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いつきが日々を綴ります。日々のぐだぐだを語ったりしてます。時々本の感想が紛れ込んでたりするかもです。
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 本編最終話~~。
 そういえば、最近、友人が変な絵を描くのにはまっています。
 『ミッフィーX』とか名づけて、ミッフィーファンを怒らせたいとしか思えないような、ウサギを描いてたり。
 ……ミッフィーは何かを食べるとき、口はどういう風に開くんだろうかという話から膨らんだんですが。
 ミッフィーの口って“×”じゃないですか。何か食べるとき、四方に裂けたらどうしようという会話からだったような気が。
 とりあえず、可愛くないです。むしろグロテスク(??)
 ほかにも某K林先生をちょっとイケメン風(だったか?)に描いてみたりとか。しかもわたしのルーズリーフたちに。
 今日は古典のプリントが被害者でした。いったい、この後始末をどうしろと??

 そのわりに、紫苑さんとかアレクとか裏に描いてくれるので、なかなか捨てられない。
 そ、そのうちすべてさらしてやるーー。

 どうしてあの子は変なのに、びっくりするくらい頭がいいのか不思議になります。天才と変人は紙一重だということを体現してる友人Kちゃんでした。
 面白い友人がいると、ネタに事欠かないです。

+ + + + + + + + + +
『約束ひとつ』





 ゴン、と机に頭をぶつけた。強かにぶつけたのでかなり痛い。

「いっ……つー」

 起き上がると(当たり前だが)目の前に机があった。
 やりかけのテキスト、散乱した教科書、プリント、ノート……。時計は十二時を少し過ぎている。いつもの、風景だった。
 行く前となんら変わっていない。

「戻ってる」

 慌ててポケットから携帯を出し、電源を入れる。
幸い、まだついた。慌てて充電器に差し込む。
 あっちにいたときには『AM 7:01』とあったディスプレイも、きちんと『AM 00:13』となっている。

「何日?!」

 カレンダーも見てみる。明後日は、いやもう明日はテストだ。

「あっちに行く前に戻ってる……」

 もしかしたら夢だった?

「そう、だよね……。夢、か。またイタい想像してた。まぁ、今時、トリップって」

 わざと声に出して否定してみる。うん、ありえない。テスト勉強が嫌になってきっと寝てしまったんだ。
 それでいつもの妄想の世界へ。ありえすぎて逆に笑えない。

「でもいい夢だった。男前多かったし」

 抱きしめられた感覚も、優しい笑顔も鮮やかで、自分の想像力の豊かさに笑った。それでもチラリとひっかかる思考があって、テキストを見つめる。

「真面目にやりますか」

 今日一日くらいは。少なくとも、夢を覚えているうちは。
 コーヒーでも飲もうと席を立った瞬間、金属がこすれる音がした。チャリ、と涼しげな音だ。
 見回してみても、それらしきものはない。ポケットに重みを感じ、手を入れる。知らない、冷たい感触があった。
 小さな期待が、胸に宿った。

「まさか、ね」

 そう言いつつ手を抜く。指に絡まった鎖もろとも。
 目の前に出てきたのは、蒼い石のペンダント。その石の色が、夢だと言い聞かせているはずのわたしの心を動かす。
 振り子のように大きく、ゆっくり。返ってきては、また揺れる。

 ジルの瞳の色だった。澄んでいる、水の底を思わせる深い色。それでもどこか優しくて、そしてその中には気高い精神が息づいている。大好きだった、色。

「いつ、入れたの」

 わたしはジルに忘れてほしかったのに、ジルはまるっきり反対のことをした。

「分かってる、夢じゃないことくらい……」

 そんなことくらい、分かってるよ。

「でも忘れたっていいじゃない」

 そう思うのは、酷いことなの? だけど、コレも酷くないですか? 人の命じゃ忘れられないことくらい、分からない?
 ぺたんとその場に座り込む。
 あっちで振れなかった心は揺れる。ぐらぐらゆらゆら後悔しそうになったり、泣きそうになったり、せわしなく動いて止まらなくなる。

「ジルは、本当に卑怯だ」

 小さい石をこつりと突付く。鎖に指を這わせれば、紙が結び付けられていることに気が付いた。
 小さな羊皮紙がたたまれて、括り付けられている。気にならないと言えば、嘘になる。読みたくないと言えば、強がりになる。
 震える手を何とか動かして、やっとのことで紙を外す。かさかさとした、こちらの紙より粗い手触りがした。
 思えばジルの筆跡を見たことがない。しかし書かれた字はバランスよく、男にしては柔らかく。ジルのイメージのままだった。

『怒っているかもしれないが、俺は諦めが悪い。俺は信じてる。ユキノはきっと、もう一度こちらへ来る。
それまでに返事を考えておいてほしい。……』

「もう一度、書いておく。俺は」

 ――俺は諦めが悪い。

「バカ」

 何てバカなんだろう。これに期待するわたしも、期待させるジルも。

「わたしは、諦めがいい方だよ」

 引き出しを開け、ペンダントと共に紙も入れる。引き出しを閉じて鍵を閉めれば、あっという間に目の前からなくなった。
 期待も記憶も、いずれ時に埋もれてしまうだろう。
 そして時々思い出し、こんなこともあったと懐かしく思うのだ。

 記憶よ、沈め。時の海に。
 期待よ、消えろ。もずくのように。
 そして沈めたことさえ、消したことさえ、忘れてしまえばいい。そうすればいつか、過去の記憶になるだろう。
 昔の、遠い記憶になってしまうのだろう。
 今ではない、だけど未来。きっと、いつかは。




 ちらちらと目の前が明るくなるのを感じ目を開けた。いつの間にか寝てしまったらしく、机に突っ伏している。
 ゆっくりと起き上がると、両手を枕にしていたせいか感覚が無かった。
 いつものような……、やわらかいベッドの上でないことに安堵しつつ、わずかに息をはいた。

「いつもみたいって、こっちの方が日常でしょ」

 自分自身に突っ込みつつ、ぐっと背伸びすると体中が痛かった。ここには絹の寝巻きも、メイドもいない。
 ついでに言えば、嫌味を言う美形も、優しいだけの魔王様もいない。そのことを一瞬だけ寂しいと思いながらも、すぐに打ち消した。

「学校、だし」

 パジャマを脱ぎ、かけてある制服に手をかけた。
 下着を身に着け、シャツを着て、スカート、リボン、ブレザーと順々に、手が覚えているとおりに行動する。
 約一ヶ月ほどやっていなかった動作なのに、すんなりと身に馴染んでいた。

「すぐ、忘れる、よ」

 こんなことばっかりなら、すぐにこの日常に馴染むなら。

 そのとき、メールの着信音が響く。思わず身構えた。

『 送信者:桜
  件名 :英語の日本語訳した? 
  本文 :
  今日当てられる日なんだけど、予習した?? 学校行ったら見せて欲しんだけど。』

 予想していた通りのものが、予想していた時間通りに送られてくる。ある意味、とっても正しいことなんだろうけど、不意に涙がこぼれた。

 ここはもう、あっち側じゃない。

 好きかどうかなんて関係ない。ただいつもみたいに、せめて最後くらい、ゆっくりお茶でも飲みたかった。
 ただいつもみたいに他愛もない話がしたかった。

「っ……」

 ただ――。

「馬鹿だ、わたし」

 今、どうしようもないこと考えたよ、ジル。もしかしたら。

「もし、わたしが、帰りたくないって言ったら」

 ジルはどうしただろうなんて、考えても仕方が無いことを考えた。馬鹿だなぁ、と嘲笑するように呟いて、机からペンダントを取り出した。
 深い色は決してあの人を忘れさせてはくれない。
 この深い蒼はどこまでもあの人の瞳を思い出させて、感傷になんて浸らせてくれない。それをゆっくりと首に着けた。
 制服の下に入れた。
 トントン、と石を制服の上から叩いて、笑ってみる。ひとつ、約束しようか。




「おはよ」

「おはよ、何でメール返事しなかったの?」

「うん、ちょっとね」

 何気ないように言ってから、先に歩き出す。友人と、もう少し親しくしてみるのもいいかもしれない。
 自己防衛だけでは、この先きっとやっていけないこともあるだろうから。

「勉強した?」

「まぁ。それなりにね」

 常套句のように言って、笑った。いつもどおりの、愛しい日常だった。

「テンション低いなぁ。さては、恋の病かね、お若いご婦人」

「そうだったらどうする?」

 友人のからかいに、サラリと返すと目を丸くされた。

「どんな人?!」

 さてどうやって答えようか。そもそも“そうだったらどうする?”と聞いただけだ。恋ではないかもしれない。
 恋なんて感情で済ませていいのかさえ分からない。

「すごく、優しくて、お人よし」 

 そして民が好きな魔王サマ。これは言わないけど。

 すべて封印したはずなのに、期待をまだ持っている。
 それがいいことかさえ分からない。でも答えは出してみよう。
 あるかもしれない、再会のために。
 ないかもしれない、そのときのために。
 諦めが悪いというジルが納得できるような、少しのことでは動じない答えを。

「ねぇ、あたしの知ってる人?」

「どうかな?」

「それ、どういう意味よ」

 こちらの世界は平和で愛しい。この平凡な日常が何より大切だ。そう気付かせてくれたあちらの世界もまた、何より愛しい。
 どちらも、わたしにとって大切だ。

「かっこいい?」

「かっこいい、よ」

 でもそれが問題ではなく。

「笑ってほしいなって、思える人」


 だから『忘れて』と言ったけど。もし機会があるなら、会いましょう。
 さようなら、優しい魔王サマ。また会う日までに、わたしは答えを出すと約束します。
 『大切』な人は、どんな人かという、その答えを。――優しい優しい、魔王サマ(あなた)のために。



~END~   



                        あとがき    オマケ 其の一
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台詞
ジルの手紙の後、書いておく が 買いておく になってんぞ。
M@重臣 2010/01/13(Wed) 編集
Re:台詞
……?? お、見つけました。直しました。
なんか最近、脱字多いな。(笑) 気をつけなければ。 
 【2010/01/13】
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