。それも毎度のこと。毎度のことだけど、何故か俺の方まで嬉しくなる。そんな笑顔を、彼女は目当ての本が見つかった時に浮かべる。
そしてとても大事そうに、その本を手に取るのだ。
多分、その笑顔にやられたんだろうな、と冷静な方の自分は思う。その時ばかりは、本になりたいとか、普通の時では思いもしないことを思ってしまう。
そして彼女はその笑顔のまま、こちらへとやって来る。レジは二人いるが、もう一人の人はにやりと笑って言うのだ。
『あんたがして来なさいよ。そして今度こそ話しかけるのよ!!』
三十をいくつか過ぎたおばさんは、母親というよりも年の離れた姉のような存在だ。そんなおばさんに、俺の心は見透かされている。
「すみません」
このセリフも毎度のこと。だから振り向いて笑顔で『ハイ』と返事をするのだ。多分、本のことしか頭にない彼女は知らないと思うけど。
「カバーをおかけしましょうか?」
「あ、お願いします」
本当は、毎回聞いてるから聞かなくても分かってるんだけど。だけど、少しでも彼女の声が聞きたくて。
少しだけ、勇気を出してみようか。どうせバイトとお客さんの間柄なのだし。おばさんだって、よくお客さんと話してるし。
「お買い上げありがとうございました」
何を話そう。どうしたら、振り向いてくれるだろう。この本を手渡してしまえば、もう一ヶ月会えないのに、中々言葉は出てきてくれない。
何か、何か言わなくちゃいけないのに。
そう思いながら、彼女に本を手渡した。そして声をかけようとして口を開いたその時。今度は彼女がしっかりとこちらを見た。
あれ、おかしいな。いつも本しか見ないのに……。
「あ、あの。いつも、レジをしてくれる人ですよね?」
少しだけ顔を上気させて、彼女がこちらを見る。頷くことしか、できなかった。
「あの。いつもあなたがレジをやってくれるから……。いつも、笑顔で返事してくれるから……その」
言いよどんで、俯いて。受け取ったばかりの本をきゅっと握り締めたのが分かった。紙袋が妙に歪んだ。
「お、お礼が言いたくて。あの。ありがとう……ございます」
多分それが、始まりだ。彼女の瞳に映った自分は……。初めて見るぐらい、真っ赤だった。
どうやって返そうか。どうやって、返事すれば……。
おばさんがこちらを見て、にやけてるなんて知らずに、俺は口を開く。そこから出てくる言葉は、俺にだって何なのかは分からない。分からないけど、それが。
始まりの合図。
~END~
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