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いつきが日々を綴ります。日々のぐだぐだを語ったりしてます。時々本の感想が紛れ込んでたりするかもです。
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 お題使用第四弾。しかし今回は恋愛色薄めです。友情ものです。何となく書きたかった、というとんでもない自分勝手から始まりました。


 今回の主役は次女・春華さんと智くんです。二人の会話は単純に考えてて楽しいので、前回も結構二人の会話に行数を使ってしまいました。
 二人はとっても仲がいいんだよな、と思うこともしばしばありますが、春華ちゃんがいつも戦闘態勢で迎え撃ってます。
 春華ちゃんはお姉ちゃん・妹大好き人間なのでそれを奪っていくやつら(智くんと先生)が我慢ならないようです。
 私にしては恋愛色のないお話なんて、もう一年に一回あるかないかのものなので、後でびっくりすると思います。

 まぁ、お互いののろけ話だと言えなくもない。
 二人とも相手が大好きな人ですから、普通の話ですらのろけになるはずです。

 ではでは、興味のある方はどうぞ。

+ + + + + + + + + +
『向き合えば憎まれ口』(お題は『Fortune Fate』さまからお借りしました)




「どうして、ここにあんたがいるの。池平」

「今日、朔華さんが一緒にご飯食べようって言うから、春華ちゃんと一緒に帰ろうかなーって」

「春華ちゃんって呼ぶな。平田でいいでしょ」

「平田って呼んだら、朔華さんも平田じゃん!」

「煩いな! 話しかけるな。色ボケ好色男」

 オレンジに染まる教室に二人、イスに座って向かい合っていた。
 少女は気だるげにイスに体重をかけ、少年を真っ向から睨みつけている。
 少年は何が面白いのか、苦笑いを含めた顔で少女を見ている。

「それはそうと、藤本は?」

「部活の助っ人」

 少女といつも一緒にいる少年の名を口に出すと、少女は怒ったように言った。
 運動が得意な藤本――瑲也は助っ人として来週あるバスケットボール部の試合に出るらしい。

「待ってるの?」

「待ってなくてもいいって、言われたけど……」

 ぐっと言葉に詰まって、少女は少年の視線から逃れるように横を向いた。意地っ張りな少女、春華のことだ。
 素直に話さないだろうと、少年は笑った。

「瑲と、最近会って話してないから」

 忙しそうにしてるから、話しかけちゃダメかなって、思って。

 俯き加減のままそういう春華は、いつもなら絶対話さない本音を漏らす。

「そう言えばいいじゃん。藤本、喜ぶと思うけど?」

 春華が瑲也を好きになっているというより、瑲也が春華を好いている、というほうがしっくり来る。

「あんたみたいに?」

「そうそう」

 うっとうしいくらいに朔華に好きと言っている智らしい言葉が返ってくる。

「お姉ちゃんの神経が分からない。……あんなに好き好き言われてると、逆に心配にならないのかな」

 ほう、と春華は上を向いてため息を吐いた。

「わたしも、瑲も、そんなに簡単に『好き』なんて言わない」

「どうして?」

 どうしてだろう、そう言って春華は上を向いたまま目を瞑った。

 意志の強そうな目を閉じれば、あっという間に自分の恋人に似通う友人を見て智はどきりとした。
 髪の長さこそ違うものの、顔のつくりは本当に似ている。
 ただ違うのはかもし出す雰囲気と、まったく違う光を宿している瞳だ。

「あぁ……。多分、わたしも、瑲も相手を縛り付けたくないんだよ」

 何かを思いついた後に、春華は小さく呟いた。

「わたしは、わたしのせいで負ったこの傷のせいで、瑲を縛り付けている。瑲は、そう思うわたしの負い目でわたしを縛り付けている」

 バカらしい、縛り合いだね。

「『好き』って言えば言うほど、縛っているものが、強くなる気がする」

 逃げられないようにだろうか、逃げる気力さえ奪うようにだろうか。

「本当にお前たちは、縛りあってるだけなのか?」

 そう聞くと、春華は笑った。いつもどおりの笑顔のようでいて、それとは完全に異なるものだった。

「それ、だけじゃない。だけど、それ以外だけでもない」

 わたしと瑲が一緒にいる限り、この問題は続くの。

「あんたにも、いつか分かるよ。お姉ちゃんと一緒にいる限り続く何かがきっとある。それは、多分お互いを傷つけるけど……」

 それでも、離れたくないんだよね。

「のろけか?」

「そうかもしれない」

 薄く笑ってから、春華は席を立って背伸びした。さらり、と髪が動き、振り返る姿は驚くほど朔華に似ている。

「今一瞬、お姉ちゃんを見る瞳(め)になった」

 指摘すると、智は驚くほど赤く染まる。

「すっごく、優しい目をした」

 そんなところも気に入らない。

「あ」

 何かに気づいたのか、春華は目を丸くし、ついで柔らかく微笑んだ。誰を思って笑ったか、一瞬で分かってしまうくらい優しい笑みだった。

「瑲には、内緒だから」

 言ったらあんたの元彼女の名前、一日に一回ずつお姉ちゃんに知らせるから。
 そう言って、春華はかばんを持ち、教室から顔を出した。

「瑲、遅い!」

「待ってなくていいって言ったろ?」

「待たなくてもよかったって言うの? 帰る!!」

 ふい、と顔を背けて、瑲也が来る階段とは別方向の階段へと向かう。

「春華!」

「お前も苦労人だね」

 追いかけようとする瑲也に智は声をかけ、かばんを手に取った。

「春華ちゃんがいるかもしれないから、わざわざ教室に寄ったんだろ?」

 かばん持ってってたから、ここに寄らなくてもいいもんな、普通。

 見透かしたようにそう言われて、瑲也は少し眉を顰めた。

「池平、お前、一言多い」

「春華ちゃんと一緒にお話してたのが、そんなに気に入らない?」

 大丈夫だよ。似てるけど、俺は朔華さんが好きなんだから。

「お前のそういう性格嫌い」

「結構。俺もお前の性格嫌いだから」

 瑲也のかばんがないのを知りつつ、ここで待っていた春華。それは瑲也が必ず自分が残っていることを知っているからだ。
 そして迎えに来ることを露ほども疑っていない。

「二人して、相思相愛の癖に悲恋みたいな顔をして恋をする……お前たちが面倒だよ」

「お前に言われたくない」

 瑲也は不機嫌そうな顔をして、春華の後を追いかけた。


 
 二人の姿を見つつ、携帯が震えていることに気がつき、手に取った。

「あ、朔華さん? うん。今帰ってるとこ。あと十五分くらいかかるかな。……え、二人? 
ああ、仲良く帰ってるよ。俺が入るのを躊躇うくらい。……うん。じゃあ」

 切りかけて、何か思いついたのか智は下ろしかけていた携帯を再び耳に当てた。

「朔華さん、俺、朔華さんが好きだよ」

 そう言うと、電話の相手は少しだけ笑った後同じ言葉を返してきた。

 電話を切った後、智は小走りで二人を追いかける。

「お二人さん、やっぱり思ったことは言った方がいいと思うよ?」

 二人の顔が、夕日以外のせいで赤く染まった。





 
――――――――――――――――――――――――――――


 のろけって書くのは楽しいけど、聞くのは拷問ですよね、と言う話(アレ、違う)
 また出てきました春華ちゃんの足の傷。
 ……うん、載せないとやばいよね。ということで、次回、次々回くらいに過去編なんぞ載せたいな、と画策中。
 本編の意味がだんだんなくなって言っている気がします。いずれ載せるけどね!!(自棄)

 あまりにも更新回数が寂しいので、友人に重い、と言われたものを連載しようか迷い中。三女の藍華ちゃんのお話です。
 春華ちゃん→朔華ちゃん→藍華ちゃんの順に恋が成就するんで、本編でいうと最後ですね。
 でも春華ちゃんと朔華ちゃんのは割合短いので、番外編っぽく読んでもらった方がいいと思うんですけど。
 とりあえず三人のお話は『三姉妹』という共通点しかないので。

 短編だけの時間軸。1→4→2→3です。バラバラですみません。雰囲気を感じていただければ、時間軸はあまり関係ありません。
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