いつきが日々を綴ります。日々のぐだぐだを語ったりしてます。時々本の感想が紛れ込んでたりするかもです。
一話目です。
王道のど真ん中を見たくない人は、即刻避難です。私をからかってやろうという名目で見る友人方、それもやめてください。
恥かしいことをしているというのは、一応自覚してます。
『ど真ん中の王道? ドンと来い』(笑)という方、『しょうがない、読んでやろう』という方、どうぞ先にお進みください。
王道のど真ん中を見たくない人は、即刻避難です。私をからかってやろうという名目で見る友人方、それもやめてください。
恥かしいことをしているというのは、一応自覚してます。
『ど真ん中の王道? ドンと来い』(笑)という方、『しょうがない、読んでやろう』という方、どうぞ先にお進みください。
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『図書館にて』
そのことは偶然だった。
新刊が入る月だったので、図書室へと行っただけだった。
目当ての新刊は既に借りられていて(当然といえば当然だ。既に三日たっている)、代わりに何かないかと物色していた。
中間が終わったばかり。やることが丸っきりないわけではないけれど、帰宅部の私からしてみれば、大分暇になった。
気に入っている作家の本を手に取り、パラリと中を開けた。最初の数ページを斜め読みして、借りようと受付へ行く。
図書室にあまり人は来ない。進学校というほどでもないし、蔵書もお世辞にも多いとは言えない。
ただ先生の趣味で、数ヶ月に一回、新刊が入ってくるだけだ。
だから人が来ること自体が稀で、図書委員も暇そうに本を読んでいた。私の他に数人、新刊目当てで借りに来るだけなのだ。暇だろう。
「あの、これ……」
呼びかけると、その人はこちらをチラリと見た後何も言わずに処理をした。
ぽんと本の上に返却期限の書いてある紙の栞を載せられる。
「ありがとう」
一応お礼を言ったが、その人はやはりこちらを見て黙ったままだった。――返してくれたっていいのに、とチラリと思ったが、やめておいた。
確かに読書中に声をかけられるのは嫌なものだ。
係りの仕事中に本を読むのもどうかと思うが。
「夏樹~。また行ってたの? ボロ図書館」
「ボロじゃない。ちゃんと新刊入ってる」
「だって、ほとんど無人じゃない。五百人中、数人しか行ってないのよ?」
あそこなんか暗いし、先生滅多に来ないし、冬は寒い、夏は暑いって最低じゃん。
とは友人の言。
綾瀬 夏葵(あやせなつき)だ。
ちなみに私は夏樹 鈴(なつきすず)。“なつき”つながりで仲良くなったのだ。
「夏樹~」
「自分の名前言って、恥かしくないの? 鈴のほうが短いのに」
彼女は私のことを苗字で呼ぶ。
「いいじゃん、夏樹も『夏葵』って呼べば面白いじゃない」
意地でも呼んでやるもんか。周りが混乱してしまう。彼女にしてみれば、それが見たいのかもしれないが。
「何借りたの」
「新刊じゃないもの」
「借りられてたんだ」
からかうようにこちらを見た。ひらりと借りてきた本を見せれば、『あんたそれ好きねぇ』と笑われた。
だって何回読んでも、好きだなぁ、と思ってしまうんだもの。
始めの数ページを読んだだけ、初めて読んだときの感動がよみがえってしまう。
それでまた借りて読む。
……買えばいいんだと、分かってはいるがついつい本屋へ行くと読んでない本を買ってしまうのだ。
「綾瀬は何してたの」
「んー、とね。探し物」
ぼやかして言うのには理由があるので、ふぅんと返事だけしておいた。必要以上に干渉しない、これが仲がいい理由でもあるのかもしれない。
「でもないから、明日にしようかな」
「いいの?」
「うん。今日中に見つけなきゃいけないもんでもないし」
一緒に帰ろうか、と聞かれてしまえば、うんと答えるしかなかった。
借りたばかりの本をカバンにしまい、勉強道具も入れる。既に綾瀬は用意をしていて、こちらを待っていた。
「待った」
「ごめん。とろくて」
とろいのは今に始まったことではない。
「すっごく待った。もう足疲れた。あー、アイス食べたいなぁ」
「え……、うち、もう夕食の時間なんだけど」
遅れたら、母が怖い。っていうか、どこで何してたか、誰と何してたか根掘り葉掘り聞かれる。
めんどくさい。
「え~。アイス~」
「はいはい。また今度ね」
そんないつもどおりの会話で帰った。
そして寝る直前、ベッドの上で寝ながら本を開く、そのときだった。ひらり、と一枚だけ紙が落ちてきた。
ページが落ちてきたのかと驚いたが、よく見るとそれよりずっと小さな紙だった。
『声楽室』
それだけ書かれた、紙だった。
そのことは偶然だった。
新刊が入る月だったので、図書室へと行っただけだった。
目当ての新刊は既に借りられていて(当然といえば当然だ。既に三日たっている)、代わりに何かないかと物色していた。
中間が終わったばかり。やることが丸っきりないわけではないけれど、帰宅部の私からしてみれば、大分暇になった。
気に入っている作家の本を手に取り、パラリと中を開けた。最初の数ページを斜め読みして、借りようと受付へ行く。
図書室にあまり人は来ない。進学校というほどでもないし、蔵書もお世辞にも多いとは言えない。
ただ先生の趣味で、数ヶ月に一回、新刊が入ってくるだけだ。
だから人が来ること自体が稀で、図書委員も暇そうに本を読んでいた。私の他に数人、新刊目当てで借りに来るだけなのだ。暇だろう。
「あの、これ……」
呼びかけると、その人はこちらをチラリと見た後何も言わずに処理をした。
ぽんと本の上に返却期限の書いてある紙の栞を載せられる。
「ありがとう」
一応お礼を言ったが、その人はやはりこちらを見て黙ったままだった。――返してくれたっていいのに、とチラリと思ったが、やめておいた。
確かに読書中に声をかけられるのは嫌なものだ。
係りの仕事中に本を読むのもどうかと思うが。
「夏樹~。また行ってたの? ボロ図書館」
「ボロじゃない。ちゃんと新刊入ってる」
「だって、ほとんど無人じゃない。五百人中、数人しか行ってないのよ?」
あそこなんか暗いし、先生滅多に来ないし、冬は寒い、夏は暑いって最低じゃん。
とは友人の言。
綾瀬 夏葵(あやせなつき)だ。
ちなみに私は夏樹 鈴(なつきすず)。“なつき”つながりで仲良くなったのだ。
「夏樹~」
「自分の名前言って、恥かしくないの? 鈴のほうが短いのに」
彼女は私のことを苗字で呼ぶ。
「いいじゃん、夏樹も『夏葵』って呼べば面白いじゃない」
意地でも呼んでやるもんか。周りが混乱してしまう。彼女にしてみれば、それが見たいのかもしれないが。
「何借りたの」
「新刊じゃないもの」
「借りられてたんだ」
からかうようにこちらを見た。ひらりと借りてきた本を見せれば、『あんたそれ好きねぇ』と笑われた。
だって何回読んでも、好きだなぁ、と思ってしまうんだもの。
始めの数ページを読んだだけ、初めて読んだときの感動がよみがえってしまう。
それでまた借りて読む。
……買えばいいんだと、分かってはいるがついつい本屋へ行くと読んでない本を買ってしまうのだ。
「綾瀬は何してたの」
「んー、とね。探し物」
ぼやかして言うのには理由があるので、ふぅんと返事だけしておいた。必要以上に干渉しない、これが仲がいい理由でもあるのかもしれない。
「でもないから、明日にしようかな」
「いいの?」
「うん。今日中に見つけなきゃいけないもんでもないし」
一緒に帰ろうか、と聞かれてしまえば、うんと答えるしかなかった。
借りたばかりの本をカバンにしまい、勉強道具も入れる。既に綾瀬は用意をしていて、こちらを待っていた。
「待った」
「ごめん。とろくて」
とろいのは今に始まったことではない。
「すっごく待った。もう足疲れた。あー、アイス食べたいなぁ」
「え……、うち、もう夕食の時間なんだけど」
遅れたら、母が怖い。っていうか、どこで何してたか、誰と何してたか根掘り葉掘り聞かれる。
めんどくさい。
「え~。アイス~」
「はいはい。また今度ね」
そんないつもどおりの会話で帰った。
そして寝る直前、ベッドの上で寝ながら本を開く、そのときだった。ひらり、と一枚だけ紙が落ちてきた。
ページが落ちてきたのかと驚いたが、よく見るとそれよりずっと小さな紙だった。
『声楽室』
それだけ書かれた、紙だった。
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