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いつきが日々を綴ります。日々のぐだぐだを語ったりしてます。時々本の感想が紛れ込んでたりするかもです。
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 とりあえず、この更新ペースだけは守ろうと……思ってます。今のところは。
 今朝早速、世間が夏休みだという実感がわきました。
 扱げど漕げど、まぁ全く他の学校の人とすれ違わない。すれ違っても、明らかに『これから部活』という格好の方ばっかり。

 知り合いの方からは『いつきさん、今日から夏休みでしょ?』と聞かれるのですが、いいえ、とんでもございませんとお答えしております。 
 学生の身分ですので、頑張って勉強してます。(一応)


 ところで、今懐かしの『世界のうた』を聞いてます。世界中の童謡が入ってるんです。
 『黒猫のタンゴ』を意味もなく繰り返し聞いてます。我が家の旦那ネコと同じ黒猫。
 あ、『We are the world』もありました。でもディスクにはカタカナで書いてある。

 
 まぁ、今日一日色々ありまして、思うところも多々あるのですが愚痴っぽくなるので止めときます。
 友人がクッキー作ってきていたので、ミルクサブレ作りたい(と、思うだけ、毎回)。

 ではでは、まだ山も落ちも(意味がないことはない)ない感じですが。

+ + + + + + + + + +
『夢か現かと聞かれれば』



 結局何も分からぬまま、しかしいくつもの不安要素を残して『客室』へと案内された。
 わたしの部屋の三倍はありそうな部屋を見渡す。ベッドに腰掛けると、体が沈む。柔らかくて、気持ちいい。
 このベッドで寝たらいい夢見られ……、ってこれが夢だし。
 手触りだって最高だし、まるで、起きているときのような――感覚?

「え――?」

 浮かんできた予想に頭を振る。ありえない。
 でも、一度思いついてしまった考えはしつこく思考に絡み付いて、なかなか消えてはくれなかった。
 そう、『夢ではない』という考えが。
 ドレスも、ベッドも、今思えばメイドたちの体温でさえ、はっきりと感じられた。そっと、頬に手をやる。
 そして思いっきり横に引っ張った。

「いっ……!!」

 鈍い痛みが走り、動きが止まった。
 ねぇ? 嘘でしょう? ゆ、夢の中だって、痛みは感じる……はず。
 慌てて、脱がされた元の服を手に取る。制服を脱いだときに着た、色気のかけらもないパジャマ。
 今度こそ、手から力が抜けた。パジャマが手から滑り落ちる。"がしゃん"と硬質の何かが床とぶつかる音がした。
 探ってみて出てきたのは携帯電話だった。
 夕食を食べに一階へ行ったとき、ポケットに入れたままだったことを唐突に思い出す。
 え、じゃあ、これってやっぱり……。

「夢、じゃない――?」

 時刻を確認すれば『AM 7:00』と映っている。
 メールも、着信もない、ということはとりあえず騒がれているわけではないということか。
 それともこっちへ来てそんなことできなくなったということか……。
 『AM 7:01』と時計が動いたので、携帯自体が駄目になったわけではなさそうだと安心する。
 え、でもたいていこの場合、携帯なんか使えないのがお約束だったりするのでは……??
 あまりにもリアルすぎる夢の続きだと信じ込ませようとするのに、言うことを聞かない頭は猛スピードで回転している。
 このぐらい緊張状態で勉強すれば成績も上がるんじゃないかと、変な考えが浮かんだ。

 『高一女子 行方不明』
 『事件か、家出か』
 『少女 東雲 雪乃さんは……』

 次々に浮かぶ、新聞の見出しにくらりと眩暈がした。これは本当に、夢じゃないんでしょうか……?
 そのとき、耳になれた音楽が聞こえる。
 友人からのメールが送られてきたときに流れる有名アーティストの曲だった。

『 送信者:桜
  件名 :
  本文 :英語の日本語訳、今日当てられる日なんだけど、予習した?? 学校行ったら見せて欲しんだけど。 』

 シンプルな文面は全くもっていつものもので、だからこそこれは現実なのだと実感した。
 適当に返事を打って、それから深呼吸する。電話で話してみる? ……信じてもらえるわけがないのに?
 そう、パニックになったっていいことはない。だから、落ち着かなければならない。落ち着いて……。

「いられるか!!」

 思わず声に出してつっこむが、そのとおりで、何をどうすればいいのか見当もつかない。あの人たちに何て言う?

『わたし、違うところから来ちゃったみたいなんで、帰してください』

 高々と(気持ちよく)啖呵切っちゃったのに? そんなことより。

「……っ」

 恐い。わたしの身に何が起こっているのか、全く分かっていない。それが、恐くてしかたがない。大体、魔王って何?
 ……一体、どうすればいいの?
 頭を抱えて、そこでハタと思い当たった。自分がするべきことを。

「逃げよう」

 そう、逃げるのが一番。見たところ、城にはメイド以外の女の人もいるみたいだし、パジャマよりはドレスのほうが目立たない(……はず)。
 本当はメイド服が欲しいところだけれど、そんなことは言っていられない。
 ゆっくりと扉を開けると、幸い鍵もかかっていない。
 『賢者サマ』は尊敬されているようだし、逃げ出すとは思われていないのだろうか。それに人もいないし、行くなら今しかない。
 音を立てないように、ゆっくりと足を外へ出し、素早く扉を閉める。
 一瞬だけ魔王さまの笑顔が頭をよぎり、良心が痛んだ。あの瞳は、曇らないだろうかと。


 

 なるべく人目につかないように、だけどさりげなく歩く。
 誰と会っても『散歩中ですけど』と言う顔をしているように心がけつつ、足を進める。
 が、部屋を出て数分でわたしは自分自身のバカさ加減を思い知った。

 "道知らないんですけど"

 わたしって、バカなんですか? くるりと来た道を振り返ってみても、自分が出た部屋なんて分からない。
 帰り方も分からない。誰も知らない。城を出てからの当てもないし、どうやったって生きていけない。
 うまいぐあいにファンタジー小説が好きな友人がいたが、ほとんど聞き流していたので、役に立たない。
 そのとき何の脈略もなく、ノアレスさんの言葉を思い出した。

『私が……』

「私が呼び出し、た……?」

 お前が元凶か! 青白モノクル。
 そう罵ってみるも、そこでふと考えが浮かんだ。呼び出すことができるなら当然。

「帰らせることもできるんじゃ」

 はっとした。どうしてこんな簡単なことが思いつかなかったんだろう。――どうにかして、帰してもらえる方法があるような気がする。
 とりあえず部屋に戻ろう。来た道をとりあえずまっすぐ進んで、メイドにでも聞けば部屋には戻れるだろう。
 逃げ出したなんてばれてしまえば、帰れなくなるかもしれない。
 来た道を戻ろうと足を踏み出したその瞬間、廊下の横へと広がる中庭から話し声が聞こえ始めた。
 メイドなら道案内をしてもらえるかもしれない。そう思い、中庭に出ようとして、足が止まった。

「で? 本物なのか?」

「髪も瞳も、私が見る限り、手を加えているようには見えませんでした」

「それで全てを信じるか?」

「いえ、様子を見る価値はあるかと存じます」

 それが誰かと誰かの話し声で、誰について語られているかということは安易に想像がついた。

「だが、文献に残る賢者はただの人間だ。
我々のような力を持つわけでもない。どうやって、本物かどうか確かめるのだ? ノア」

「文献と照らし合わせるのです。本物にしか分からないこともあるでしょう。それが一番早い方法です」

 そこで不機嫌そうに唸ったのがどちらかということは分からなかったが、多分魔王様だろう。

「お前が文献を漁って賢者を呼び出す、と言ったときにはさすがに気でもふれたかと思ったが――。
本当にやるとはな。さて、あれが本物かどうかは分からぬか」

 ぞくり、とした。話題が自分であり、『賢者』かどうかが問題であるということが、単純に怖くなった。
 夢だから、と嘘をついてしまったことを今更ながらに後悔する。
 正直に……話す?
 そんな思いも、次の瞬間吹っ飛んだ。

「もし、もしあれが偽者なら、私が呼んだのです。処分は私が」

 ショブン……処分?! 殺すってこと? ニセモノってバレたら、わたし殺されるんですか?!
 魔王様が何か言っているというのは分かったが、その内容を理解する余裕はもうなかった。
 音を立てないように、しかし素早く回れ右をすると、見覚えのありそうな廊下を早足で歩く。
 歩きながら、普段使わない頭をフル回転させていた。
 つまり、本物として振舞わなければいけないということ。
 殺されず、元いた世界に戻る方法、それはただ一つ、自分を賢者だと偽り、魔王様を魔王らしくすること。
 そうしながら、何かしら資料を集めなければいけないということ。
 あの美形のお兄さんが漁ったという文献。それを手に入れなければいけない。

「やらなくちゃ」

 どんなに面倒で、代わり映えがなくて、単調で――自分を偽って生活する元の世界でも、それでも十六年間わたしが生きてきた世界だから。
 わたしが、いるべき世界だから。だから、ここにいてはいけない。ここはわたしがいるべき世界(とこ)ではない。

「帰らなきゃ」

 煩い母や、心配そうにわたしを見る父。本音を見せたことなどない友人たちだって心配はするはずだから。
 そしてわたしは賢者として振舞うことを決めた。



                         4話
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