いつきが日々を綴ります。日々のぐだぐだを語ったりしてます。時々本の感想が紛れ込んでたりするかもです。
えっと、こんばんは。いろんな方にいじめられているいつきです。
トリップモノの一話分の下書きを原案者様にやっとこさ送りました。あまりに短さに、誉様はきっと「え、まだこんなもん?」と思われたでしょう……。
うん、だって、肝心の主人公その二がまだ出てないしね。(短いにもほどがある)
色々助言をもらったので、どんどん書き進めていけたら……いいな、ぁ。
色々と難しい……。でも楽しいので、とりあえず満足。
勿忘草も更新、忘れてなんかいませんよ!! ええ、いませんとも。エロいと言われた部分をいじくりつつ、結局何も変わらなくって泣いてただけです。
もう、気持ち悪いって言われてもいいからこのまま載せちゃおうかな……。ま、まだ先の話だと言い聞かせて直します。
トリップモノの一話分の下書きを原案者様にやっとこさ送りました。あまりに短さに、誉様はきっと「え、まだこんなもん?」と思われたでしょう……。
うん、だって、肝心の主人公その二がまだ出てないしね。(短いにもほどがある)
色々助言をもらったので、どんどん書き進めていけたら……いいな、ぁ。
色々と難しい……。でも楽しいので、とりあえず満足。
勿忘草も更新、忘れてなんかいませんよ!! ええ、いませんとも。エロいと言われた部分をいじくりつつ、結局何も変わらなくって泣いてただけです。
もう、気持ち悪いって言われてもいいからこのまま載せちゃおうかな……。ま、まだ先の話だと言い聞かせて直します。
+ + + + + + + + + +
「お前は何故、その格好でここに来た?」
厳しい声色に弥絃は固まる。きゅうっ、と花嫁衣裳に皺がよった。力を入れたては青白く血の気を失い、かたかたと震え始める。
それでも問いに答えようとゆっくり口を開いた。
「私は、鬼神様の生贄として来ました。生娘の、魂だけが、荒ぶる鬼神様のお心を鎮められる、と言われて。
一生鬼神様へ使えるということは、婚姻も同然だと巫女の櫻(さくら)様が……」
元は日焼けしていたが、生贄の決まった日から外へ出ず、部屋に閉じ込められていたせいで白くなった肌に血の気が戻る様子はない。
弥絃が生贄と決まったその日に、村長の家の近くにある神社へと預けられた。そしてそこへ半年以上も閉じ込められたのだ。
俗世の穢れや未練を立ち、鬼神様を鎮められるように、と。実際は逃げられては困るため、食事を制限して体力を奪うと言うのが目的だ。
初めの三ヶ月でそのことに気が付いた。
半年間、村長たちに何度も、何度も言われた。この村を救うためなのだと。これ以上の策はないのだと。
お前は皆のために、人身御供になるのだと。とても尊いことで、幸せなことなのだと。
だから、当然だと思っていた。ここに来るまで、死ぬのが当たり前で、それ以外の選択肢など初めから与えられていないのだと。
それ以外を考える思考は半年間の生活で吸い取られていた。何も、考えられなかった。
「逃がしはしない。そんなこと許されるものか」
そう村人が言っているようにも思えた。死ねば、皆が幸せに慣れるのだと思っていた。
「そうしたら、村長様が、『鬼神様に嫁入りするんなら、上等の衣装を用意させよう』と」
せめてもの償いなのかもしれない、と弥絃は思った。美しい死装束ぐらいは用意してやるという、村長の哀れみなのかもしれない。
「お前が、俺の花嫁?」
ふっと鬼が笑った。それに対し弥絃は眉を下げる。
「私では、幼すぎると……、人間ではなれるはずがないと、お思いなのですか? でも、私は所詮、殺される、のでしょう?」
目の前の紅い眼を見つめ、弥絃は悲しげに笑った。
「櫻様はおっしゃいました。鬼は、人を殺し、愉悦を覚えるものだ――と。そなたはすぐに殺されるかもしれぬ、と」
それでも、櫻様は私に村のために行けとおっしゃった。一筋、弥絃の瞳から涙が零れた。それはこめかみを伝い、崩れた髪の中に入る。
「殺すのなら、死体が残るようにして下さい。櫻様が半月後に迎えに来て下さるの。魂はあなたに、鬼神様に差し上げるから、どうか。村を救って下さい。お願い、お願いです」
弥絃は顔を覆った。声を殺そうとして失敗したように、嗚咽が零れる。
そして、はたと気付いた。先程まで掴まれていた両手が使える。恐る恐る、手を開いた。整った顔がじっと弥絃に向けられ、逸らされない。
「お、にがみ、様……?」
そう、と弥絃はその瞳を覗き込んだ。どうしてだろう、まだ怖いはずなのに、それなのに覗き込んだ。
「その呼び方は止めろ。俺は神ではない」
生贄などされても、俺には何もできぬ。その言葉に弥絃は肢体を固めた。
「え……」
弥絃が動きを止めたまま、鬼を見つめた。
「俺には――いや、例え他の者にだって無理だ。豊作になるのも凶作になるのも、天つ神(あまつかみ)の御心だ。 俺たちの推し量れるようなお考えではない」
きっぱりと、言い切った。"そんな"と弥絃の口が動く。
「私は、どうしたら、いいの……。このままでは、父様や母様ま
で……!!」
地面に座りなおし、両手を握り締める。
「殺されるのに、私、何にも、できないの? 村の役に立てない。櫻様の、お心にも応えられなかった」
止まっていた涙が再び流れ始めた。
「殺して下さい。皆に合せる顔がありません。父に、母に、櫻様に」
鬼の着物を掴んだが、半年にもよる精進の所為か足元が定まらず膝をついた。
「何故そこまでする?」
静かに鬼が聞いた。弥絃が衿を掴んだままだったので、それに合せてしゃがむ。
「初めは……」
消えそうな、風が吹けば飛ばされそうなくらい小さな声が聞こえた。
「仕方がないって、思っていました。本当は、今も少し思っています」
ぽつりと落とされるような言葉たちは、危うげな雰囲気を残しつつ中に消える。俯いた弥絃の表情は伺えないが、もう泣いてはいなようだった。
花嫁衣裳は泥と草で汚れ、美しく結われていた髪も無残に崩れている。
あちらこちらにある、先ほどまでつけていたであろう簪は、もう少しでなくなるであろう夕陽を反射して光った。
「でも私さえ、生贄になれば、事態は好転すると思っていました。荒御魂は鎮まり、凶作になることはない、と。それならば、私の命なんて代償の数ではないと、そう……思っていました。私も村長も、村の皆も」
櫻様以外は。
「櫻様は初め、この生贄の儀式に反対されていました。最後は、村長に押し切られてしまったようですけど」
もしかしたら、このことを知っていたのかもしれない。生贄が無駄だということを知っていたのかもしれない。
鬼の衿を掴む手に力がこもる。しかし引っ張られていると思えるような力はなかった。ただ少し、着物に皺がよっただけ。
「お前は、何のためにそこまでして村を守ろうとする? お前と引き換えに、豊作を望む村に、何故執着する?」
その問いに弥絃は顔を上げた。そして困ったように眉を下げ、それでも笑顔を作ろうとする。
「分かりません」
「おい」
その答えに鬼は待ったをかける。しかし弥絃は続けた。
「本当に分かりません。だって、挙げればきりがないんです。村を救いたい理由。皆に笑っていてほしい。もう一度お祭りをやってほしい。
隣の人同士で、殺し合いのような喧嘩は止めてほしい。餓死する子はいなくなってほしい。
元気な顔を見せてほしい。私のような……生贄を二度も三度も出さないでほしい。幸せで、いてほしいんです」
生きたいと思う。それは人間だから。行きたい、行きたい、行きたい。だが、それ以上に村を救いたいのだ。
自分が生まれ育った村を。温かく見守ってくれた村の人々を。
口にすればそれは驚くほどしっくりと、胸にはまった。今まで思っていた仕方がないの裏にあった本当の気持ち。
鬼はそれを聞き、大きく息をついた。そして、首を左右に振る。どこかしら、呆れたような雰囲気を出していた。
「俺たちは、凶作を豊作にすることは出来ない。しかし、少々なら、手助けができる。少しだけなら、だ」
くしゃり、と銀髪をかきあげる。長い髪が風に翻った。
「手助けは、しよう」
その声に、弥絃は顔を上げた。青白い顔に一瞬だけ、ともすれば見逃しそうなくらい短い間だけ、ぬくもりがこもった。生気とも、血の気とも言える熱が戻る。それは生きている証。
「本当……ですか? 鬼神様」
くいっと弥絃が鬼の衿を引っ張った。僅かな喜色の滲む、涙で汚れた顔(かんばせ)。鬼はその顔を見ると再度苦い顔をした。そして、そのまま弥絃から目を逸らし、口を開く。
「手助けをするだけだ」
「それだけで――十分です」
するり、と弥絃の手が鬼の衿から離れた。そしてその場で手を突いた。
「ありがとうございます。鬼が……」
「鬼神ではない」
弥絃の言葉は途中で切られ、鬼は立った。
厳しい声色に弥絃は固まる。きゅうっ、と花嫁衣裳に皺がよった。力を入れたては青白く血の気を失い、かたかたと震え始める。
それでも問いに答えようとゆっくり口を開いた。
「私は、鬼神様の生贄として来ました。生娘の、魂だけが、荒ぶる鬼神様のお心を鎮められる、と言われて。
一生鬼神様へ使えるということは、婚姻も同然だと巫女の櫻(さくら)様が……」
元は日焼けしていたが、生贄の決まった日から外へ出ず、部屋に閉じ込められていたせいで白くなった肌に血の気が戻る様子はない。
弥絃が生贄と決まったその日に、村長の家の近くにある神社へと預けられた。そしてそこへ半年以上も閉じ込められたのだ。
俗世の穢れや未練を立ち、鬼神様を鎮められるように、と。実際は逃げられては困るため、食事を制限して体力を奪うと言うのが目的だ。
初めの三ヶ月でそのことに気が付いた。
半年間、村長たちに何度も、何度も言われた。この村を救うためなのだと。これ以上の策はないのだと。
お前は皆のために、人身御供になるのだと。とても尊いことで、幸せなことなのだと。
だから、当然だと思っていた。ここに来るまで、死ぬのが当たり前で、それ以外の選択肢など初めから与えられていないのだと。
それ以外を考える思考は半年間の生活で吸い取られていた。何も、考えられなかった。
「逃がしはしない。そんなこと許されるものか」
そう村人が言っているようにも思えた。死ねば、皆が幸せに慣れるのだと思っていた。
「そうしたら、村長様が、『鬼神様に嫁入りするんなら、上等の衣装を用意させよう』と」
せめてもの償いなのかもしれない、と弥絃は思った。美しい死装束ぐらいは用意してやるという、村長の哀れみなのかもしれない。
「お前が、俺の花嫁?」
ふっと鬼が笑った。それに対し弥絃は眉を下げる。
「私では、幼すぎると……、人間ではなれるはずがないと、お思いなのですか? でも、私は所詮、殺される、のでしょう?」
目の前の紅い眼を見つめ、弥絃は悲しげに笑った。
「櫻様はおっしゃいました。鬼は、人を殺し、愉悦を覚えるものだ――と。そなたはすぐに殺されるかもしれぬ、と」
それでも、櫻様は私に村のために行けとおっしゃった。一筋、弥絃の瞳から涙が零れた。それはこめかみを伝い、崩れた髪の中に入る。
「殺すのなら、死体が残るようにして下さい。櫻様が半月後に迎えに来て下さるの。魂はあなたに、鬼神様に差し上げるから、どうか。村を救って下さい。お願い、お願いです」
弥絃は顔を覆った。声を殺そうとして失敗したように、嗚咽が零れる。
そして、はたと気付いた。先程まで掴まれていた両手が使える。恐る恐る、手を開いた。整った顔がじっと弥絃に向けられ、逸らされない。
「お、にがみ、様……?」
そう、と弥絃はその瞳を覗き込んだ。どうしてだろう、まだ怖いはずなのに、それなのに覗き込んだ。
「その呼び方は止めろ。俺は神ではない」
生贄などされても、俺には何もできぬ。その言葉に弥絃は肢体を固めた。
「え……」
弥絃が動きを止めたまま、鬼を見つめた。
「俺には――いや、例え他の者にだって無理だ。豊作になるのも凶作になるのも、天つ神(あまつかみ)の御心だ。 俺たちの推し量れるようなお考えではない」
きっぱりと、言い切った。"そんな"と弥絃の口が動く。
「私は、どうしたら、いいの……。このままでは、父様や母様ま
で……!!」
地面に座りなおし、両手を握り締める。
「殺されるのに、私、何にも、できないの? 村の役に立てない。櫻様の、お心にも応えられなかった」
止まっていた涙が再び流れ始めた。
「殺して下さい。皆に合せる顔がありません。父に、母に、櫻様に」
鬼の着物を掴んだが、半年にもよる精進の所為か足元が定まらず膝をついた。
「何故そこまでする?」
静かに鬼が聞いた。弥絃が衿を掴んだままだったので、それに合せてしゃがむ。
「初めは……」
消えそうな、風が吹けば飛ばされそうなくらい小さな声が聞こえた。
「仕方がないって、思っていました。本当は、今も少し思っています」
ぽつりと落とされるような言葉たちは、危うげな雰囲気を残しつつ中に消える。俯いた弥絃の表情は伺えないが、もう泣いてはいなようだった。
花嫁衣裳は泥と草で汚れ、美しく結われていた髪も無残に崩れている。
あちらこちらにある、先ほどまでつけていたであろう簪は、もう少しでなくなるであろう夕陽を反射して光った。
「でも私さえ、生贄になれば、事態は好転すると思っていました。荒御魂は鎮まり、凶作になることはない、と。それならば、私の命なんて代償の数ではないと、そう……思っていました。私も村長も、村の皆も」
櫻様以外は。
「櫻様は初め、この生贄の儀式に反対されていました。最後は、村長に押し切られてしまったようですけど」
もしかしたら、このことを知っていたのかもしれない。生贄が無駄だということを知っていたのかもしれない。
鬼の衿を掴む手に力がこもる。しかし引っ張られていると思えるような力はなかった。ただ少し、着物に皺がよっただけ。
「お前は、何のためにそこまでして村を守ろうとする? お前と引き換えに、豊作を望む村に、何故執着する?」
その問いに弥絃は顔を上げた。そして困ったように眉を下げ、それでも笑顔を作ろうとする。
「分かりません」
「おい」
その答えに鬼は待ったをかける。しかし弥絃は続けた。
「本当に分かりません。だって、挙げればきりがないんです。村を救いたい理由。皆に笑っていてほしい。もう一度お祭りをやってほしい。
隣の人同士で、殺し合いのような喧嘩は止めてほしい。餓死する子はいなくなってほしい。
元気な顔を見せてほしい。私のような……生贄を二度も三度も出さないでほしい。幸せで、いてほしいんです」
生きたいと思う。それは人間だから。行きたい、行きたい、行きたい。だが、それ以上に村を救いたいのだ。
自分が生まれ育った村を。温かく見守ってくれた村の人々を。
口にすればそれは驚くほどしっくりと、胸にはまった。今まで思っていた仕方がないの裏にあった本当の気持ち。
鬼はそれを聞き、大きく息をついた。そして、首を左右に振る。どこかしら、呆れたような雰囲気を出していた。
「俺たちは、凶作を豊作にすることは出来ない。しかし、少々なら、手助けができる。少しだけなら、だ」
くしゃり、と銀髪をかきあげる。長い髪が風に翻った。
「手助けは、しよう」
その声に、弥絃は顔を上げた。青白い顔に一瞬だけ、ともすれば見逃しそうなくらい短い間だけ、ぬくもりがこもった。生気とも、血の気とも言える熱が戻る。それは生きている証。
「本当……ですか? 鬼神様」
くいっと弥絃が鬼の衿を引っ張った。僅かな喜色の滲む、涙で汚れた顔(かんばせ)。鬼はその顔を見ると再度苦い顔をした。そして、そのまま弥絃から目を逸らし、口を開く。
「手助けをするだけだ」
「それだけで――十分です」
するり、と弥絃の手が鬼の衿から離れた。そしてその場で手を突いた。
「ありがとうございます。鬼が……」
「鬼神ではない」
弥絃の言葉は途中で切られ、鬼は立った。
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